第17話 最後の旅行

結局、処方された薬は副作用が出たため中止しました。

H病院へも行くことはなくなりました。


この年の9月に、妹と母と夫と夫の母5人で群馬サファリパークへ旅行に行きました。

旅行と言っても簡単な日帰り旅行です。

母は手術後の経過も良好で、すっかり歩けるようになっていました。

主人の母は足腰がだいぶ弱くはなってきたもののしっかりとしていました。

妹は自分一人で行動は出来ましたが、心配だったのでお土産屋さんとかトイレでは必ず付き添っていました。


皆は群馬サファリパークへ一度は行っているようでしたが、私は初めてでした。

夫が運転する車の中から動物を見るのは圧巻でした。

母親はこっちにサイがいる、あっちにトラがいると妹に見るようにうるさく言っていました。

一番はしゃいでいたのは私だったと思います。

園内を2周しました。

2周目は専用の有料バスの後ろをついていきました。

有料だけあって、餌をまきながら進むので、隠れていた動物立ちが姿を見せるのです。


妹は、昼食時には動物を見たことなどすっかり忘れていました。

まりちゃん沢山動物見てきたね。

何がいたっけ?

・・・ウシ。

ウシはいなかったはずでした。

今日はどこに行ったんだっけ?

・・・え・・

沢山動物見て来たじゃない。

ああ、そだっけ・・

母と何度も同じ会話を繰り返していました。


その後テーマパークへお土産を買いに行きました。

平日なのに混雑していて、入り口に入った瞬間妹は立ちすくんでしまいました。

立ちすくむ妹を人の流れがザーッと左右に避けていきました。

何かドラマのワンシーンを見ている光景でした。

買い物をする気満々の母二人を置いて、私は妹を外に連れていきました。

人ごみののような沢山の刺激があるところがダメなのだろうと思いました。


楽しかったことしか思い出せません。

私もとても幸福な時間でした。

妹と旅行へ行ったのはこれが最後になりました。





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