第9話 スパルタ指導

サンタトイお手伝い初日私はサンタトイのバックヤードにいた。

「いらっしゃいませ」

「かしこまりました」

「少々お待ちください」

「お待たせしました」

「申し訳ございません」

「ありがとうございました」

スルメ先輩の目の前で七大接客用語を淡々と繰り返す。

「声が小さい!」

「いらっしゃいませのときは言い終わったろ15度の礼をする。」

「笑顔!笑顔!顔が死んでるぞ!子供が泣いたらどうするの?」

「そんなんじゃ売り場出れないよ!」

お手伝い初日にしては考えられないほど喝が飛ぶ、初めて会った時のスルメ先輩はこんな厳しいイメージは無かった為私は怯えながら扱かれている。


「お疲れー、あっ!昨日言ってた後々の新人ちゃん?俺タクヤよろしくね。」と若い男の人が入って来るなり軽く挨拶をしてきた。

「お疲れ様です。フユナさん…たくやさんに先に挨拶されるんじゃなくて先に挨拶しなさいよ!」

スルメ先輩はかなり厳しい。

「初めまして、今日から研修としてしばらくお世話になりますフユナです。よろしくお願いします。」

「礼は15度!」

「はいっ!」私は丁寧に礼をした。

「スルメちゃん厳しいねーたかが玩具屋なんだからそんな扱かなくても…」とタクヤさんは若干引いていた。

その後30分ほど私は七大接客用語を復唱し、やっと売り場に出る。

「スルメちゃん俺がここからはその娘の面倒を観るからレジやっててよ。」

「分かりました!よろしくお願いします。」

とスルメ先輩はレジへ向かって行った。

「あっ!今ホッとしたでしょ?」

とタクヤさんは私の気持ちに気づいた。

「いえいえそんな事ございません。ご指導ご鞭撻よろしくお願いします。」

「あちゃースルメちゃんのせいで固くなりすぎだよーリラックスリラックスー」とタクヤさんは笑顔だ。

タクヤさんには品出し、補充、在庫管理、発注を近くで見学させてもらった、その間に色々とお話もでき一時間の昼休憩も頂いた先程とは違い楽しい時間となった。

その会話のなかで、タクヤさんは24歳で20歳の時サンタデビューをして二年後の22歳の時にミュージシャンになりたくサンタを辞職したそうだ、サンタトイには20歳の時配属されサンタを辞めた後はバイトとして続けているそうだ。

一方スルメ先輩は23歳で去年サンタを引退して結婚し今はパートしてサンタトイで勤めている元々は2人とも社員さんだった訳だ。

「よしっ!俺がフユナちゃんに見せれる仕事はこれくらいだから後はスルメちゃんの所行ってレジ作業を見てきなよ。」

「あっ…はい!」

「怖がらなくても良いよ、あいつはああ見えて優しいやつだからさ。」

と言われ私は泣く泣くレジへ向かった。

「スルメ先輩ご指導ご鞭撻よろしくお願いします。」

「よろしい!まぁ、ここからリラックスしながらやりましょ、お客様の目にも入るから湧きあいあいとね。」

「はい!」

先程とはまた違って優しく見えるスルメ先輩。

レジにいる間はしっかりとお客様に七大接客用語を駆使し笑顔でやり切った、私はただスルメ先輩の隣にいるだけだったがスルメ先輩の何気ないお客様との会話は勉強になった。

途中店長が出勤してきた。

店長はミシマと名乗り颯爽とバックヤードに入って行った。

「私とフユナちゃんとタクヤさんはフルタイムで9時から18時まで残業無しだからサンタトイの営業時間は20まで18時までは店長か副店長一人で店番すの、交代の時で良いからしっかりと挨拶してね。」

とスルメ先輩に言われた。

ミシマ店長が18時前にレジにやってきた。

「初めまして私はフユナと申します。19歳です、よろしくお願いします。」

「初めまして!私はミシマと申します店長をやらさせてもらってるものです。43歳でございますよろしくお願いします!」

私よりも大きな声でしっかりと自己紹介をして下さった。

それを観ていたスルメ先輩とタクヤさんは笑っていた。

「まぁまぁとりあえずよろしくね、時間だから三人共後は私に任せてアガりなさい。」とミシマ店長は笑顔で言った。

お疲れ様ですと私達は言いバックヤードに下がって行った。

バックヤードでスルメ先輩は言った。

「フユナちゃんこれでサンタトイの一員だね!」

「えっ?もうですか?」

と私は驚く。

「私のスパルタに耐えれた人は珍しいわ、次の出勤以降はこんなに厳しく行かないからよろしくね。」

「なんで初日だけ厳しいのですか?」

「初日に耐えれない人は長続きしないからよ。」

「成程…今日はありがとうございました!またよろしくお願いします。」

こうして私のサンタトイの初日は終わった。

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