第7話 向日葵

午後練も終わり私はサクからメールでの指示で、訓練所近くのコンビニで待っていた。

「おい!乗れよ!」と車の中から声がした。

運転席の窓が下がりサクの顔が見えた。

「あんた車持ってるの?」

「まあな、小さい頃からお年玉貯金したり、高校ではバイトしてたしな。」

「へーやっぱりあんたは凄いね。」

「何がだよ、とりあえず乗りなよ。」

私は助手席へ乗った、車の中は綺麗にしてあったナビはついていないようだ。

「これ中古車なんだよね。」とサクは言った。

「まあ、よく分からないけど良い車じゃない?」

「ありがとう」

「で、どこ行くの?」

「まだ内緒だよ、とりあえず走らすからシートベルトしてな。」

私がシートベルトをするとサクは車を走らせた、何故か私達は会話なしで10分ほど車でサクの見せたいものがある場所まで走っていく。

「そろそろかな。」

サクは広い敷地が並ぶ道を少しスピードを緩めて走る。

「着いたよ」

着いた場所は特に何もない。

「何よこれ?」と私は聞く。

「あっちをよく見なよ!」とサクは指を指す。

私は指の指す方向を見る、あっ…

「見えるか?」

「うん、向日葵が一輪だけ咲いてる。」

「冬なのにさあいつだけ咲いてるんだよ。」

「凄い…夏を待ちきれなかったのかな?」

「違うよ、夏を通り過ごして遅くに咲いたんだよ。」

「へー成程…」私は呆気にとられた。

「周りのやつはもうとっくに散ったのに、凄いよな遅咲きって。」

「うん、そうだね。」


私達はただただ向日葵を観ていた。

「遅咲きでも良いんじゃないか?」とサクは私に言う。

「なんの事?」

「サンタデビューだよ!」

「あー、って言うかもう私は焦ってないよ?」

「えっ?そうなの?諦めたのかサンタを?」

「サンタは諦めてないよ、ただルーキーイヤーでデビューは諦めた。」

「そっか、それを聞けたなら安心だよ。」

「えっ?心配してたの?」

「違うよ!実力ないくせに俺と張り合おうとしてきたお前が急に張り合おうとしなくなってきたから気味が悪かったんだ。」

「何それウケる」

私達は笑った。


私は嬉しかったし、また頑張ろうと思えた。

今目の前にある向日葵の様に遅くても良いからパッと咲いてしっかりと上を向こう。


遠回しだが多分サクは私に頑張ってと伝えたかったのかな、私はそう思うことにした。


その後10分くらい眺めたら、私達はまたコンビニに向い特に会話もなく解散となった。


私はメールで、ありがとうと送った。


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