第九十二話 キノコ岳の子戦争終結
ガクザンのギフトが攻撃力の無いもので我々を攻撃するに、直接こなければならないのに救われましたな。
そして、たまらず空に逃げるガクザン。
「一体何をした!」
顔をゆがませ怒鳴るガクザン、誰がバラすかって話でありますな。
「何かに躓いただけでありましょう」
「ばかな! 滑って転んだぞ」
自分はわざとらしくガクザンの倒れていた付近を指さし。
「おや? キノコを踏んでしまったようでありますな?」
「キノコだと? 貴様!」
キノコと聞いて憤怒の形相を浮かべるガクザン。
「いいがかりでありますな、キノコなんて森にならいくらでも生えていましょう」
「ぬけぬけと!」
ガクザンが空中から降り立とうとしたので、自分は小声で足元にヌメリタケを生やします。
「足元注意でありますぞ」
「なに?」
ヌメリタケを踏みバランスを崩すガクザン、その瞬間に飛び蹴りでガクザンを攻撃するナルリア殿。
「――前方も注意!」
「ぐ!」
ナルリア殿の攻撃で転倒するとまたも悲鳴を上げるガクザン。
「うぎゃああ!!」
カエンタケは想像以上の攻撃力でありますな……
流石は三グラムで致死量となる毒を持つ猛毒キノコでありますな、カエンタケのせいでガクザンの背中は見るも無残に赤紫に腫れあがっております。
そして冷静さを欠いた今のガクザンなら、胞子も有効になると思われます。
「さて、ナルリア殿。そろそろ終わらせるであります」
「――了解!」
ガクザン相手に胞子を叩きつけつつナルリア殿にはかからないように調整する、これが案外面倒でありますな。
ガクザンは胞子を警戒しつつもナルリア殿と打ち合っております。
「魔法は好かんのだが四の五の言ってはおれんか、この森ごと焦土にしてやる」
そう言ったガクザンは空中に逃げます、一段と高い位置に立つと下を向き魔法の詠唱を開始したでありますな。
「――我は命ずる、我が眼下に広がる全てを包め! 焦土とすべく……」
詠唱からして火の上位魔法のようでありますな、これは厄介でありますが。自分の見立てではそろそろでありますぞ。
ただもう少し粘りたいのでありますが……
「ナルリア殿! ガクザンを狙撃可能でありますか?」
「――難しい」
「で、ありましょうな!」
しかし、その瞬間。風が吹きます。
風が変わったのでありますな、上位魔法なんて使うから詠唱が長いのでありますぞ!
自分は全力でネムリ茸の胞子をガクザン目掛けて放ちます。
「な、なんだと!」
視界を奪うほどの大量の胞子にガクザンは詠唱を中断して驚いております。
「あれは不味い!」
ガクザンは魔法を下位の火魔法に変え放ちますが、その程度では到底全部防ぐことはできません。
「危ないでありますな!」
火の魔法が自分の所に飛んできたので急いで避けます。
ガクザンの方はそれなりに吸い込んでしまったようでありますな、足元がふらつきながらも地上に降り立ち自分の顔を両手で思いっきり叩き眠気に耐えております。
「おのれ、おのれ!」
そして自分の隣にいたナルリア殿の姿がいつの間にか消えております。
「……ぐ、娘がいないだと?」
ガクザンが周りを見回した瞬間にナルリア殿がガクザンの後ろに立ちました。
ナルリア殿は短刀をガクザンの首に押し当てると。
「――マナカの敵は私が倒す」
そう言って短刀を横に引きました。
「クハ……」
パシュっという音ともに鮮血がガクザンの喉から吹き出し、その場に力なく倒れました。
周りも大方片付いているようですが、こちらにも少なからず被害が出ております。
流石に全員を止めることはできませんでしたが殆どはここで食い止めることに成功。任務としては達成したといってよいでしょう。
自分は本国に任務達成の報告を済ませ、回収部隊の到着を待つことにしました。
「皆さんお疲れであります……多くの犠牲がありましたが任務は達成と言ってよいでしょう」
「中尉……せめて仲間の死体はまとめておきたいのですが」
自分の言葉に皆が集まってきましたが、この惨状を見て喜ぶものはこの場におりませんでした。
自分は休憩を指示し、その後味方と敵の遺体をまとめる作業を動ける者たちに指示しました。
「ナルリア殿もご苦労様であります」
「――マナカの役に立てたかな?」
「ええ、きっとマナカ殿は褒めてくれますよ」
「――よかった」
そう言うと、ナルリア殿はその場に倒れ寝息を立てだしました。
「子供に戦争をさせてる時点で、自分は軍人失格でありますな……」
ナルリア殿の姿を見つつ自分はそう呟いておりました。
この戦は始まったばかり、敵もまだ色々と準備はしているでしょう。こんなことは早く終わらせるのに限るのでありますな。
「ふぅ、死ぬ前も死んでからも戦争をすることになるとは、つくづく自分は戦争というものに縁があるようですな、ですがこれは守るための戦い、なんとしても勝たねばなりませんな」
とりあえず今はこれで
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