第18話 彷徨
気になった記事があったので、私もここでコメントしようと思います。
つい最近高嶋ちさ子さんが、ダウン症のお姉さんのことでつぶやきました。
家に来ていたずらがひどかったらしく、追い出してドアの鍵を閉めてしまったそうです。「さめざめと泣きやがった。頭脳戦にもつれ込む模様。本当にダウン症って難しい。美談とか絶対ないから」そんな内容でした。
私が共感したのは、頭脳戦という表現でした。
この感覚はたぶんダウン症の人に関わったことがある人しかわからないと思います。
泣いているのは純粋に泣いているのではなくて、泣いたら鍵を開けてくれるだろうという下心があって泣いているのです。
知的障害者は純粋そうに思われがちですが、
実は知恵があって、結構ずるいこともするんですよ。
美談とかは今はないかもしれません。
でも、いつかあるかもしれません。
妹の症状は進んで行きました。
ある日、荷物を持って家を出たところで佇んでいたそうです。
母が気づき外へ出てどうしたのかと聞くと、
お母さんのところへ行く。
言ったそうです。
どうしたの?お母さんここにいるよ。
しばらくはわからなかったようでぼんやりとしていたそうですが、
やっと母に気づき家に戻ったそうです。
このまま妹の症状が進んで行けば、二人きりで暮らすことは難しくなってくるかもしれない。
私は自分の生活が脅かされるのではと、まずそれを心配しました。
母親と今後のことを話し合うにも、一人にはなりたくないの一点張りでした。
お母さん、ずっと面倒見れるの?
知らない間に外に出てどこかに行ってしまったらどうするの?
そのうちトイレも自分で行かれなくなるかもしれない。
私はそうなっても面倒は見に来れないよ。
そんなことを何度も言ったと思います。
C施設の担当者との面談では、将来的にR寮に入ることを検討しました。
たとえば今入所を申し込むと、いつ頃はいれるんでしょう。
まあ、実際どこの施設もいっぱいなんですよね。
だいたい2年ぐらい待つ感じですね。
2年・・・それまでなんとかなるのだろうか。
母親とは何度も入所の話をしましたが、たいていは口喧嘩で終りました。
母親と妹のことを話すのはとても気が重く、
私にとっては最大のストレスでした。
あんたは子供がいないからわからないのよ!
何度もなじられました。
そのたびに、じゃあ貴方は母親としてどうするつもりなの?
と心の中で問いかけるのでした。
なにもずっとということじゃなくて、いつでも会いに行けるし、
週末だけ自宅に戻ることだってできるんだから、
それに、すぐに空きが出てはいれるわけじゃないんだから、
とりあえず、入所の申し込みだけしておかない?
私はとにかく説得することの全力を注ぎました。
母親はようやく申し込みをすることを承諾しました。
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