第4話休日

あのツキノワグマの戦いの後、休暇を取れと言われ断り続けていたのだが半場強制的に休暇を取らされた。

休暇を取ったところですることがない…だから今まで取らずにいたというのに。余計なおせっかいとはこういうことだ。

家に帰っても白を基調とした無機質な部屋があるだけ、仲のいい友達もいない、特筆するような趣味もない…休暇をどう使えというのだ?

これをあの話の長い小波傑こなみすぐる部隊長に言ってみたのだが、若いんだしとりま外に出て遊んでくれば?という呑気な返答が返ってきただけ。

まぁやることもないからたまには気分転換にと思って繁華街を歩いているのだが


「人が多くて落ち着かんな。」


出撃の時などは目標を如何に倒すかということしか考えていないため周りの人など気にしている暇などなかったのだ。でも今はなんの理由もなくただ歩いているだけ。周りが気になって仕方がない。


「はぁ…こんなことなら家にいるんだった。」


そう思っていると男子中学生のような集団とぶつかってしまった。


「あっ…ごめんなさい。。」

だめだ。どうにも同世代の人間は苦手だ。特に男子は。過去のトラウマのせいだろうか。明確な理由はよくわからんが波長が合わないというか。まぁとにかく苦手だ。

考え事をしながら歩くんじゃなかったと今更後悔する。


「あっ、、こちらこそすいませんっ...ってもしかして毒殺優先部隊の方ですか?」


「えっなんでその名前を...」


「あ、ちょっとごめんな!知り合いだわ、向こうで話してきていいか?」


相手は友達らしき人たちから許しを得たようだ。


「あの...なんで毒殺優先部隊の名を知っているのですか。」


「さっきは突然ごめんなさいっ!みんなの前であの名前を...。えーっと実は僕もその隊員なんですよね~」


「えっ?失礼ですが私より年下ですよね。」


「えぇそうですよ。13歳です。結嶋と同じく飛び級してきた南雲祐なぐもゆうと言います。祐って呼んでください。」


「はぁ...。わかりましたが、その南雲さんはなぜ毒殺優先部隊に?」


「祐で。」


「南雲さんが毒殺優先部隊に入ることになった経緯を知りたいのですが。」


「祐で。」


「分かりました。祐さんが毒殺優先部隊に入ろうと思ったのはなんでですか?」


「祐で。」


「これ以上は変えませんからね?」


「はい、すいませんでしたー。毒殺優先部隊に入った理由は特にありません。推薦で入れてもらった、ただそれだけです。」


「珍しいですね。あんな危険な部隊に推薦という理由だけで入るなんて。」


「いやいや、僕からしたらあんな危険な部隊を志願する結嶋先輩のような方々のほうが頭おかしいんじゃないかって思いますよ。」


「そうですか?」


「そうですよ。まぁそういう方々にはいくら言ってもわからないとは思いますがね。」


「でも推薦でも断ることもできたわけですよね、祐さんは。」


「えぇ、でもちょっと楽しそうだなって思ったんですよ。自分よりも強い人がゴロゴロいる、毒という危険と隣り合わせで戦い、自分の命よりも敵を撃退することを優先するそんな部隊がとっても魅力的に見えたんですよね~」

キラキラとした目で祐さんは語る。


「あなたの方がよっぽど頭おかしいと思いますがね、私は。…それで私に何か用ですか?」


「あぁ、明日からを組むこととなった先輩に一言挨拶でもと思いましてね。」






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