第8話言羽

あれから一週間か。

部隊長も祐さんが人を殺したのが初めてだと知っているから、出撃命令も出さないのだろう。おかげで私はすることがない。昼のニュースを適当に流していても興味が無いせいか、頭には入ってこない。そうすると自然と頭が一週間前のことを思い出してしまう。

昔話をし過ぎたと少し後悔している。祐さんが…弟と、灰音はいねと同い年だったから、ただそれだけのことで色々要らないことまでくちばしってしまった。本来は1人で強くなるものなのに手助けをしてしまった。

一度、私より年齢は上だが一応後輩にあたる人物が初めて人を殺したとき、誰も声をかけないのを見て、小波部隊長にどうして誰も声をかけないんだ?と聞いたことがある。これはある種の試験。そう言われた。

これから部隊ではもっと辛いことがある。仲のいい部隊の仲間が死んだり、私のように身内を殺すこととなったときに耐えられるメンタルが必要とされる。

人を殺す度に、また、人が死ぬ度に人が互いに寄り添うなんてそんな時間は無い。毒殺優先部隊が必要とされる案件は、警察のかかわる事故や事件が起こるよりも、はるかに多いのだ。この時代、人口の1/4は毒に侵された人間、毒殺優先部隊は約500人、各県に10人程度しか居ない。

考えてもみろ、もし人を殺す度にみんながみんな休んで居たらどうなることか。今はペアで動くようになっているから、1日最大5件ほどしか毒殺優先部隊は出れなくなるし、ほぼ毎日殺人が必要な案件があるのに毒殺優先部隊は人を殺したからと言って休んで誰も出動しない。

こんなことになったら大問題どころじゃない、国家レベルの大惨事の大事件が起こる。毒殺優先部隊が日々活動していても救えなかった命や、毒に侵された人や動物が物を壊すなどして酷い被害が出ているものがあるのに。

毒殺優先部隊がなければ普段からもっと酷い事が起きているだろう。


そんなとき、一通のrainが来た。

見てみると祐さんだった。rainは初めて会ってすぐの時に交換したが一度もやり取りはしていなかった。

文面は


[]


そのたったの5文字のみ。祐さんなりに考えた結果あまり祐さんらしくない淡白な文面になったのだろう。

何か私に思うところがあったのだろうか、それとも相談か。

最初から会わないという選択肢は考えては居ない。だが会うということは、なにかしら話す事があるのだろう。その相手として私は力不足では無いのかという不安が一瞬よぎった。

しかし、まだ祐さんには毒殺優先部隊について話せる人間が私しかいない。要するに頼れる人間が私のみということだ。

ならできる限りのことをしないと。

返事はもちろん


[]

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