第八十五話 オカマ防衛戦線

 航空戦力は反則ですわね……ですがどうやら攻撃部隊というより輸送部隊ですわね。

 ですがあのワイバーン達何か違和感がありますわね……なるほど。


「それっぽく見えますが、ワイバーン隊の皆様はどうやら練度が低いようですわね」

「ええ、飛ばすのがやっとといった感じですね」


 ブライアン達もそれに気づいたのか数射で一体を沈めますわね。


「さーて、私たちも守備につこうかしらねぇ」

「お、お供しますね」


 ベティさんとアルティアさんが立ち上がります。


「あら? ベティさんが動きますの?」

「そうよー、勇者の近くにいた相手の指揮官の一人がいないからねぇ、どうやらワイバーン隊に運ばれてるみたいなのよぉ。だから行ってくるわねぇ」


 ベティさんはウィンクをしてバックラーとメイスと手に取りましたわ。

 本当にこのベティさん、アルティアさんにはワタクシ達も助けられておりますわ、彼等が動いてくれるなら街の防衛は安心ですわね。


「ベティさん、街をお願いします」

「オーケーよマウナちゃん、お姉さんに任せなさい」

「わ、ワタシも怪我人が出てるようですので、い、いってきます」

「アルティアさんも無茶はしないでくださいましね」


 二人は頷くと部屋を出ていきましたわ。

 チヨルカンの勇者の側近のうち二名はワタクシと同じ異世界人ですのよね、確か名前は報告によると星三のイ・ソンジンと星四の劉岳暫ですわね……なんか喉に良さそうな名前の二名ですわね。名前からすると韓国人と中国人のようですわね。


 ガクザンが森に向かったということは、ワイバーンでやってくるのはソンジンの方ですわね。

 ソンジン、ガクザンもそうですが残りの二名が不気味ですわね。


 ――

 ――――


 ふう、マナカちゃんとマウナちゃんに出会ってからは色々なことが起こったわねぇ。

 まさか私が魔王領の防衛にあたるなんて、冒険者やってた頃から考えてもこんなことになるなんてって感じよぉ。かといって別に今の生活に不満はないのよ。だって腐ってた私がここまで復活できたのは、彼女たちのおかげですもの。


 さて、ここいらでマウナちゃんたちに恩返しの一つでもしないと、オカマがすたるわ。

 しかし、チヨルカンも無茶苦茶するわねぇ。空からソースフェールをばら撒くなんてどんな戦法なのよ。

 でもまあ、ブライアンちゃん達の頑張りでワイバーンが街に近づけないのか、街の手前でばら撒いてるのは救いよねぇ。

 ソースフェールからはゾンビの群れが出てきたわねぇ、相手にネクロマンサーでもいるのかしら?


「しっかし悪趣味ねぇ、ゾンビの着てる鎧はサルジーン兵のものよねぇ」

「ま、まさか内乱の時の兵士達の死体を、つ、つかってるって事ですか?」

「そう言うことよ、ほんと悪趣味ね」


 悪趣味な連中をこの国で好きにはさせたくないわねぇ。まあ、普通のゾンビ程度ならなら余裕ね。

 カーチスちゃんもセルカドちゃんも張り切ってるものねぇ。


「おぉ、ベティ殿も来てくれましたか」

「ええ、お姉さん頑張っちゃうわよ」


 セルカドちゃんが私の場所にやってきたわ。


「マウナ様の国に攻めてきたことを、今度は後悔させてやります」

「そういえば数年前にも攻めてきてたものね」

「ええ、アレがきっかけでこの国は一気に傾いたのですからね。それでは蹴散らしてやりましょう」


 なるほど確かに、直接的な原因はチヨルカンだったものね。この国には因縁の相手よね。

 前魔王が亡くなりマウナちゃんが魔王になったすぐを狙ってのことだったわね。

 だけど今は状況が違うわよね。


「よーし! オーク隊! 私に続け! ゾンビどもなんぞに我が国を荒らさせてなるものか!」

「「「おー!」」」


 統率が取れてるわねぇ、オーガは思い思いにゾンビどもを殴り飛ばしてるけど……アレはアレで連携できてるのよね。


「け、ケガをされた方はこちらに、治療を施します!」


 アルティアちゃんもいつの間にか後方で陣を敷いてた、場所でオークやゴブリンの女性たちと負傷兵の治療にあたってるわね。


「というか、一体どれだけのゾンビ兵がいるのよ!」

「がははは! オカマの旦那。何百来ようが俺たちオーガーの敵じゃないぜ。マナカの大将に教わったボクシングと俺たちオーガのパワーが組み合わさった今、簡単に負ける気はしないんだよ」


 そう言いながら近くのゾンビの頭がパンチ一発一閃、カーチスちゃんの拳がゾンビの頭を吹き飛ばしたわ。


「ヒュー、怖いわねぇ。お姉さんちびっちゃうわよ」

「嘘いいなさんな、アンタはこの程度なら簡単にいなしちまうだろうが」

「買いかぶりすぎよー」


 実際、私もかなり腕を上げたのは確かよ、マナカちゃんが持ち込んだ色々な格闘技術をあの子は惜し気もなく私たちに教えてくれるのよ、しかも教え方が上手いのよね。

 そして私達は隣のカーチスちゃん達もその技術を自分のスタイルに上手いこと融合させていったのよね。


「いやー、マナカの大将は凄いな。またガチで闘いたいぜ」

「言えば簡単に相手してもらえそうよね」

「……違いねぇ、あの人は人間の姿したオーガだろ」

「ありえるわねぇ」


 私とカーチスちゃんが軽口をたたいていると、大きな影がこちらに突っ込んできたわね。

 ゾンビにしては動きがかなり速い、そして攻撃が複雑ね。

 オーガが敵にもいたようね! しかし姿を現したオーガの目は光を失っておりうつろな目でカーチスちゃんを見ているわね。


「……ガー……ヂス」


 カーチスちゃんに反応してるわね。

 そのオーガを見たカーチスちゃんも目を見開き


「お前、バルガか……」

「どうやらお知り合いみたいね」

「ああ、俺たちとは違う集落のオーガのリーダーだった男だ。俺の憧れだった強き男だ。チヨルカンめ酷いことをしやがる」

「そうね、あれもゾンビなのよね」

「だろうな、生気は感じない。動きは速いが生前のキレはないからな」


 カーチスちゃんは静かに拳を握ると、マナカちゃんが使っていた構えと同じボクシングの構えを取った。


「邪魔はしないほうがいいわよね?」

「ああ、オカマの旦那。アレは俺にやらせてくれ」

「じゃあ、私はアッチの相手かしらね」


 私がオーガの更に奥を見ると、鋭い回し蹴りでオーガーを吹き飛ばしこちらに向かってる影が見えた。


「勇者殿の手を煩わせるまでもないか?」


 割と渋めの声が聞こえてきたわね。


「はーい、ハンサムさん。ご機嫌はいかがしら?」


 私がその男に声をかけると男は私の方を見たわ。


「貴様は人間か、人間が魔王に味方しているとはな。王国からの派兵か?」

「違うわよ、最近こちらに引っ越ししてきた人間よ」

「魔物など滅ぼしてしまえばいいというのに、何故味方をするのか?」


 男はそういうとストーンバレットを私目掛けて放った、しかし私には当たらず後ろから悲鳴が聞こえた。

 私は後ろを見ると、薬草を抱えたオークの女性が倒れていた。

 男は溜息をつくと首を振る。


「まったく、下品な叫び声だ」


 薬を取りにここを通ることになってしまった、非戦闘員のオークの女性を躊躇うこともなく打ち抜いた男。


「アンタ、いい加減にしないとお姉さん、しばらくお兄さんになっちまうぞコラ」


 アルティアちゃんがこちらに走ってくるとオークの女性に回復の魔法をかける。

 今度はアルティアちゃんに狙いを定めた男は、ためらうことなく魔法を放とうとした。


「テメェ、ふざけてるんじゃねぇぞ! お前の相手は俺だ!」


 私は相手の男、ソンジンに向かってメイスを振り下ろした。

 ソンジンはそれに気づくとメイスを体を捻り躱した。


「アルティアちゃん! ここは危ないからさっさと逃げなさい!

「は、はい。で、ですがベティさんせめて簡単ですが支援魔法を」


 そう言ってアルティアちゃんはオークの女性を背負うと、私に簡易の魔法をかけてくれたわ。


「チ! 支援魔法の使い手だったか面倒な!」


 そういうとソンジンはアルティアちゃんを先に仕留めようと動いた、だが私もそれを許さない。


「よその女に浮気とは褒められねぇなぁ!」

「く、オカマが!」


 ソンジンは私を睨むと構えを取った、こうして私とソンジンの戦闘が開始された。

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