第百七話 無駄に自信満々のお嬢様

 私がマナカさんの元にたどり着くとボロボロになったマナカさんの姿が見えました。

 シェンナとコリーが二人を見守っているのも見えました。

 シェンナとコリーだけではないようです、敵の兵士達も二人の戦いを見守っているようです。

 私はマナカさんから目を放さず、シェンナ達の方へ向かいました。


「シェンナ、コリー。これはどんな状況なのです?


 私が二人に声をかけると、コリーが反応してくれました。


「これは、マウナ様。私たちも途中から見ておりますが、マナカ様の方が劣勢に見えます。勇者のギフトによる能力の鎧がかなり凶悪な能力でして」

「勇者は強いということですね」

「ええ、あの鎧の能力はおそらく外部からのダメージを吸収すると思われます。マナカ様の打撃をあれだけ受けてすぐに立ち上がれるのが証拠かと」


 守備型のギフトですか、確かに強力なギフトですね。


「外部ダメージとなると魔法もですね」

「はい」


 確かにその能力なら魔王にも古龍にも勝てますね。しかも勇者は専用の武器も持つと聞いています。


「ボロボロなのにマナカ様は笑ってますよ」


 コリーとの会話にシェンナが入ってきました、私とコリーはシェンナの見てるほうを見ます、確かにマナカさんは笑っていました。マナカさんは笑ってるということは何か勝機があるのでしょう、あの人は無駄に自信満々ですが、無意味に自信満々ではありません。


 睨みあっていた二人ですが勇者の方が仕掛けました、勇者の手から連続して光の下位魔法が放たれます。


「はははは! そろそろ終わりにするのは俺も一緒だ、そろそろ疲れてきたんでな」

「あーもう、その魔法詠唱カット面倒ですわねぇ」


 勇者は下位とは言えあれだけの魔法を連続で撃つとは、やはり恐ろしい相手です。

 しかし、マナカさんもダッキングやスウェーなど駆使して躱します。

 あれを全部躱すマナカさんも大概ですね。


「手数はマナカ様の方が多いのですが、やはりあの鎧が厄介ですね」

「そうです、シェンナ的にはあの鎧が無ければ、マナカ様の圧勝で終わると思うんですよ」


 マナカさんが勇者に仕掛けました、勇者の足元を水面蹴りという技で狙います。蹴りは勇者に当たりましたが勇者も倒れぬよう踏ん張り無防備になったマナカさんの首筋に剣を振り下ろします。


「もらった!」


 足を引きそのまま倒立するように両足を跳ね上げ、振り下ろされた刃を蹴りそらします。


「なんて反応だよ、お嬢様アンタ本当に人間か?」

「くっは! ワタクシってば優秀なんですのよ? ですがこれ傷に響きますわね……」


 そうだ、マナカさんを助けないといけないんでした。

 私はマナカさんの元へ行こうとしますが、シェンナに止められます。


「マウナ様、お待ちください」

「何故止めるのです?」

「シェンナ達もお手伝いを申し出ましたが、ワタクシと勇者との一騎打ちは邪魔してはダメと言われました、マナカ様を信じて待ちましょう」


 私達の会話に気付いたマナカさんがこちらを向きます。


「あら? マウナさんごきげんよう。少しそこで待っていてくださる? すぐにこの勇者を片付けますわね」

「マナカさん私も」

「大将はどーんと構えているものですわよ」

「……わかりました」

「ええ、ええ、それがよろしくてよ」


 そう言ってマナカさんは勇者に攻撃を再開しました。

 私達はマナカさんが勝利することを願って見守ることにしました。


 勇者は魔法と剣を巧みに操りマナカさんを攻撃します、しかしマナカさんも負けてはおらず勇者の攻撃を避け捌き防ぎそして反撃します。

 しかし勇者には決定打にはなってないようです。


 マナカさんが再度勇者に攻撃を仕掛けよと走って寄りますが、勇者が斜めに斬り下ろし迎撃しますしかしマナカさんはそれを急停止し躱しました。


「あっぶないですわね!」

「当たっておけよ!」


 避けたところでマナカさんが再度前に出ようとしたところ、勇者はその振り下ろした勢いを殺し無理やり下から上に切り上げます。


「なんちゃって秘剣燕返し!」


 なんという胆力でしょうか? しかしマナカさんの反応も早い、足を止め両腕でクロスし直撃を避けます、両腕を剣が掠めますが致命傷ではないようです。


「嘘だろ!」

「掠っても痛いんですけどねー!」


 勇者が驚いてるところ、涙目になりながらもマナカさんが勇者に組み付きます。


「しまった!」

「さあ、覚悟なさい!」


 マナカさんは勇者の右腕を左手で掴むと右手で顔を掴みました。そして右足を勇者の左足の後ろに回すと右足で左足を刈りバランスを崩した勇者の頭を思いっきり地面に叩きつけました。


「ぐお!」

「試合でやったら一発退場の変形大外刈りですのよ? 効きまして?」


 あの大外刈りという技がまさにこの勝負を終結させる一撃でした。


「ふう、関節かと思ったが投げかよ。まったくビビらせやが……って?」


 起き上がった勇者が再び尻もちをつきました。

 周りで見ていた兵士も私たちも何が起こったか分かっておりません。

 マナカさんだけがニヤっと笑っております。


「あれ? 頭がクラクラするし、力が入らん? どうなってやがる?」

「痛みが無いとはいえ、あれだけ脳みそが内部で揺さぶられてますものねぇ。」


 マナカさんの言葉に勇者はハっとした顔をしました。


「まさか! パンチドランカー状態ってやつか!」

「ご名答」


 パンチドランカー? 聞きなれない言葉ですが、どうやら頭を狙った攻撃が引き起こした状態のようです。

 これでこの戦いは終わるようです。

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