第8話 父の死

結婚してからは妹にかかわることはほとんどなく、

実家は特に事件もなく平和に暮らしていると思っていました。


気が付くと妹は総入れ歯になっていました。

そして知的障害者を日帰りで預かってくれる施設に、

週に2日通うようになっていました。

妹はそのA施設をとても気に入っていました。


それまでは母はどこへ行くにも妹を連れて行きました。

自宅ばかりいるのはよくないと思ったのでしょう。

妹が施設に行くようになってからは、父と二人で出かけたりもしていたようです。


2010年冬、父が亡くなりました。

85歳でした。

この子より1日長く生きていれば、それで俺はいいんだ。

父は妹についてそう言っていました。

障害者の親は、この子は自分より早く死んで欲しいと願う。

以前福祉関係者の方々が言うのを聞いたことがあります。


妹は葬儀には出席しませんでした。

葬儀中に胸を痛がったりして周りを心配させてはいけないとの配慮からでした。

通夜の日も葬儀の日もA施設に預かってもらいました。


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