第28話 延命治療の現状

妹は昼のほとんどを車椅子の上で過ごすようになりました。

言葉を発することもほとんどなくなり、

たまに、お・・かあさん・・

おねえ・・ちゃんと言うことがありました。

話しかけるとこくっとうなずいたり、

首を振る程度でした。

ただ、話しかけている内容は理解しているようでした。

食事も、自分では食べようとせず、

支援員の方が、食べさせていました。


保健婦さんとの面談がありました。

まりこさんの現状は、なんとか食事をしているものの、

血液検査をすると栄養が足りない状態です。

食事はしているんですが、栄養が吸収されないんですよ。

いろんなことも忘れていってしまいます。

いずれ、食べるという行為を忘れてしまうと思います。

口の中に食べ物があっても、飲み込むということを忘れてしまうのです。

食べ物を口元に持っていっても、口を開けなくなるかもしれません。

そうなると、無理に食事をさせることも出来なくなります。

そうなった時どうするのか、今から考えておいて欲しいのです。

保健婦さんは、この施設でそういう方を何人も見ているのでしょう。


そうなった時、点滴で栄養を取るという方法がありますが、

この施設では出来ません。

では、病院ということになりますが、毎日通院させることはこちらも人手がなくて出来ません。

食事がとれないというのは病気ではないので、それで入院は出来ないと思います。

現状では、点滴で栄養を取るという形にすると、自宅でやってもらうことになると思います。

ただ、何か他の病気で入院ということも考えられます。

胃ろうという方法もありますが・・・

お母さん、胃ろうなんていやでしょう。

ええ、ええ。

保健婦さんの言葉に母はそううなずいた。

この施設で、少しでも食事をとって命をつなぐという方法もあります。

今から考えておいて下さい。


母は入院を強く希望しました。

でもね、お母さん、今の状態では入院はできないですよ。

ええ、それはわかっているんですが、入院させたいと思います。

病気じゃないんだから、入院は無理なんですよ。

何度言っても、母は入院させたいと言い続けました。

とにかく、何か異常があったらすぐに病院へという方向でいいですか。

それでようやく母は了解しました。




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