31 サライ/共行①

 マナトもラクトも、皆が去ると、ふぅ〜と、胸を撫で下ろした。


 「助かった。サンキューな、マナト」

 「もう。ラクト、勘弁してよ」

 「いやホントに間違えたんだ。完全に間違えた」

 「まあ、分かるけどね。僕も間違えそうって、回廊内入ったときに思ったし」

 「だよな!そうなんだよ!分かりづれえんだよ!回廊ん中!」


 2人は自分達の宿泊スペースに戻った。


 「よりによって女の人が入っていたとはね……」

 「はははは……はぁ〜」


 ラクトはため息していた。


 「俺さ、女の人って、正直ちょっと苦手なんだよなぁ」

 「あっ、そうなんだ」


 確かにラクトは、村にいる時は男とばかりつるんでいたような気がすると、マナトは思った。


 「まあ、明日にはここを出発するって、ケント隊長も言ってたし」

 「だな!早くここ出発したい」

 「てゆうか、ミトと一緒じゃなかったの?」

 「それがさ、途中ではぐれて、どっか行ってしまったんだよ」

 「……あっ、ミト!」

 「いつの間に……」


 もう先に戻って、ミトは個室ですやすやと寝袋にくるまって熟睡していた。


 ミトの寝顔を見ながら、ラクトが言った。


 「……なんか、さっきの、なんだったんだって、思うぜ」

 「ははっ、自分で蒔いた種ってヤツでしょ、ラクト」

 「はぁ〜。寝よ寝よ」


 やがて2人も寝床についた。


 そして、次の日の朝。


 食事を済ませラクダ達にエサをやり、いざ出発……の、その時だった。


 「う、ウソだろ……」

 「ははっ、まさか……ね」


 ラクトとマナトは、そんな事態になるとは、予想だにしていなかった。


 「つーわけで……」


 ケントは皆を見回した。


 「次のサライまで、フィオナ商隊と一緒に行くことになった。共行きょうこうってヤツだ。まあ、こういう事はよくあるし、またどこかで会うかもしれねえから、仲良くやってくれよな」

 「あんた達もよ、ウテナ、ルナ」


 ケントの隣に立っている、フィオナという女が言った。胸あてと腰巻き以外の肌は露出していて、小麦色の肌に、引き締まった身体をしている。


 銀色の首筋までの短髪、少し厚めの唇に、落ち着いた黒茶色い澄まし目が、いかにも大人の女性といった感じだ。


 西にある国のキャラバンの隊長とのことだった。


 「……なに嫌な顔してるのよ、ウテナ」

 むっつりしているウテナの顔を見て、フィオナ隊長が言った。


 「な、何でもないです!」


 昨日、一悶着あったウテナが、マナト達の隣に立っていた。


 その隣には、ウテナを止めに入った、碧眼茶髪の、ルナ。


 次のサライまで、あろうことか、フィオナ商隊、つまり、ウテナ達と一緒に行くことになってしまった。


 「フィオナ商隊の皆さん、よろしくお願いします!」


 何も知らないミトだけ、礼儀正しく、何の悪びれもなく、挨拶した。


 「あと、ここからは、各自武器を持て。一回は、戦闘があるだろう」

 ケントが真面目な顔をしながら、皆に言った。

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