第28話 決闘
決闘日、俺は城を出て、決闘場に案内された。
俺は決闘場に出る。
かなり客が入っている。どうも暴虐王は、自分の強さをみせびらかしたい性質を持っているらしい。
観客は俺の登場を見て、
「あいつ一人なのか?」「弱そうだ」「あれじゃあ倒せまい……」
とかなり落胆している感じだ。失礼な奴らだな。
ちなみに客の中には、
「ペレスさーん、頑張ってー」
と俺を応援する声が聞こえるので、たぶんあいつらがいるんだろう。残念ながらどこにいるかは分からない。顔で区別がつかないという以前に、人が多すぎて発見するのはかなり困難なのだ。
暴虐王バグダムドはまだきていないようだ。
早くきてくれねーかな。こっちはもう5日も待ってるからな。
しばらくすると、俺がいる場所から向こうの方の出入り口から、でかいやつが出てきた。
さすがにこのレベルだと男とすぐわかるくらいの筋肉をつけている男だ。
裸の上にマントを着ている。変な格好だ。
「お前が決闘相手か? 弱そうだな」
「あんたがバグダムドか?」
「いかにも。見たことがないのか?」
「別の国から来たものでね」
「ほう? 他国から来たものが、なぜこの俺様に勝負を挑む?」
「いや、ちょっと事情でな。お前の所にいるらしい、ドラゴンの女が欲しいんだけど、たぶん殺さねーと返してもらえねーと思って、殺しに来たんだけどさ。別に返してくれるなら、ここで勝負する必要もないし、殺さないでやってもいいぞ」
「ハハハ、あれは俺様のものだから誰にも渡さんし、それに決闘のルールではどちらかが死ぬまでは、絶対終わらんのだ。俺様に決闘を申し込んだ瞬間からお前の死は決定しておるのだ」
「そうなのか? それならいいんだけどなぁ……」
まあ、確かに強そうなやつだけど、俺を殺してくれるという可能性はかなり低いよな。
「とりあえずお前はかなり弱そうだから、倒してもあまり楽しめなさそうだ。一瞬で終わらせてやろう」
俺そんなに弱く見える見た目なんかね。自分ではいまいちわからないんだが。
「そうかい。それで、決闘ってのはいつ始まるんだ?」
「お前の合図で始めていいぞ」
「そうか。あー、じゃあ始めー」
俺がそう宣言した瞬間、バグダムドが俺に殴りかかってきた。
基本的に俺は敵の攻撃を躱したりはしない。痛くもないし、死にもしないからな。
ただその攻撃は避けた方が良かったらしい。
バグダムドの拳は俺の顎付近に直撃、俺はものすごい勢いで殴り飛ばされ、そのまま決闘場の外まで吹き飛ばされてしまった。
なおも俺は飛び続け、決闘場から遥か遠くの位置まで飛ばされてしまった。
○
「「「えええええええええ!!」」」
決闘を観戦していた、レミ、アイシャ、ミナが同時に叫ぶ。
ペレスが一瞬で吹き飛ばされて行ったのを見て、3人は愕然としていた。
「ペレスさん目にも留まらぬスピードで吹き飛ばされて行ったんだけど!?」
「勝てるって豪語してたよね!?」
「まあ、死んではいないだろうが……一瞬で吹き飛ばされて果たして勝てるのか?」
「しかし、どこまで行ったんだろう」
「だいぶ遠くまで行ってしまったような気がする。なんか尋常じゃない速度で吹き飛んでいったからな」
3人は吹き飛んだペレスを見て、だいぶおろおろしている。
「彼が勝てないのなら私が挑みましょうか?」
「いやいや、やめたほうがいいから! とりあえずペレスさんが帰ってくるのを待ちましょうよ!」
「そうだ一人で戦っても死ぬだけだぞ!」
暴虐王に挑もうとするバラシアを3人は必死で引き止めた。
○
(……普通殴ったら頭を殴ったら吹き飛ぶのではなく、破裂しないか? だいぶ力を抜いて殴ったとはいえ)
ペレスを殴った後、バグダムドは違和感を感じていた。
(まあ、いいか。死んだのは間違いないだろう)
そう考えてバグダムドは勝利の宣言をした。
観客たちは、「やっぱりあいつじゃ駄目だったか……」「弱そうだったもんな」と落胆している。
(あんなにあっさり終わったら、気も昂らんな。今日は帰って寝るか)
そう考えて、城にある自分の寝室まで向かった。
○
あー油断したなー。でも吹き飛ぶとは少し想定外だったな。
しかし、どこまで飛ぶんだこれ。
10分くらい猛スピードで飛び続けているけど、まだ速度があまり落ちない。
これだいぶ王都から離れた所まで行っちゃてね?
……あ、そうだ。魔法を使って勢いを削げばいいじゃん。何素直に吹き飛ばされ続けてんだ俺は。
30分経ってようやく気付くとか大丈夫か俺は。
とりあえず、魔法を使おう。風属性の魔法を使って強烈な向かい風を吹かせれば止まるかな。
俺は風属性の魔法で向かい風を発生させる。それでもそう簡単には止まらないが、少しずつ勢いが削がれてきた。そして、地面に近づいてきて、俺は着陸する。
さーて、ここどこだ?
とりあえず、王都に帰るか。奴の攻撃は当たってはいけないという事が判明した。
今度からは避けよう。まあそこそこ早かったけど、躱すのは余裕な速度だし大丈夫だな。
俺は再び王都目指して歩き出した。
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