第14話何か
「なぁ、祐」
「なんですか、傑さん」
「あいつには必要以上に近づかない事を勧めるぞ」
「…先輩のことですか?」
「そうそう、あいつだ」
「わざわざ上に文句言ってまで組ませたくせに何言ってるんですか」
「いやぁ想定外だったんだよ、あいつがお前と馴れ合いするのが」
「え?いや、馴れ合いって程でもないじゃないですかあんなの」
「十分馴れ合いなんだよ。お前みたいな八方美人からしてみればなんともないかもしれんがなぁ、あいつが人の事を名前で呼んでいる時点でおかしいんだよ」
「そうなんですか」
「普通あいつは階級とか役職で呼ぶんだよ。俺は部隊長、一応階級は少将。
お前らにも一応階級があるんだぞ。飛び級の特殊なお前らは中佐の階級が与えられる。他は、毒殺優先部隊ってだけで准尉から大尉の階級が与えられている」
「そうなんですね」
「興味ないのかお前」
「はい。別に先輩に近づかれて馴れ合いされてても今までと対応は変えるつもりはありませんから」
「そうやって言いつつお前も自分からあいつに近づいてってるよな」
「そうですかね」
「お前が過去を話すとかだいぶおかしいだろ」
「あれ、先輩となにか話したんですか」
「何話したかまでは知らねぇよ。ただ、愛養子だとかなんとか言ってからかってきただけだ。それでなんとなくわかるさ」
「あぁそういうことでしたか。だって仕方ないですよ。燐花お姉ちゃんの代わりになるかもって思っちゃったんですから」
「代わりってなぁ...お前何言ってんのかわかってんのか」
「えぇ、わかってますよ。もちろん燐花お姉ちゃんはたった1人しかいません。でも僕の生きる意味に戦う意味に、強くなる意味になってくれる人が現れたんですよ。だったら心にしかいない燐花お姉ちゃんに縋るよりは先輩につく方がいいじゃないですか。これで僕が過去の呪いから離れられるかもしれないんですから」
「お前ら考えてること似てんな。あいつは弟の灰音にお前を重ねてたぞ」
「そうですか。それならそれでいいですよ。お互いがお互いの生きる意味になればWin‐Winじゃないですか。しかも燐花お姉ちゃんみたいにすぐにいなくなるような存在じゃない。共依存なんてありがたいですよ」
…僕はなにを言ってるんだろ。先輩と燐花お姉ちゃんなんて全然違うのに。
「そうか...。まぁ気を付けろよ。自分を見失ったらそのときは真っ逆さまに落ちてくだけだからな」
「えぇ。きちんと先輩は僕が守れるようにします。傑さんなにか先輩に思い入れがあるみたいですからね」
「へぇ気づいたんだな。まぁあいつは俺のことなんてたぶん知らねぇけど」
「そうなんですね。傑さんこそ感情移入しすぎないように頑張ってくださいね」
1番危ないのは自分だって分かってるのにそんな言葉が出てくる。
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先輩、ごめんなさい。いつか守れるように燐花お姉ちゃんにも認められるように、自分で自分を許せるように、立派になります。
また新たなに自分を縛る言葉をつくり、僕は先輩の背を追いかけるようにして戦いに赴く。
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