第八十二話 勇者動く!

 アレから更に二ヶ月が経ちましたわ。

 コルリスの復興はまだまだかかるようで、此方からもそこそこの人数を手伝いとして送っておりますが、半壊した街はそう簡単には戻りませんわね。


「思った以上に街のダメージが大きいですわね」

「ああ、そうじゃな。貴国の助力には助けられておるが、まだしばしかかりそうじゃ」

「ええ、ですが紅蓮孔雀があの数で攻めて来て、あの程度で済んだのは皆さんの対応の早さの結果だと思います」


 どんだけヤバイ魔物なんですのよ……たった五十程度で街を壊滅させる魔物って……


「紅蓮孔雀ってそんなに厄介なんですの?」

「ええ、アレが二十匹来るくらいならエンシェントクラスのドラゴンが攻めてくる方がマシですね、それほどまでに紅蓮孔雀は容赦なく破壊していきますね、能力的にはドラゴンには劣りますがその習性は苛烈です」


 マウナさんの話でワタクシとエルファリス王は顔を青くしておりました。

 ワタクシ達は今エルハリス王国の王の間におりますのよ、以前言っていた国名を新たにすることの報告、そしてその事と共に二国での同盟の発表についての話をしに来ておりましたのよね。


「しかし、国名も無事決まったようじゃな」

「はい、良い名前になりました」


 この同盟、双方にメリットがありますが近隣の国はある意味、たまったものではないでしょう。

 なにせ大国と魔王の同盟ですものね、この辺りもどうすべきか詰めないといけませんわね。

 世界征服狙ってると思われても困りますものね。

 そんな事は考えていると兵士の一人が王の間に入ってきましたわ。


「なんじゃ、騒々しい。客人がおるのだぞ」


 王様がそういいますと、兵士は敬礼します。


「は! ご無礼を承知ですが緊急の事ゆえお許しを!」

「なんじゃ?」


 兵士の緊急の報告に対し王様が尋ねます。


「は! チヨルカンが我が国とファーレ魔王領に対し宣戦を布告しました!」


 宣戦布告とか暇な連中がいたものですわね、しかも大国エルハリスに対してですわよ! あと何かもう一つ国の名前を言っておりましたわね?


「なんだと?」

「マナカさん! ファーレ魔王領改めテル・ファーレも目標のようですよ」


 あ、ファーレ魔王領と言ってたのですわね……にゃんだとう!


「まったく迷惑ですわね! この大事な時期に!!」

「緊急会議じゃ! 騎士団長各位に大臣どもをあつめよ!」


 王様が兵士に命じ緊急に会議が行われることとなりましたわ。


 ――

 ――――


 ざっくり決まったことを申し上げますと。

 勇者率いるチヨルカンの進行ルートが我が国のようなのでここで食い止めることになりますわね。

 エルハリスからも騎士団が派遣され街の防衛にあたってくれますが、ワタクシたち街中まで入れさせるつもりまったくありませんわよ!


 ワタクシたちは国王に挨拶を済ませると、即行で魔王国に戻り対チヨルカン防衛戦に備えることにしました。


「モルテ! 戻りました! こちらはどうなっていますか?」


 マウナさんがすぐにモルテさんやサティさん達を集めております。


「は! 宣戦布告はされましたが今すぐに動く気配はございません。ダークエルフたちに見晴らせておりますが、どうやら何かトラブルがあったようですな」

「それは、こちらにとって良い報告ですね。急いで準備をしましょう」


 サティさんが魔王国の現状を説明してくれます。


「現在、セルカド率いるオーク隊が五〇〇、カーチスのオーガ部隊三五〇。ブライアンを筆頭にケンタウロス機動部隊が二〇〇、ウェンツ率いるエルフ隊が二〇〇名。ゴブリン隊一二〇〇名、計二四五〇名が準備完了しています」

「この短時間でよく準備してくれました」

「ダークエルフ達を合わせても二五五〇名といったとこですわね」


 チヨルカンは話によると約四五〇〇もの部隊だとか、数はそうでもありませんがなんか胡散臭いんですのよねぇ。


「なるべく、街での戦闘は避けたいところです。街に来る前に東側の森で迎撃しましょう」

「そうですな、あそこなら広くまだ開発途中の鉱山があるだけですので、迎え撃つには良いかと」


 マウナさんとモルテさんは、こないだ見に行ったミスリルが発見された鉱山の辺りで迎え撃つようですわね。


「閣下、意見具申よろしいでしょうか?」

「はい中尉何か良い案でもありますか?」


 キノコ中尉が何か思いついたようですわね。


「東の鉱山付近の森であるのならば、チヨルカン側とこちら側にある橋を破壊してしまう作戦を提案します」

「あの大きな橋ですわね? 確かに壊せば時間稼ぎは可能ですわね」

「しかしあの橋を壊せば、しばらく東側からの商人がこれなくなりますな」

「ですが、今はそんなことを言ってる場合ではありません」

「そうですわねぇ、国がなくなったら橋も何もあったもんじゃないですわね」」


 ワタクシたちは中尉の提案通り、橋を壊す作戦で行くことにしましたわ。

 そして更に二日後、チヨルカンとの戦が開始されることになりました。

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