第7話 なかなか死ねない
「ふん。お主が死なぬのは、自己再生能力が高いからじゃろう? それならば、それを無くせばいいだけのことじゃ」
メオンは杖を俺の首元へ当ててきた。
そのまま呪文をぶつぶつと唱える。
「よし、これでお主は再生しなくなるはずじゃ。これなら殺せる」
そして、メオンは前と同じく強力な攻撃をしてくる。
俺の胸に再び風穴が空いた。
その穴は時間が経っても再生してこない……が、
「まあ、死ねないよな。俺って再生しなくても死ねないんだよな」
風穴が空いたままでも俺は死ねない。以前、再生機能を切られた状態で、普通なら致命傷な攻撃を受けたことがあるので、それは知っていた。
「ぐ……」
メオンは今度は頭に向かって、強力攻撃邪術を放ってくる。
俺の頭に穴が空いた。夥しい量の血が頭から吹き出る。
しかし、俺は死なない。
「何処攻撃してもしなないぞー。ほかの方法試してくれ」
「おかしいじゃろ! 再生しなくても死なぬのなら、最初から再生するな!」
「そんなこと言われてもな。好きで再生してないし。まあ、再生しないと見栄えが悪いからな。今の俺、他人に見せられない状況になっているだろ?」
「……そういえばお主、平然としておるが痛くないのか?」
「痛覚は感じないようになっている」
「そうか……」
痛いのは嫌いだからな。一切痛みは感じずに死にたい。
「仕方ない。この邪術は使いたくなかったがの」
メオンが攻撃邪術の準備を始める。
凄まじい量の魔力が杖の先端に集まる。
こいつ思ったけど結構実力あるっぽいな。だいぶ魔力を消費しているはずなのに、まだここまで魔力を残しているとは。
「木っ端微塵になるのじゃ! 『ヘルバスター』!」
魔力が一気に解放され俺に向かって放出される。
圧倒的火力の攻撃だ。その攻撃は俺に直撃する。凄まじい攻撃を全身に受け、俺は無数の塵クズとなって周囲に飛散した。
俺の体は無残にも細切れになって、床に散らばる。
……ちなみにこんな状態になっても悠長に実況するかのような感じなのは、この状態でも生きているし、意識があるからだ。
「さすがに死んだじゃろ……? 仮に生きておったとしても、再生も出来ぬなら死んだも同然じゃ」
いや、それ死んだってことにならないし。
このように死んでいないのに、物理的に動けなくなる事が俺として一番困る。そのため、そうならないように俺は対策を取っている。例えば今回の場合は、奴にかけられた再生禁止の術を解けばいい。
この状態でも解こうと思えば解ける。
俺は再生禁止の術を解く。すると自己再生が始まった。
「なぬっ!」
「細切れになっても俺は生きているんだよなー」
「ま、待て。生きていたのも驚きだが、何故再生した!?」
「解いたからだ。動けなくされたりするのが1番困るから、そうならないために、色んな方法で対処できるようにしてる」
「なんじゃと……ぐぬぬ…………ん?」
メオンの視線が俺の下半身へと注がれる。その瞬間、メオンの顔が真っ赤に染まり、
「は、はは裸!?!? ふ、服を着ろ!」
目を逸らしながらそう言った。
「あ? あー、そういえば服を戻すの忘れてたな」
俺の服は魔法で作っており、いつでも元に戻せる。
「でも、別に裸でよくないか?」
「いいわけあるか!? 恥ずかしくないのか!? 女の前で裸になって」
物凄く慌てながら言ってきた。
メオンの性別は女って事で確定したな。自分で言っているんだから疑う必要はないだろう。
「いや、全然。つーか、お前は過剰反応しすぎだろ。見たこと無いのか?」
「あるかそんなもん! いいから服を着ろ! 着れぬならせめて隠せ!」
「あー、分かったよー。うぶなやつだなー。処女かお前は」
「しょしょ処女じゃないわい!」
こいつさっき「あるかそんなもん!」って言ったの忘れてるな。見たこと無いなら処女に決まってるだろ。
俺は服を魔法で出して着る。
ちなみに俺は灰色の服を着ている。
「着たぞ。あー。つーかこれ以上、手段はない感じか?」
「最後の手段がある」
「お? まだ奥の手があるのか?」
「貴様を魂ごと消滅させる」
「た、魂ごと……?」
「そうじゃ。術によって貴様を魂ごと消滅させる。致命傷が再生されなくても、細切れになっても貴様が生きていられるのは、魂に何らかの細工がしてあると、我は考える。魂ごと消滅したら確実に貴様は死ぬじゃろう」
俺はそう言われて震えだす。
「ふ、怖いか。無理もない。魂が消滅するという事は、お主と言う存在は今後、転生の輪から完全に消え去るという事じゃ。死後お主は何者にも生まれ変われなくなる……!」
メオンはニヤリと笑みを浮かべてそう言った。俺は震えながら、
「その発想はなかった! お前は天才だ!」
「はぁ?」
「魂ごと消せば確かに死ぬかも……! よし! じゃあ早くやってくれ! すぐやってくれ!」
「聞いておったか? お主、生まれ変われなくなるかもしれんのじゃぞ?」
「ん? 生まれ変わる? ハハハ、そんなんいいよ別にー。生きすぎてもう清々したし。むしろ、生まれ変わるとか嫌だ」
「……もうお主のことを理解しようとするのはやめよう」
メオンは呆れたような表情でそう呟いた。
その後、杖を掲げて、杖の先に力を集中し始める。
そして、
「ソウルバニッシュ!」
白い光が発生し、その光が俺に向かって飛んできて俺にブチ当たった。
「ふー……今のは邪術じゃなく、聖魔法じゃから、なるべく使いたくはなかったのじゃがな……使い慣れん術を使った事で、いつもより疲れたわい……」
メオンは顔中から汗を流している。
「しかし、これでやつも……」
「ごめん。何か駄目だったっぽい」
「なぬ!?」
「体の奥にある何かが砕け散って、意識が飛びそうになった時は、成功した! と思ったんだよ。でも、気付いたら元に戻ってた」
「……」
メオンは驚いて言葉も出ないようだ。
「すまんな。やっぱ無理だったかお前には。手間をかけさせたな。じゃあ俺は帰る」
俺はそういい残して帰ろうとする。
「待て!」
メオンに呼び止められ俺は立ち止まった。
「我は我は、1000年に1度と言われた天才邪術師だぞ……? その我に出来ない事など……あってはならんのだ……」
メオンはわなわなと震えながら呟いている。
「絶対に! ぜぇえええったいに! 我のプライドにかけて! お主を殺してやる! ありとあらゆる方法を試してでも殺してやる!」
そうメオンは絶叫した。
俺としてもそこまで殺そうとしてくれるのはありがたいことだけどなぁ。でも、難しいんじゃないか?
そう思ったけど、俺は付き合ってやってやった。
その後、さまざまな手段でメオンは俺を殺そうとする。
しかし、どの方法も成功せずついに、
「……も、もう限界じゃ」
魔力と体力の限界を迎えたみたいで、ばたんと倒れて気を失った。
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