第23話  徘徊

2016年冬、時々、母を連れ妹の面会に行きました。

その頃は2週間に1度程度だったと思います。

行くたびに母は沢山の服と日用品とお菓子を持っていきました。

思い立つとタクシーで面会に行ったりもしていました。

あの服では寒いのではないか。

椅子はテレビが見える方向にしたほうがいいとか、

いままで履いていた靴とは違う靴をはいているとか。

気に入らないことがあると帰りの車の中で文句を言い続けるのです。

施設に預けた以上は思い通りにはならないと私は思っていました。

私は母が文句を言いだすと、ただただ黙り込むしかありませんでした。

何か発すれば言い合いになるだけだからです。

とても疲れました。

母とかかわるのが嫌でした。


妹の生活は安定していたと思います。

昼間は併設のデイサービスのような施設に通い、

好きな歌を歌ったり、ダンスなどもしていたようです。

食事は入れ歯の為きざみ食でしたが、よく食べていたようです。

妹はコロコロと太って、コレステロール値も高かったので、カロリー制限をしてもらっていました。

生活のすべては自分で出来るので、支援員さんんも楽だったと思います。


2月のことでした。R寮から連絡がありました。

まりこさん、徘徊がみられます。

夜、職員が見回っていると、歩いているまりこさんに出くわすことが2度ありました。

徘徊・・・・

認知症ではよく聞く言葉です。


徘徊は周回して歩くそうです。

なので施設はそのように作られているとのことでした。

一度、行方が解らなくなり捜したところ、

鍵を開けて外へ出て、敷地内の物置小屋の中にいたことがあるそうでした。

それ以来、支援員の目が届くところにいるようにさせたそうです。


私はそのことを母には伝えませんでした。

また騒ぎ出すと思ったからです。

母なら、よくみていてくれないからいけないのだとか、

あんなところに置いてこけないとかいいだしそうだったからです。



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