第4話就職

妹が学校を卒業し、就職に至るまでの頃のことを、

私は知りません。

その頃、私は実家を出て東京で一人暮らしをしていました。


妹は地元の製菓工場に勤め始めました。

家から徒歩で20分以上かかります。

休まずに通ったようです。

毎日同じ道を同じ時間に障害者が歩いているのは

当然目立ちます。

暖かく見守ってくれた方も沢山いたと思います。

面白半分に噂話にもなったりしていたようです。


妹は障害者年金を受給していたので、

給料は受給枠から外れないよう調整されていました。

両親のもとにいるので、生活していくにはさほどのお金は必要なかったと思います。

お金は母親が管理していました。

お小遣いとして千円札を十枚毎月貰っていました。

妹にとって千円札以上のものは、お金として認識していなかったようです。

お財布の小銭は色で分けられていました。

十円硬貨と五円硬貨が一緒で、

百円と五十円硬貨、そして一円硬貨が一緒になっていました。


私が実家へ戻ったのは、妹が29歳のときでした。

いつからという認識はありませんが、

この頃は発音が悪いものの、言葉が聞き取れないというこたはなく、

誰とでもコミュニケーションがとれていました。

平仮名も書いていました。

簡単な漢字も書きました。

時計も見れるようになり、大きめの腕時計をいつもしていました。


後になってこの頃の写真を見ると、

田舎のちょっとやぼったいお姉ちゃんといった感じで、

言われなければ障害者とはわからないかもと初めて思いました。

私は子供の頃からそう思っていたので、そういう目でいつも妹を見ていたのだと思いました。


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