馬車に揺られ

 馬鹿騒ぎにつき合わされ疲れた次の日には馬車の中だ。元のゲームだったなら時間の無駄なんで特定ポイントへの転移が可能だったのだがどうやらそんなものはこの世界には無いそうだ。



 魔術もスキルだってあるんだ、転移も残しといて欲しい、お尻が痛い。



 ゲームの頃の面倒なのは残っている。チューター側でのレベル上げ、魔獣や盗賊の撃破これだ。



 6人の小汚い男がいる武器も農具等、お世辞のも強そうにも見えない。



 僕が醒めた目で連中を見てると、校長が提案する。



「アリスよ剣を使わずあれらを倒せるか? 可能なら魔術の行使で倒して欲しい」



 魔術の素養を見たいか。魔術自体あまり自身が無いが身体強化とその副産物の雷撃の術式は得意だ、雷撃と言ってもスタンガンのような物で雷の魔術のような派手さも威力も無い。しかし、盗賊を殺すのではなく捕らえて報奨金を頂くには丁度良い魔術だ。



「わかりました、捕らえてきます」



「危なくなったらわしが必ず助ける、思いっきりやりなさい」



「はい」



 馬車を降りると、下卑た視線が向いてくる。実に不快だ。高く売れそうだの聞こえてくるが、売られるのは貴様等だ。



 僕は姿勢を低くして敵へ向い一気に進む、敵も慌てて武器を振り回すが、するりとかわす。そのまますれ違い様に相手に掌で触れると、バチッ音が鳴り一人、もう一人と倒れる。



 その光景を見ていた他の男が魔術師と悲鳴にも似た声を上げ背中をこちらに向け逃げ出すが、遅い、レベルの桁が違うのもあるが速度に重きを置いた、僕の肉体はゲームの中でも最速を誇る。



 このようにバラバラに逃げた残り三人に追いついて気絶させる事等造作もないくらいには。



 全ての盗賊を縄で縛って馬車に戻る。



「少しばかり手際が良すぎんかの?まるでベテランの盗賊狩りの様じゃて」



「農民上がりの盗賊でしたので、これが兵士崩れや傭兵崩れなら話は違ったかと」



「身体強化に雷の魔術、それにその身のこなし。その歳でと思うと恐ろしくも頼もしいのぉ」




「ありがとうございます」



「孫もこのくらい可愛くて礼儀正しければ・・・いっそ孫になってくれんかのぅ」



 僕の事情を知って言ってくれてるのか冗談なのか?設定では親は事件で殺されている。ストーリーでは復讐の場面もあるのだが、犯人もわかってるし、なんだかなぁ。



「僕には一応家名がありますのでごめんなさい。でもよければ二人で合う時だけお爺様と呼ばせてください」



 アリスを演じるのであればこうかな?



「本当いい子じゃな。困った時は言いなさい、いつでも力になるぞい」


 

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