第31話 誤嚥性肺炎
妹のところへ定期的に通い始めてから9ケ月が過ぎました。
すぐに眠ってしまうこともあれば、反応が良く、笑ったりすることもありました。
全く反応がなく、どこか宙を見ているときもありました。
会うたびに妹は痩せて小さくなっていきました。
それでも手を握るとぎゅっと握り返したり、バイバイとか弱く手を振ることもありました。
ただ、微熱がずっと下がらず、病院で診てもらっても原因がわかりませんでした。
最後には、熱が高い体質なのでしょうとも言われました。
2018年1月高熱が続いたため、入院施設のあるW病院を受診しました。
呼吸器科がある病院で、R施設の他の利用者もよく受診していました。
妹は誤嚥性肺炎と診断されました。
とうとう一番恐れていたことが起こってしまいました。
雪の積もった日に、医師からの説明を受けました。
R寮の保健婦さんと部長さんと母が同席しました。
肺のレントゲンを見ると、奥の方に炎症があります。
この方は寝たきりだったのですか?
寝たきりの人がよくなる位置です。
飲み込む機能が低下してくると、食べ物を飲み込んだ時に気管支や肺にはいってしまうことがあります。
食べ物が肺にはいること自体は問題ないのですが、一緒に細菌がはいってしまうのです。その細菌のせいで肺炎をおこします。
げほげほすることが多いのですが、この方はあまりげほげほしないようです。
治療としては口から食べるのを中止します。
栄養補給のため点滴をします。
あと、栄養価の高いゼリーを食べてもらいます。
これは1つ300円です。
もし、300円なんて高くてということであれば他のゼリー状のものを食べてもらってもいいです。
それはご家族の方が用意して下さい。
炎症を抑える薬を投与します。
この薬も、一回使うと次は効果が出ない場合が多く、
何度も炎症を繰り返しているうちに効く薬がなくなってしまいます。
医師の説明はそんな内容だったと思います。
妹は特別苦しそうという感じはしませんでした。
ベットに寝ている妹を見て初めて気づいたのですが、
足が真っすぐ伸びず、くの字に曲がっているのです。
伸ばそうとすると声を出して嫌がりました。
車椅子に長く座っていたせいで、その状態のまま足が固まってしまったのでしょう。
病院だと足が伸びるようにマッサージをしてくれないからね。
部長さんが言いました。
数日の入院で足が曲がってしまったと言いたかったのでしょうか。
白々しいとは思いましたが黙認しました。
母はこのままずっと入院させたいといいました。
何度も言いました。
病院だとこのまま寝たきりだよ。
いいの?
でも、ここの方が暖かいから。
よく診てもらえるから。
母はそんなふうに言っていました。
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