第2話 発症~診断
左耳の低音だけが聞こえなかったことなんてすっかり忘れていた2ヶ月後。仕事中に左耳に変な圧迫感があることに気がつく。右耳と左耳を交互に塞いで音を確認するとはっきりと低音が聞こえなくなっていることがわかった。
そして、仕事場を終わらせて自宅へ自転車で帰っていると風切り音が左耳だけ全く聞こえないことに気がついた。そして、少し静かなところを移動していても左耳で激しい耳鳴りがなっていることがわかった。
前回は自宅に戻るまで耳鳴りに気が付かなかった。それが今回は外にいても気がつくぐらい激しいもの。つまり自宅に戻ったらどうなるかと言えば、前回を遥かに超える耳鳴りに苦しむことになった。テレビの音声を聞いても前以上に低音が抜けた音声が聞こえてくる。はっきり言って気持ち悪い。おまけに高音ですら割れた感じの音になっている。
その日は幸い金曜日だった。土曜なら耳鼻咽喉科はやっている病院があったので、翌日の朝すぐに駆け込んだ。
検査は簡単でまず耳の中を撮影して鼓膜に異常がないかチェック。
それが終わったあと聴力検査を行い、さらに鼓膜に圧力をかけて異常がないかを調べる。
結果は鼓膜に特に問題はないが左耳の低音だけ大幅に聞こえなくなっていることが確定した。
そのときに告げられた病名が「低音障害型感音難聴」という長くて覚えづらいものである。
近年若い人を中心に増えている病気で、特に女性に多いらしい。とは言え男性にも普通に起こる難聴でもある。突発性難聴とは違い、低音のみが聞こえなくなるのが特有だとのこと。
突発性難聴に比べると6~7割の人が治るものの、再発を繰り返すのが特徴だ。原因は解明されてないがストレスや疲れから来るとされている。
医者からはいくつかの薬をもらった上で、『疲れないようにしてください』といわれたが、なんせ倉庫作業は持って歩く仕事のため、無理を言うな状態である。
このときは薬を飲めばなるだろうと軽く思っていたので、病院に行ったあとに普通に仕事に向かった。日曜日も症状は回復していなかったが、大丈夫だと勝手に決めつけて仕事に行く。
これが大きな誤りで夜ぐらいには自分の声すら片耳しか聞こえず人とまともに会話が困難なレベルにまで悪化してしまっていた。
さすがにこれはまずいと思い、翌日の月曜日は仕事を休むことにした。
すると安静にしたおかげでかみるみる症状は回復。月曜日の夜には多少音が歪んで聞こえるが低音もそれなりに聞こえるぐらいにまで良くなっていた。
翌日の火曜は仕事は最初から休みなので大人しくしていれば治るだろうと思っていたが、ここからが本当の地獄の始まりだった。
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