第九十一話 戦うキノコ

 ナルリア殿の短刀による攻撃は凄まじいのでありますが、ガクザンも紙一重で躱し裁き反撃の拳まで出すという、自分が間に入り込めない状態となっております。

 周りを見ると敵もかなり体勢を立て直しており、最初から数で不利な我々に良くない状況となりだしております。

 はやり相手の指揮官であるガクザンは早く倒さねばなりません。


 ガクザンの服はナルリア殿の攻撃で既に意味をなさないほどまでにボロボロになっておりますがガクザン自体は致命傷となる傷は受けておりません、一方のナルリア殿は星4のガクザン相手に大奮闘しており打撲傷はそこそこありますが、こちらも致命の一打は受けていない状態でありますな。

 しかし、体格的に劣るナルリア殿はその差をカバーするためか動きがどうしても大きくなりがち、それに比べガクザンは体力的にまだ余裕がありそうであります。

 意味をなさなくなった服を脱ぎ捨て空中に立つガクザン。


「惜しいな、あと五年あればお前の実力なら俺を超えれたかもしれないな」

「――五年もいらない! 五分で追いつく」

「そうは上手くいくまい、息が上がってるじゃないか」


 本格的に打開せねばなりません。

 さて、ガクザンのギフトは空気を床のようにして扱うでありますか、直接攻撃力のあるギフトではありませんが、ガクザンの動きが立体的になり回避能力や奇襲能力が上がってるのは問題であります。

 だがしかし空気そのものを扱うのでないのなら、自分たちでも十分対処は可能なはずであります。正面からの殴り合いであればナルリア殿次第になってしまいますが、相手は一人でこちらは二人……キノコは一人に入りますか?


 とにかく二人であります。

 ガクザンはどうやら自分のギフトにはあまり関心がないのか、気にしている様子は無いであります。

 攻撃はほぼナルリア殿任せなのが不甲斐ないでありますな、自分は光の中位魔法までしか使えないどぁりますゆえどうしても魔法頼りであります。

 しかし、自分にはギフトがあるでありますから。これで戦うとしましょう。


 猛毒の胞子でもぶつけることができれば楽なんでありますが、おそらく簡単ではありません。

 どうにか自分のギフトでダメージを与えることができればようのですが……自分は思考を巡らせます。

 マナカ殿にスマホというもので写真を見せてもらいつつ色々なキノコの話を聞いておいたので使えそうな物がないか考えます、ところで何故マナカ殿はキノコの写真を持ち歩いており無駄に詳しかったのでありましょうか? 未来の若者はよくわかりませんな。


 さて、ガクザンをよく見ます……幼子の前で上半身裸でありますか憲兵に突き出せれば楽でありますが……裸? そうだ! これならダメージが通るであります!

 面白い事を思いついた自分はさっそく準備に取り掛かります。


「菌類の君主! キノコ生成であります!」


 キノコを生やす効果を発動してサポートするとしましょう、これは自分が知るキノコを特定の場所に生やせるという凄い能力であります、これでマナカ殿に聞いた色々なキノコを設置可能、このキノコと最悪のキノコを生成設置。


「ナルリア殿! ガクザンをこちらに追い詰めるであります」

「――ん!」

「そう上手くいくかな?」


 ガクザンを風下に追いやるように指示しますが、ガクザンは風上に移動しようとします。


「なるほど、風下に追いやりたいわけか。どうやら毒の胞子がお前のギフトと言うわけだな」

「――その通りだぞ!」

「ちょ! なんでバラすんでありますか?」


 予想通りにナルリア殿がつられて喋ったでありますな、そこで自分も頷いておきましょう。


「ははは! 良い連携だな! なるほど風上をとりたいわけだな」


 そう言いながらガクザンはナルリア殿の攻撃を防ぎつつ、自分の思惑通り風上へと移動しております。


「――うー! そっちに行くな!」


 自分の狙い通りではありますが、少々困ったことになりますなナルリア殿がムキになりだしましたな。

 ナルリア殿の攻撃が大振りになっておりますな、マズイかもしれません。

 あと二メートルでいいので粘ってほしいですな。


 ――

 ――――


「――こんのー!」

「ナルリア殿! その攻撃は――!」


 ナルリア殿が右から左に短刀を大振りで振りぬきました、ガクザンは五〇センチほど後退し斬撃を躱すと。


「破! もらった!」


 強烈な前蹴りをナルリア殿のお腹に叩き込みました。


「――ぐ……が!」


 自分はナルリア殿を受け止めるべく移動します、ゴーレムの腕に高速でちょっと丈夫なキノコを沢山生やし何とか受け止めます。

 ですが、ガクザンの位置は良い位置であります!


「――シャイン・アロー!」


 完全に体勢を直し切れていないガクザンに魔法攻撃を仕掛けます、自分の使った魔法の矢がガクザン目掛けて飛びます。

 ガクザンは両腕を交差させると魔法の矢を防御しました、避けられたら終わりでしたが狙い通りでありますな!


「はは、残念だったな――な!?」


 ガクザンは矢を防御したがその威力に数センチだけ後退、そして足を滑らせ背中から倒れます。


「狙い通りであります!」


 自分はそう宣言しつつ常備していたポーションをナルリア殿に飲ませます。するとナルリア殿が復活。

 自分の狙い通りの結果になるのであれば、そろそろでありますな――。


「ぎゃああああ! なんだこれは? 熱い!」


 背中を抑えながら悶えるガクザン、しかし転がれば転がるほど被害は拡大するであります。


「ナルリア殿! 先ほどのお返しするでありますぞ! ただしその赤いキノコには直接触れないよう注意してください」

「――わかった!」


 起き上がろうとするガクザンに蹴りを入れ、また転倒させるナルリア殿。自分でやっといてなんですがエグイでありますな……真っ赤なサンゴのような形のキノコ。

 マナカ殿に聞いていた中でも最も凶悪な毒キノコ『カエンタケ』であります、皮膚に触れるだけでも毒素が回り皮膚炎を起こす最悪の毒キノコであります。しかも自分の能力で毒性は通常のカエンタケの三割増し、触れただけで激痛であります。

 そして転ばせるのに使ったのは『ヌメリイグチ』というヌメリ成分を出すイノコであります。


「ぐおああああ! くそ、くそ!」


 顔を真っ赤にして何とか立ち上がったガクザン。

 さて、そろそろこの戦いも終わりにするとしましょうか――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る