第6話 失業

失業というほどのことはありません。

障害者年金を受給していたので生活に困ることはありません。


私は失業保険受給の手続きに、妹を職安に連れて行きました。

長く続けていたのに残念でしたね。

男性の担当職員の言葉に涙が出そうでした。

差支えなければ理由を聞かせてもらえませんか。

そう聞かれ、最初は戸惑いましたが理由を話しました。

妹が辞めるきっかけとなったあの男性はどう思っているだろう。

気まずい思いをしているのだろうか。

なんとも思っていないのだろうか。


その頃は今と違って、失業保険の受給期間が長く、

障害者ということもあって、受給期間はだいぶ長かったと記憶しています。


仕事を辞めた妹が家で何をしていたのかは知りません。

手紙を書くのが好きでした。

レコードもよく聞いていました。

昔からマッチとトシちゃんが好きでした。

塗り絵もしていたと思います。

人物の絵もよく書いていました。


妹は小太りでした。

何故か体が柔らかく、開脚して頭が床にペタリとつきました。


妹が36歳の時、私は結婚して家を出ました。


結婚式に出席する際の洋服をどうしようかと

母はずいぶん頭を悩ませました。

太っていて手足が短いので、既製の服では合いそうになかったからです。

結局知り合いにブルーのミディ丈のドレスを仕立ててもらいました。

ウエディングドレスの私に、お姉ちゃんキレイと言って、

沢山写真を撮ってもらいました。

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