ゲームでもここまで急じゃない

 王都に付き一晩宿で休み、城へと向かう。なんのトラブルも無くスムーズに進む事は良い事だ。




 そうスムーズなのは良いのだ。だけど、過ぎたるは猶及ばざるが如し。何事も程ほどが一番と言う事。




 王とスムーズに謁見に進み、話せば気さくな王だった、ゲーム内ではもう少し厳格なイメージだったが僕が幼女の見た目なので気をつかったのだろう。



 ここまでは良い。しかし、ここからが問題だ。



「校長よ、この娘が筆頭騎士に勝ったというのだな?」



「ええ、間違いなく。それにココへ来る道中で賊を剣無しで無力化し、捕縛しました。射程が長い魔術はともかく近距離戦では優秀と言う他ありません」



「そうか、ご苦労であった」



校長は礼をして席へと着く。




「アリスよ、庭へ来て貰えるかな?少しばかり確認したい」



 僕は礼をして答える。


「了解しました」



 何をするのだろう?その時察しが良くない僕は分からなかった。





ーーーー





 庭に着くと摸造剣を渡される。ショートソードだ。僕が持てばそうはみえないけど。



「さて、アリスよ。実力を見せてくれ、余を殺すつもりで全力で来るが良い、遠慮はするなよ? 何があろうと責任は余にある。魔術の仕様も可だ」



 いやいやいや、国のトップにいきなり試合をしろと? しかも殺す気で? てかこんなイベントはなかったぞ? でも王と戦う機会なんてゲームではなかった。なんだかやる気が出てきた。



「行きます」



「何処からでも来るが良い」




 大きく深呼吸をしながらマナを取り入れつつ体に循環させる。筋繊維の全てに浸すように脳を包むように。この感覚が苦手な人は早々に引退するんだよなぁ。



 そしていつもの様に低い体勢でビリヤードでもするように構え、摸造剣にも魔力を通す。



 そして、足元が弾け飛んだ様に前へと駆ける。今回は全力だ、最早音は聞こえない、本来なら視界に入るものの処理能力が間に合わない速度に達している。



 最速の突きと自称してる。だが、王はまだ間合いに入る訳も無い位置で剣を振るう。



 無性に嫌な予感がした僕は地面を強く蹴り進行方向を斜め前に修正した。



 王を通り過ぎ後ろの元いた進行方向を見ると、草木が倒れている。ほぼノーモーションであれは洒落にならない。



  突進からの一撃は無理だ、小刻みに左右へ回避しながらなんとか剣の間合いへ近づく、剣で打ち合うだけで僕が有利だ、何故なら電撃を帯びているのだから。



 そう思いながら剣を振るった、当然王もだ。結果は僕が宙へ舞い落下するのを王自ら受け止めると言うなんとも情けない結果に終わった。




 消耗と舞い上げられたダメージで妙な高揚感と共に意識を手放した。

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