第5話ペア

「...ペアとはどういうことでしょうか。」


「あれ?聞いてないんですか。」


「おい、出撃だ。」

突然2つのトランシーバーから同時に、小波部隊長の声が聞こえた。


「「はい。分かりました。」」


「...あれ?もしかしてそこに結嶋と南雲いる?」


「「ええ」」


「結嶋、ペアの話聞いたか?」


「初耳だったので今聞こうとしてたところです。」


「いや、一応説明はしたからな?お前がいつも話の最中に作戦立ててるから聞いてなかっただけだからな?」


「以後、気を付けます。それで詳しいことを。」


「いや、それより前に目標の位置教えてくれませんか?行きながらでも話は聞けます。ですよね?結嶋先輩?」


「ええ、そうね。小波部隊長、よろしくお願いします。」


「なんか既にペアっぽいな。」


「部隊長さん。急ぎですよね?僕と結嶋先輩で早急に撃退してきますので情報を。」


「あぁ。すまん。そこから11時方向に1.2㎞。目標は、毒に侵された30代の男性4人。今、別の隊員も行っているが、恐らく...死ぬ。もってあと2分。その隊員によると毒の進行状態はほぼMAX。場所は田畑の広がる長閑な町だ。近隣住民は避難済み。お前たち2人なら難なく撃退できるはずだ。いけるよな?」


「「ええ、もちろんです」」


「今日は10分弱で仕留めますね。到着するまでにあと7,8分はかかるはずです。捨てられる近くにいる隊員を至急行かせてください。ちょっとでも同じ場所に居させたいので。」


「分かった。」

緊急の出撃だったから、今日は部隊長の長話はない。いつもこうだったらいいのに。


「もしかして、結嶋先輩...走るとか言いませんよね??」


「ん?走るが?」


「………了解です。」


「ついてきてくださいね?部隊長、説明よろしくお願いします。」


「ペアは毒殺優先部隊、始まって以来初の試みだ。国のお偉いさん達が人死にすぎ、被害の拡大多い、弱い子達どうにかしてっていうよくわからんクレームを投げつけてきてな。決して弱いわけじゃないんだけどなぁ…お前らみたいな規格外がいるせいで弱くみられているだけなのに可哀想で仕方がない。」


「部隊長さん?」


「ああ...。まぁそれで弱いと言われる奴らを少しでもマシにするには…と考えた結果、ペアを組んでもらうことになった。お前らはあんまする必要性がないのだがね…部隊内での差別はあまりするべきではないだろうということだ。黙って従ってくれると助かる。いつかお前らが役職についたら今まで通り好きに動けるし、一応まだ実験的な実施にすぎない。成果が得られなければ即、やめる。それまでは我慢してくれ。」


「分かりました。仕方ありません。上の命令ですから。」


「正直僕はめんどくさいなぁって思ってたんですけど、結嶋先輩がペアなので少し楽しみですっ!結嶋先輩の戦い方、じっくりと拝見させていただきます。」


「あなたも戦いなさいね?」


「ええ、戦いながら観察させていただきますよ。結嶋先輩に邪魔者扱いされないように、僕頑張りますから見てくれると嬉しいです。」


「そんな器用なことできるのね。珍しい。わかった、見させていただきます。」


「…ってかちょっときつくないですか?結嶋先輩一切ペース落ちてないですけどどんな事すればそんなになるんですか...。」


「全然。ちょっと毎日筋トレして、走ってればこうなると思うが…?」


「わかりました。結嶋先輩に聞いても意味がなかったです。次からはもうちょっと僕も早く走れるようにしてきますね。」


「まだ足手まといにはなってないから十分な方だけれど、精進しようとするのはいい事だ。私も見習わなければ。」


「あと200m、競争しませんか?」


「望むところです。勝てるなんて思ってませんよね?」


「ええ。楽しくなったので少し試してみたくなっただけです。」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る