34 共行④/盗賊団との戦い

 フィオナのもとに、ウテナとルナが素早く駆け寄る。


 ウテナは右手に、黒光りする鉄甲のような武器、ナックルダスターを装着した。ルナはダガーを構えた。


 と、敵の数人が一斉に動き出した。数で押し切る作戦だ。


 棍棒を持った敵が真っ正面からフィオナに殴り掛かる。


 ――ヒラッ。


 フィオナがマントを開いた。


 胸当てと腰巻きだけのセクシーな身体がチラリと垣間見えたと思った次の瞬間、


 ――ブスっ。


 「うぐっ……!」


 先端が鋭く尖った細長い片手剣、レイピアが敵の右足を突き刺した。


 ……あ〜、めっちゃ痛そう。

 マナトは、他人ながら敵に同情した。


 「か、かっこエロいぜ……!」

 ケントも見ていた。というか、少し見とれ気味だ。


 「クソっ!この野郎……!」


 それでも敵は棍棒を振り下ろしてきた。


 「あら、意外と根性あるのね。嫌いじゃないわ」


 フィオナはそう言いつつも、棍棒をよけつつ素早くレイピアを引いた。


 そして今度は敵の、棍棒を持つ右肩を貫いた。


 「ぬぁ……」


 敵の手から棍棒が落ちた。


 「フィオナさん!あぶない!」

 ルナが叫んだ。


 「んっ!」


 横から別の敵がダガーで切り込んできた。フィオナがレイピアで刺す瞬間を狙っていた。


 ――ドスっ!


 フィオナの目の前で、その敵が吹き飛んだ。


 ウテナがナックルダスターを装着した右手で、フィオナを切ろうとした敵を思いっきり殴り飛ばしていた。


 ウテナの拳を食らった敵は、一撃でのびていた。


 ……昨日、もし水の防御をせずに、彼女の一撃を食らっていたら……。

 マナトはゾッとした。


 もう一人、敵がウテナに襲いかかる。


 ――スッ!


 敵に合わせて少し後退しながら、ウテナの右手が一瞬、残像となって敵の目の前をかすめた。


 と、襲いかかった敵の動きが止まった。


 「ウテナの勝ちよ。あなた、もう、しばらくの間、動けないわ」

 フィオナが笑顔で言った。


 敵は何が起きたか理解できていない様子で、少し下がったウテナに追い打ちをかけようと、足を前に出そうとした。


 ――フラっ。


 「なっ!?なんだ……と!?」


 敵は足下がおぼつかない。


 「顎に入ってるのよ。ウテナのフックが速過ぎて、やられたことすら気づかなかったみたいね」


 フラフラした後、やがて敵は座り込んでしまった。


 「ルナ、そっちはどう?」

 「大丈夫!」


 ルナも1人の敵を相手に応戦している。


 敵の攻撃をよけ、隙を見て切り込む。


 フィオナやウテナのような華やかさや派手さはないが、堅実な剣術で相手を押している。


 そして、敵がルナの攻撃を嫌がり、少し後退した。


 「隙ありぃ!!」


 すかさずウテナが不意を突いて、一撃を叩き込む。敵は倒れた。


 フィオナ、ルナの実力もさることながら、機動力のあるウテナが攻撃の軸として機能していた。


 「強いなぁ」

 マナトは、半ば感動しながら、3人の戦いに見入っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る