第2話 フーは飛ばない

「今日は飛んでよ!お願い!」

私はソリに乗りそれを引いてるトナカイのフーに大きな声でお願いする。

フー勢い良く走っていたが離陸の瞬間に急に止まった、その勢いで私はソリから投げ飛ばされた。

「痛いっ!あーまた足に痣が…」フユナは落ちこむ。


フーは飛行出来る種のトナカイなのだが

毎回助走までは勢い良く、いざ離陸の時なな怯んで脚が止まってしまうのだ。


多分怖いんだと私は思っている。

フーとは三太高等学校を卒業して三太物流に入社し入社式直後会社からパートナーとして受け渡されてから早四ヶ月…

他の同期はもう自身のパートナートナカイと飛行が出来ている。

完全に私は置いてかれている、今は8月で12月にはもう本番を迎える。

私はルーキーイヤーで配達員として子供達にプレゼントを渡すつもりなのだが、これでは配達員ではなく倉庫のプレゼント仕分け、ピッキングに回されてしまう。

どうしたら飛べるんだろ、そう思いながら訓練が終わり帰路へ向かう。


「フユナー!待ってー」

私は振り返った先にはヨウコ先輩が手をふりながら小走りで向かっきた。

「お疲れ様です…」

「あれれ、フユナ元気ないじゃんまた飛べなかったんだな?」

「はい…」

「大丈夫、大丈夫!とりあえず呑みに行くぞー!」

「いや、私まだ18なので呑めないです…」

「知っるわよ!奢るからちょっと付き合いなよ!」

「はい!喜んで!」

ヨウコ先輩は私の憧れだ。

女性配達員のエリート年齢は27歳、19歳の頃にはとっくに配達デビュー所謂サンタデビューを果たしている。

女性のサンタは全国を数えても数少なく10人もいるかいないか、男性サンタがその10倍以上はいる。

女性がサンタをやるのは珍しい話で尚且つ男性を含めた上でエリートと称賛されているヨウコ先輩は本当にすごい方なのだ。

その為ちょっと男勝りな性格でもある。


ヨウコ先輩も女性の後輩は初めてですごく私の事は可愛がってくれている。


ヨウコ先輩と私は大体いつも同じ居酒屋に行く、

「生一つ!フユナは?」

「私は烏龍茶で」

席につくなりヨウコ先輩はドリンクを早々と注文した。

料理もヨウコ先輩がいつも通り颯爽と決めてドリンクが席に届いた瞬間にオーダーした。

「おつかれー」と私とヨウコ先輩は乾杯をする。

「で、まだフユナは飛べない事落ち込んでるの?」

「はい…」

「まだまだ飛べなくても大丈夫よー」

「いや、周りは皆とべているのに私だけ飛べていないなんて…今度の12月デビュー出来るか正直不安です。」

「フユナまだルーキーイヤーでデビューしようと思ってる訳?そんなに焦らなくて良いのにさー」

「私はヨウコ先輩みたいになりたいです!だからルーキーイヤーでデビューしたいんです!」

「気持ちは分かるし嬉しいわよ、でもこれからフユナはまだまだ先が長いのそんなに焦らずにゆっくりやれば良いじゃない。私の勘だけど今年のルーキーで一番早くデビュー出来るのはフユナ!だから飛べないからって焦らない事!他にもやる事あるでしょ」

いつもヨウコ先輩は私の話を真剣に聞いてくれる。

ヨウコ先輩の言う通り飛ぶ以外にもやる事はいっぱいある、プレゼントを渡す子供達の情報を把握、スムーズに解錠し窓を開け侵入する技術

肉体的にもアスリート並の体力が必要とされる為筋トレも必須。

サンタはある意味職人でありアスリートでもある、尚且つ子供達を喜ばせるパフォーマーでもある。


話しをしながら料理を食べヨウコ先輩が大分酔っ払ってきたら大体いつも解散となる。

別れしなヨウコ先輩は私に

「絶対にあんたは成功する、だから大丈夫だよー」とヨウコ先輩家に帰って行った。


私も一人暮らしのアパートに向かった。

「焦らずにゆっくりやるか、フーもいつかは飛んでくれるよ!」と自分に言い聞かせた。

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