第百八話 ショウ人生辞めるってよ。そして終戦へ
マウナさんもメイド二名もワタクシの戦いを見に来ていたのですね。
まあ、結果はこの通りですわよ、ワタクシの圧倒的勝利ですわね……すいません嘘ついてました、割とギリギリですわよ。
「さて、覚悟はできておりますの?」
「はぁ、ふぅ。できてるわけねぇだろ」
「貴方がたチヨルカンのやったことは、決して許されるものではありませんのよ」
「そうだろうな」
勇者とワタクシの前にマウナさんがやってまいりました。マウナさんは勇者を見据えております。
「勇者よ貴方には聞きたいことがあります」
「……魔王マウナ・ファーレだったな、どうしてこんなことをしたのか? でも聞きたいのか」
勇者の言葉にうなずくマウナさん、ワタクシは何となく分かるんですのよね。
「魔王様にゃわからんと思うが、俺は元の世界じゃ冴えないしうだつの上がらない男でね。それがこの世界で勇者になっちまった、冴えない男が力を手にしたらどうすると思う?」
「力を行使することですか?」
「その通り」
力が入らないためかだらしなく座り込んだまま、微妙な笑みを浮かべる勇者こと園田翔。
「力の使い方が世界征服って、お約束で良くね?」
「よくねーですわよ迷惑な」
「そうですか、よくわかりました」
マウナさんは表情無く頷きました。
「覚えておくんだな、勇者とは勇気ある者で決して良き者ではない!」
「勇気ある行動なんて貴方取ってましたかしら?」
ワタクシの言葉にフと笑うと。
「人に嫌われてもいいから、欲望に忠実に進む勇気」
「物は言いようですわね!」
実に下らない答えが返ってきましたわ。さて、そろそろとどめといきますか。
放っておくと回復しそうですものね。
「さて、勇者ショウ・ソノダ。貴方の悪事もここまでですわ、貴方のような人間は生かしてはおけません」
「アンタに人が殺せるのか?」
「ええ、必要とあらばね。ですから貴方をこの手にかけますわ」
ワタクシはそう言って、勇者の頭を右手でと顎を左手でがっちりとホールドしました。
勇者はもがこうとしましたが、力が入らないためにもぞもぞと動くだけです。
「くそー! やっぱ死にたくねぇよっ!!」
勇者がそう叫んだところ、ワタクシは両腕に力を込め勇者の頭を捻りました。
ビキっという頸椎の折れる嫌な音がすると、勇者は白目をむき、もがいていた腕をダラーンと垂らしそのまま動かなくなりましたわ。
「さあ! チヨルカンの大将である勇者ショウ・ソノダはワタクシが討ち取りましたわ! もう、無駄な抵抗はよして降伏なさい!」
ワタクシは声高らかに勝利宣言をします。
勇者の死とワタクシの宣言によってチヨルカンの兵士達は負けを悟ったのか、力なくうな垂れる者、逃げ出す者と様々な反応を示します、いつの間にか近くで待機していた魔王国の兵士たちがチヨルカンの兵士達を捕まえるために動き出しました。
「マナカさんお疲れ様です、大丈夫ですか?」
「割とギリギリですわよ……しかし、それよりも人間を同じ世界の人間を手にかけた事の方が堪えますわね。直接的に手を下したのは初めてですもの、流石に手が震えますわ」
ワタクシが試した事でゾンビに攻撃され命を落としたものはおりましたが……あれとは訳が違いますわね……今考えるとアレも十分酷いですが。
これでワタクシも十字架を背負うことになるのでしょうね、しかし勇者のような相手はワタクシがケジメをつけるべき相手でしたわ、ワタクシの自己満足なのかもしれませんが何故かそう思えたのです。
さあ、今はその事よりこれからのことを考えねばなりませんわね。
「街の方はどうなっておりますの?」
「短期決戦に持ち込んだのが功をなしたのか、敵に攻め込まれはしましたが大きな被害はありません」
「それは良かったですわ」
ワタクシ達はここの戦後処理を兵士に任せ、一度城に戻りましたわ。
――
――――
「あら、マナカちゃん達じゃない。マナカちゃんがここに来たということは私達の勝利ねぇ」
「さ、流石はマナカさんです」
ベティさん達がまずは出迎えてくれましたわね。
「――お、おお、マナカー!」
「ええ、ええ、帰りましたわよ!」
そして帰還早々の褐色幼女のフライングボディプレス、これを避ける術をワタクシは知りません! ナルリアちゃんを受け止めますと……
「ぎゃー! 傷が傷がががが」
「――うわー! マナカー死ぬな―」
大ダメージでしたわ……そしてアルティアさんに回復魔法をかけてもらいながら、緊急招集ですわね。
城に戻ったワタクシたちは、カーチス達を中心としたチヨルカン本国進行部隊を結成。
やはりこのような事をした国を放っておくことはできず、チヨルカンを攻め落とすこととしました。勇者を失いその配下も既に倒しているので、おそらくは戦力はほぼ残っていないであろうという判断により戦力も一〇〇〇ほどの小戦力による制圧戦としました。
そして次の日には進行を開始、この戦いはたったの三日という短期間での決着がつきチヨルカンはあっさりと降伏。
しかし、勇者ともう一人の共謀者である大臣は既に逃げており、その協力者の一部の貴族も既に逃げておりましたわね、だが国王であるスヒュン・チヨルカンは逃げておらず、どうしてこうなったという顔しておりましたわね。
こうしてチヨルカン戦争は終結しましたわ。
「余は何故責められておるのだ? 余が何をしたというのだ」
「何もしてないのが罪ですわね」
「どういうことだ?」
自分の国の状況すら理解して無いとか無能を通り越して哀れになりますわね。
「スフュン王ですね、私はマウナ・ファーレこの国の王です」
「行き成り我が国に攻め入るとはどういうことかな? ファーレの王よ!」
トンチキな答えが返ってきますわね。ワタクシはマウナさんを見ますとマウナさんは首を軽く数回横に振りましたわ。
戦後処理はある意味で簡単に終わりそうですわね。
さあ、王を断罪するとしましょうか。
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