第3話 回復と悪化の無限ループ

 火曜の朝。起きてみたらいきなり左耳に強い圧迫感がある。寝る前はすっきりして違和感が殆ど消えていたのに、寝ていただけでなぜか症状が悪化していた。


 寝ていた間になにかしたはずもないのに一体何で悪化したのかわからず、とりあえず適当に食事を済ませて、薬を飲み、また横になるが、ひどい耳鳴りが続いて全く良くならない。


 結局、火曜日は1日中耳鳴りに苦しむハメになった。


 翌日の水曜日は出勤日だったが、相変わらず左耳に圧迫感があり、症状が強いために休みをもらい、同じ病院へと行く。ちょうど一部の薬が切れたので新しくもらおうと思っていたが、聴力検査をしたところ前より回復していると言われてしまった。個人的に治っているようには感じなかったが、検査結果を疑っても仕方なく、薬の追加はなく残っている薬を飲みきるという形で診察終了。


 病院から自宅に帰るときに風切り音が左耳にも聞こえるようになっていることに気がついた。どうやら検査結果で良くなっているのは本当らしい。


 その後耳鳴りも起きずにテレビの音声も普通に聞こえるようになっていた。火曜日の症状悪化は風邪のぶり返しみたいなものだったのだろうと思うことにしてその日は眠りについた。


 が、木曜日起きてみるとまた左耳に強い圧迫感が起きている。耳鳴りも今までで一番ひどい。一体なぜこんなことに!?と思いつつ薬を飲みながら横になるが、全く改善しない。


 木曜日は仕事は休みだったが、耳鼻咽喉科の病院も定休日だった。仕方なくネットで個人でもできる治療法がないかとぐぐってみると、どうやら低音障害型感音難聴の治療は運動療法が主流らしい。有酸素運動を疲れない程度で行うことで耳の血流を良くするんだとか。


 というわけで一時間ほど自転車で走り適度に運動してみたものの、家に戻ってきたら耳鳴りが悪化してしまっていた。


 他にも身体から水分を放出させる働きのある漢方薬を飲むといいという情報があったので五苓散を買って飲んでみるが、変な体臭がしてくるだけで変化はなし。熱い風呂に入って疲れを取るのもいいというので1時間ほど長風呂をしてみたが、特に効果は感じられなかった。


 しかし、さんざん色々やっていたおかげか耳鳴りで眠れない状態で午前三時を超えた辺りから急速に耳鳴りが収まり始め、なんとか眠ることができた。


 翌日の金曜日。一週間が経過したが、朝から耳の圧迫感が少なくて耳鳴りも残っているが小さい。今日は出勤日だったので仕事に行くが、医者からの疲れすぎないようにという話を事情を話していつもの半分ぐらいの時間で帰るようにしてもらう。金曜日はそのまま症状が軽いままで終わり、普通に眠りにつくことができた。


 ところが次の土曜日はまた朝から耳鳴り圧迫感ともにひどい。なぜ1日毎に症状が良くなったり悪くなったりするのかわからず混乱気味になってくる。その日も仕事は半分ぐらいにして帰ってきたが、悲惨なほど症状が重くて苦しむはめになったが、また長風呂と五苓散と薬を飲んでいたら、午前3時過ぎぐらいに症状が緩和した。


 月曜は症状が軽い。火曜日が重い。水曜日は軽い。木曜日は重い。金曜日は軽い。土曜日は重かった。


 てことは日曜日は軽いのか?と思っていたが、起きてみたら本当に症状が軽い。ここまできっかり1日毎に症状が変化すると、これは病気じゃなくて呪いかなにかかと思うようになってくる。


 ということは月曜日は症状が重いってことになる。これを阻止できれば回復への道標が見えてくる可能性が高い。祈るような気分で長風呂と五苓散と薬のセットを済まして、眠ることにした。


 そして、月曜日の朝。症状が軽かった。仕事に向かって自転車で移動するときも左耳に風切り音が聞こえてくる。


 発症からすでに9日経過していたが、やっと治りつつあると確信して精神的にも楽になってくる。


 だが、甘かった。この低音障害型感音難聴の体験談を読み漁ると数十回繰り返す場合もあるといわれるだけある。仕事をしていたらみるみる左耳の圧迫感が強くなり、帰る頃には風切り音も全く聞こえずいつもの悪いときの症状に戻っていた。しかも、朝は症状が軽く昼以降に悪化したせいか、夜中になっても全く症状が緩和しない。いつもの風呂セットでも全く駄目だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る