第二章 阿修羅Ⅱ Part1

 アシュラが神奈川に出現したのは、午前十時半過ぎ。その数は六十機強、今までにない大軍だ。ワシントンやモスクワを襲撃した時でも、三十機前後だった。


 アシュラは三隊に分かれ進撃した。一方は東京を目指し、残り二隊は何かを求めるように、神奈川を破壊しながら突き進んだ。


 警察では手に負えない相手であることから、政府は自衛隊に緊急出動を要請した。当然、反発も予想されたが、状況が切迫しているだけに政府の対応は珍しく早かった。


 この決定に、一部議員は自衛隊実戦の既成事実ができると喜んだが、出動する隊員の志気は低かった。相手はあの米軍ですら歯が立たなかった化け物なのだ。自衛隊に勝ち目は万に一つもなかった。


 予言メールを信じ、避難した人々もかなりいたが、被害が予想される地域に残っている人間も多かった。そのためアシュラ出現の報せを聞いた人々により至る所でパニックが起こった。


 自衛隊の出動を歓迎している議員たちは、首都圏から大分離れ、安全と思われるところへすでに避難を終えていた。米国大統領でさえ逃げ切れなかったのに見事な危機管理だ。


我が身に降りかかることとなれば日本の政治家も海外の先例から学び取るのを忘れないのだ。

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