第3話就学

妹は小学校へあがる歳になりました。

けれど入学を一年遅らせました。

理由は知能が追い付いていないからなのだと思います。

発音も悪く、慣れない人とのコミュニケーションも難しかったのだと思います。


たいていはこの段階で知的障害者の為の養護学校へ行くようです。

ですが、両親は普通の小学校へ行くことを強く希望し、

特殊学級で受け入れてくれることになりました。

地元の小学校には特殊学級がなく、

少し離れた小学校へ通うことになりました。

6年間、父親が毎日送迎をしました。


中学からは養護学校へ行くことになりました。

自宅から通うには電車で2時間以上かかるため、

寮にはいりました。

中学、高校と6年間寮で過ごしました。


私が高校生の時のことでした。

妹の学校でイベントがあり、両親がどうしても出席できないので、

私が替わりに養護学校へ行ったことがありました。

妹はお姉ちゃんと言って寄って来ました。

私はそれまで、妹以外の知的障害者の方に会ったことがなく、

いろいろな方がいることを初めて知りました。

奇声を上げるまわ子、うろうろと歩きまわる子、

中でも衝撃的だったのは、魚のような顔をした女の子でした。

そこでどんなイベントがあったのか忘れてしまいましたが、

ずいぶんとショックを受けたのを覚えています。


私のことを少し書きます。

小学校の頃は周りは地元の子ばかりで、誰もが妹のことを知っていました。

私は周りの視線が気になっていました。

中学生になると、離れた地域の子も一緒になるので、一部の人たちが知る程度になりました。

高校生になると、妹を知らない人がほとんどです。

そこでやっと私は開放されたのでした。

妹のことを恥ずかしいと思ったことはありません。

ただ思春期も伴って、隠すように口をつぐんでいました。

隠しているわけではないのですが、あえて誰かに言う必要はないでしょう。

そんな言い訳で自分を肯定していたのです。





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