第八十話 街の様子を見よう 前編
昼食を済ませ。ワタクシとマウナさんに中尉とナルリアちゃんの四名は街の視察に出ました。
せっせと働いている人々が見えてきましたわね。街も随分と形になってきておりますわね。
「この短期間でよくまあ、ここまで発展しましたわねぇ」
そう、現代のような重機もないのに異常な速度で街は発展を遂げているのは驚きでしかないですわね。
「はい、皆さんのおかげですね」
実際、ゴブリンもオークもオーガも人間、ケンタウロスやエルフとここに来た住民たちは良く働いてくれていますわね。
魔物や魔族って人間より働き者が多いのでしょうか?
「良い感じでありますな、このままだと数年と経たずに大きな国家になるでありますな。巨大国家との同盟も大きいと思います」
「ええ、一年あれば以前の倍の国家になりますわねぇ」
「本当に信じられません、私の国がこんなになるなんて」
そして、街を行く人たちはワタクシやマウナさんを見かけると挨拶をしてゆきます。
まあ、問題があるとすると盗賊を捕まえて労働力にしていたためか、ガラの悪い人間が多いという所ですわね……今度、身なりをよくするように言い聞かせましょう。
街のいたるところで行商人が商売をしておりますわね、これはインフラ整備のたまものですわね。
もう少し街が整えば広場を作り、そこで行商しやすいようにしても良いかもしれませんわね。
行商の許可証も管理しておりますがまだまだ穴があっていけませんわね。
ワタクシ達が街を見学していますと、オカマの錬金術師がやってまいりますわね。
隣に少し顔色の悪い綺麗な女性が一緒におりますが……誰ですの?
そしてハスターさんはワタクシ達に気付くと、こちらにやって参りましたわ。
「あらー、魔王様とマナカちゃんじゃないのよー」
クネクネとキモイイケメンですわね……
「ハスターさん、研究の方は順調ですか?」
「ええ、言われた魔法陣を組み込んだ装置は順調よ。水の魔法陣で水を浄化とかよくもまあ思いつくわねぇ。水魔法の魔法陣で浄化する程度ならそこまで魔力も必要ないから難しい研究じゃないわね、付与術師がいるともっと楽なんですけどね」
「付与術師ですか……誰かいないか当たってみましょう」
「お願いねー」
ハスターさんには水の浄化装置を開発してもらっておりますのよ。これが街のいたるところに設置されれば、ワタクシのいた世界と同じように綺麗な水がいたるところで利用できるようになりますのよ。
「ところで……そこの女性はどなたですの?」
ワタクシが指さして尋ねると、指さされた女性は少しぎこちない動きで会釈をしました。
「あっらー、マナカちゃん! それ聞いちゃう? んっふっふー」
「まあ、聞いちゃいましたわね……」
凄く良い笑顔で語りだしたオカマの錬金術師。
「ふふふ、これは最新のエロ大根なのよー! ここの土地で取れる大根が凄いのよー」
「はぁ!? エロ大根ですってー?」
「――おぉ! 凄い進化だ人に近い!」
本の少し前までは大根が歩いてるだけでしたのに……これはどういう事ですの?
「でも、まだ問題は山積みよ。耐久性もほぼ大根だし動きもぎこちないのよねぇ、あと喋らないのよねぇ」
「貴方は大根に何を求めているんですの?」
「浪漫よー」
頭のいいバカの考える事は、常識人のワタクシには理解できませんわね……
「そうだ、今から家にもとい研究室に戻るのだけど、私の成果見てみる?」
ハスターさんの研究室、ある意味気になりますわね。
ワタクシは研究室に行こうと思う事をマウナさん達に話します。
「ワタクシは一度彼の所へ、行ってみるのは有りだと思いますわよ」
「――私も行きたい! エロ大根見たい!」
「閣下はどうされます?」
「私も気になるので行ってみましょう」
「了解よー、ついてきて」
ワタクシ達はハスターさんの後に付いていきます。
十五分ほど歩くと、研究室には見えない田舎の一軒家のような家が出てきましたわね。
そして、そこで観てはいけない光景を目にすることになりましたわ……
「……」
「……」
「なかなか強烈な光景でありますな……」
「――こわーい」
畑があるのは良いのですが……畑から人の顔が沢山生えてますのよ。
そこにいる女性に似たような顔がたーくさん、髪の毛のある部分が葉っぱになっております、顔だけが土壌から顔を出し並んでいる光景はホラーでしかありませんわね……
「うふふ、なかなかインパクトのある光景でしょ?」
「地獄絵図にしか見えませんわよ……」
「まあ、生首が並んでるようにしか見えませんからね」
ゴブリン達が生首の世話をしている姿はやはりホラーですわね……
さて、ワタクシ達はハスターさんの案内で部屋に入ります。
「さて、さっそくだけど研究の成果を見てくれるかしら?」
そう言いますとハスターさんは箱を持ってまいりましたわね。
箱の前後には穴が開いておりますわね。
「この箱の中に魔力を供給する魔石を入れるのよ、そして魔法陣の書いてある布を穴の場所に貼って……」
色々と説明しておりますが……全く理解できませんわ! キノコ中尉とナルリアちゃんも付いていけずボーとしております、マウナさんだけが理解しておりますわね。
魔法の原理なんてしるかー!
十分後に説明が終了、そして成果とばかりにバケツに入った濁った水を助手ゴブリンが運んできましたわ。
そして、箱の穴から水を入れ反対の穴から出てくる水が半透明にまで浄化されておりますわね。
「効果はこの通りよー、まだ飲めないレベルだけどね」
「凄いですね、短時間でこの透明度は」
日本のろ過装置って凄いんですのねー。しかし、このサイズでこの短期間でこの効果は凄いですわね。
「魔法陣の布に水の付与魔術をすれば効果は上がると思うのよねぇ」
「なるほど、分かりました付与魔術師を探して見ましょう」
「助かるわー」
他にも色々と同時進行しているようですわね。
ハスターさんがキノコ中尉を見ると、手をポンと叩きます。
「あ、そうそう。中尉さん用の凄い研究もしてたのよぉ」
「自分にでありますか?」
「ええ、少し試してほしいのよねぇ」
そう言うと助手ゴブリンのに命じて何かを持ってこさせます。助手ゴブリン四名で人間サイズの人形を持ってきましたわね。
「これは何でありますか?」
中尉が尋ねますと、ハスターさんは楽しそうに説明を開始しましたわ。
「これはね、ウッドゴーレムとエロ大根の研究から作り出した魔力を流し込むと動く人形なのよー」
「確かに武器屋とかで見るウッドゴーレムですわね」
「ゴーレムの頭の部分が開くから、そこに中尉を入れてもらえるかしら?」
「――わかったー」
ナルリアちゃんが言われた場所にと中尉を放り込みます、文字通り放り込みましたわ……
「中尉は確か木に張り付き固定できる能力があるのよねぇ? それで固定して頂戴な、魔石の前がいいわねぇ」
「自分では動けないので無理であります」
「そうだったわね、ゴブリンちゃんお願いヨ」
ゴブリンが中尉を魔石の前に置くと、中尉は身体を固定しましたわ。
「では、魔石に魔力を流し込んでみて頂戴」
「了解であります」
中尉の身体が光ると光が魔石を通じて人形の中に流れていきます、すると人形が立ち上がりました。
「おお、なんか凄いですわね」
「でしょー? では中尉、頭の中で腕を上げるのをイメージしてもらえるかしら?」
「了解であります」
少しすると人形が両手をあげましたわ、これって魔領操作型のゴーレムってわけですわね。
「おお、凄いであります。 これなら自分も自分の意思で動けるでありますな」
「素晴らしいですわね」
「でしょー、まだ改良点が多いと思うけど、初期起動は十分ねぇ」
キノコ中尉も喜んでおりますわね。
そしてワタクシ達は更にハスターさんの所で研究中の品を幾つか見せてもらいました。
「おっと、そこそこの時間が経ってしまいましたわね、そろそろ次の場所に行きませんこと?」
「そうねすね、ここからなら。 青豆の畑に行ってみましょう」
ワタクシ達はハスターさんの研究所を後にすると畑へと向かいましたわ。
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