第八十四話 僕らの七日間遅れ戦争
宣戦布告されてから約一週間してチヨルカン軍は、橋の前に陣取っておりますわね。
一番前になんか日本人っぽいデブがおりますわね?
「デモ隊の前に立ち塞がる警察の気分ですわね」
「え? デモ隊ってなんです? それってどんな気分なんですか?」
「適当なこと言ってるだけですわよ……」
「そうですか」
デブが色々と指示を出しているようですが……どうやらあのデブが相手方の指揮官ですわね。
「クナギ殿、あの一番前にいる男がチヨルカンが擁している勇者ですぞ」
ワタクシがデブを見ているのに気付いたモルテさんが教えてくれますわ、あの日本人っぽいのが勇者ですのね。
「名前はショウ・ソノダというようです」
「!」
ワタクシの背後から声がしましたわ、ダークエルフの女性が一人ワタクシの背後から話しかけてまいりました。ビックリして声が出そうになったのは内緒ですわよ……
「名前からして完全に日本人ですわね。どんな能力をお持ちなのかしら?」
「申し訳ありません、詳しくはわかりませんでした。ただ防御関連の能力のようです」
「仕方ありませんわね、防御関連と分かっただけでもよしとしますわよ」
そして、ついに敵軍が進軍を開始しましたわ。
「マウナさん、始まりましたわよ」
「はい、こちらも行動を開始します」
敵の進軍を眺めながら、キノコ中尉が言いました。
「奇襲も無ければ凄い作戦があるようにも見えないであります」
「相手はこちらを下とみておりますからね。よほど勇者という部分が自信に繋がっているのでしょう」
「なるほど、それならそのほうが有難いですな」
キノコ中尉はオカマの錬金術師の作成した、ウッドゴーレムスーツに寄生しております……まさに寄生なんですのよね。
「中尉、そのゴーレムの使い心地はどうです?」
「は! 閣下悪くはありません! 細かい作業が出来ないのは問題でありますが、自力での移動ができるだけでも全然違うであります」
「そうですか、細かい作業が出来るように更なる改良を進めていただくように言っておきますね」
「ありがとうございます」
マウナさんとキノコ中尉がウッドゴーレムスーツ……案外長い名前ですわね? について話しておりますとシェンナが叫びましたわ。
「マウナ様! クナギ様! チヨルカン進軍開始しました。予想通り橋を渡るようですー」
しかし、次にコリーの方からの報告ですわね。
「しかし、ガクザン将軍率いる一部兵士が迂回。おそらく不毛の地から迂回して回り込む様子です!」
「不毛の地? 人間がですか?」
「はい! 人間が不毛の地に長くいることは危険ですから盲点でした!」
不毛の地は長いこと人間がいると瘴気でちょっと面倒なことになってしまうそうですわね……ん? そんな危ない場所を商人は通ってるんですの? なに? 整備された道の部分は短時間ならそこまで影響がいと? なるほど。
行軍となると時間がかかるため、不毛の地のルートは使わないと踏んでいたら、二手に分かれての進軍という手を使われたということですわね。
「閣下、自分が不毛の地に向かった部隊を止めましょう、ナルリア殿とエルフ、ダークエルフの部隊をお借りしたいであります」
キノコ中尉が迂回ルートの部隊を引き受けてくれるようですわね。
「中尉お願いしますわ。ナルリアちゃんも中尉をサポートしてあげてくださいまし」
ワタクシに頼られるのが嬉しいのか、満面の笑みでナルリアちゃんが返事をしますわ。
「――わかった! さっさと退治してくる」
「ええ、ええ、ささっと倒してきなさいな。ワタクシ達の特訓の成果を見せてくるのですのよ」
「――おうさ!」
ナルリアちゃんはヤル気満々ですわね、武器屋の親父にカスタマイズされたナイフと強化された小型クロスボウの出番ですわね。
「ではエルフとダークエルフをお任せします。中尉、かならず戻ってきてください」
「了解であります、米田義臣必ずや任務遂行し戻ってまいります!」
そういえばキノコ中尉の本名は米田義臣でしたわね……忘れておりましたわ
そしてナルリアちゃんとキノコ中尉は準備のためこの場から離れていきました。
望遠鏡でチヨルカンの方を覗いていると、進軍はすでに始まっておりある程度の数が橋に詩を踏み入れておりますわね。
「マウナさん、そろそろよろしいのではなくって?」
「わかりました」
ワタクシ達はひそかに開発していた魔道具の精霊式糸電話を使い、橋を壊す指示を出しますわ。
この道具便利ですが糸電話なのが問題ですわね……そう考えると携帯電話って凄い技術ですわね。
連絡して数分後に凄い音とともに橋が崩れていくのが確認できましたわ、これによりチヨルカンの先遣隊は半壊。
初手は我々が有効打を打ったようですわね。デブが地団駄踏んでおりますわー、ざまぁみそですわー。
そう思っていたら……チヨルカン側から飛竜の集団が飛び出してきましたわね。
ワイバーンというヤツですわねぇ。
「サルジーンを落としたと言ってたわねぇ、アレはサルジーンのワイバーン隊ね」
ベティさんがそう言いました。この時代に航空戦力とは卑怯な!
「カーチス! セルカド! 部隊を引き連れ街の周囲の防衛を!」
「「了解!」」
マウナさんの指示で両名が出ていきますわね。
「では、ブライアンさんはケンタウロス隊を引き連れ、ワイバーンの迎撃をお願いいたしますわ」
「我らケンタウロスの弓からは逃れられないと、思い知らせてやりましょう」
ブライアンさんも城から出ていきましたわね。
「さすがのワタクシも戦争は未経験ですわよ、この世界に来てから初めて尽くしですわねぇ」
どうも戦争というのは好きになれそうはありませんわね、ワタクシはそんな事を思いつつ。
この
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます