第15話歩み

「先輩!お久しぶりです!」


「久しぶりですね。あれから変わりありませんか」


「ええ。特にはなにも」


「そうですか、部隊長は何か言っていませんでしたか?」


「…何も。先輩は何か言われたんですか?」

あれは言えるようなことではない、いや僕が言いたくない。あんなこと見透かされたらおしまいだ。綺麗な僕がいなくなってしまう。元々は汚いけれど、先輩の前だけでも綺麗に取り繕った僕でいたい。こんな考えが一番醜いとわかっているけれど。


「私は少し話しましたよ。私への注意喚起でしたけどね。あの人がなんで私に入れ込んでいるのか全く理解できませんが」


「そうですか…。えっと、、」

次の言葉を発する直前に先輩に遮られた。


「そろそろ無駄話はやめましょう。開始時刻が近づいているみたいですので」


「…はい。そうみたいですね」


「今日のは少し厄介かもしれませんので、しっかりしといてくださいね。まぁ覚悟しててもコロッと逝ったら考える暇なんてないとは思いますが」


「えぇ。まぁここらで死ぬようでしたら先輩を守れないので死なない努力を精一杯しようと思いますよ。

それで…今日はなんで動物園なんですか。周りに破壊された檻が大量にあって気味悪いんですけど」

今僕たちがいるのは動物園の中心地点。今は廃墟となっている動物園だ。


「説明をしとけと部隊長に言われたので説明しておきます。まずここにはたくさん毒に侵された動物がいるんですよ。私たちのような人間を見るとすぐ襲ってきます。当分の間危険すぎて放置されていたせいで完全にどの動物にも毒はまわっています。…部隊長は私たちのことを殺したいんですかね笑」


「わぁ…。先輩勝算はあるんですか?」


「え、あると思います?笑」


「笑い事じゃないですよね?!!」


「まぁ大丈夫ですよ。今日はノルマを達成したら帰れるんですから」


「ノルマ…ですか。この部隊に入って初めて聞いたシステムなんですけど」


「システムって程大層なもんじゃないですよ。新米毒殺優先部隊員への試練です。これをクリアできればもうちょっと難易度の高い、死と隣り合わせの戦場に行けるようになります。こんなの試練は普通の人は放棄するんですけどね笑。放棄しても構わないものなので」


「そうなんですか」


「だって普通そうでしょう?自分から望んで死にに行く人なんて滅多にいないじゃないですか。まぁ私たちは飛び級組なのでこれを放棄することはできないんですけど」


「放棄できないんですかぁ。めんどくさいですねー」


「さっさと終わらせたらいいんですよ。ノルマは種類は問わず動物3体の撃退。死体の写真を撮って本部に送ったら終わりです。別に襲ってきた動物を殺さなくても構いません。ですが…より強く難しい動物を撃退すると周りの目が変わるので死なない程度に頑張ってください。ちなみに難易度は1~100まであります」


「へぇーちょっと楽しめそうですね!!」


「では、行きますか。まずは…そうですね丁度、象が私たちのことを見つけてこっちに来てくれているので倒しますか。2体ですし、1体ずつでかまいませんよね?」


「はい。あ、勝負しましょ!どっちが先にノルマ達成か。同時だったら難易度で勝敗を決めるってことで。勝った人は…そうですねなにか一つ敗者に命令できるっていうのはどうですか!」


「へぇ、面白そうですね。でも、そう言ったからには死なないでくだいね」


「もちろん、そんなかっこ悪い事しませんよ笑」


2人ほぼ同時に象に向かって走り出す。



















一歩間違えれば即死もありえる、100の死の獣へと。





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