第13話 施設見学

社会福祉法人R寮、知的障害者を対象とした施設で、

入所者とショートスティ者がいます。

C施設のように昼間だけ通える施設も併設していました。

実家からは車で15分、山の中腹にありました。

B氏の勧めで妹と見学に行きました。

夏の暑い日でしたが、山中で木立が多いせいか、涼しく爽やかでした。


行くとすぐに養護学校の頃妹と一緒だったNちゃんが迎えてくれました。

Nちゃんは車椅子でした。

妹の手をとって、自分の部屋へと連れて行き、

養護学校時代のアルバムを広げ、2人ではしゃぎながら見始めました。

私はそれまで知的障害者同士はコミュニケーション出来ないものだと思っていました。

実際にC施設ででも見たことが無かったのです。

妹は常に健常者とだけ話をしていました。


施設には様々な人がいます。

そして妹もそうですが、誰を見ても子供に見えます。

利用者の齢は幅が広く、10代から70代までの方がいました。

ほとんどが入所者で、ショートスティ者のために部屋が1、2部屋空いているそうです。

男性と女性の部屋は食堂、事務所をはさんで離れた作りになっていました。

寝るのは各自の部屋で、だいたいは2人部屋のようです。


車椅子の方が数人いました。

何かぶつぶつと独り言を言いながら廊下を歩き回る人もいました。

奇声のような大きな声を出す人もいました。

突然後ろから肩をたたかれ、誰⁈と言われたり、

握手を求められたりもしました。


B氏とはR寮で待ち合わせていたので、施設の案内を受けてから少し話をしました。

一度ショートステイを体験してみてはどうでしょう。

大丈夫そうであれば、月に一回とか定期的に利用することもできます。

将来的にはグループホームを考えてみたらいいと思うんですよ。

グループホーム?

そこはどういうところですか?

障害の方が集まって同じ家に暮らすのです。

昼間は支援者がいて、自分たちで食事を作ったりして生活するんです。

夜はどうするのですか?

夜は利用者さんだけですね。

それは妹には無理だと思います。

私は即座に返答しました。

聞いた限りでは、グループホームは考えられませんでした。

R寮のような施設はいくつかあるのですが、どこもいっぱいで空きを待っているような状態らしいです。

なので、グループホームを勧めているといった印象でした。


認知症らしき症状が進んできているようなのです。

一度病院へ連れて行きたいと思うのですが、どこへ行ったらいいのかわかりません。

どこか紹介していただけるところはありますか?私が尋ねると

紹介できると思います。確認して連絡しますね。

とB氏は言ったものの、1か月たっても連絡は来ませんでした。


まりこさん、R寮はどうですか?

お友達がいたみたいですね。B氏が話しかけました。

楽しかった。

妹はそう答えました。

その後私にぽつりと言いました。

いろんな人がいるね。

たぶんいろいろな障害を持った人がいて驚いたのだと私は思いました。




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