第七十九話 国の名は。

 次の日何故か皆さま会議室に集められましたわ。


「皆さま、ごきげんよう。ところでコレなんの集まりですの?」

「お、おはようございます。なんの集まりなのかは、わ、分かりません」


 アルティアさんで聞いていないとなると、おそらく誰も聞いては無いようですわね。

 そして集合をかけた人物がやってきましたわね。


「皆さん、おはようございます」

「ええ、おはようございます。それで今日は何故集まったのかしら?」


 ワタクシは今日の集まりが何かをマウナさんに尋ねます、するとマウナさんは皆さま見回すとワタクシの問いに答えました。


「はい、本日皆さまに集まっていただいたのはファーレ魔王領の新しい名前を決めて頂きたく集まっていただきました」

「ほう、魔王領の新しい国名ですか? 何故また急に?」


 モルテさんの疑問はもっともですわね。理由を知ってるワタクシでもなんでまたここまで急に? といった感じですものね。


「何となく早く決めた方がいい気がしたからです!」

「ほうほう、流石はマウナ様ですな」

「え?」


 そこ流石な部分なんですの?

 そして昨日今日で会議するなんてよほど国の名前を決めたいのですわね?


「そ、そんな重要な事を決めるのに、わ、わたし達が呼ばれてもいいのでしょうか?」

「いいわよー、お姉さん凄い名前考えちゃうわよー」


 戸惑うアルティアさんにノリノリのオカマ。ロクな名前は考えないでしょうね……


「コリー、皆さんにお茶をお持ちしてください」

「かしこまりました」


 コリーさんがお茶を用意するために出ていきますと、会議の開始ですわ。


「先日はエルハリス王と会談し、同盟を結ぶことが出来ました。これも皆様のおかげだと私は思います」


 マウナさんはここに集まった方々を見回し、そう切り出しましたわ。


「その会談で王は私に、国の名前はあったほうが良いとおっしゃってくださいました。確かにファーレ魔王領は正式に国の名前ではないですから、この機会に国の名前を決めようと思い皆さまに集まっていただきました」

「ふむ、確かにずっと魔王領で通しておりましたからな。ごもっともな意見ですな」


 モルテさんがそう言いますと、マウナさんは嬉しそうな顔で相槌をうちながら。


「だ、だしょ……」


 だしょ……噛みましたわね……

 皆さん一斉に顔をそらします、マウナさんも椅子に座り直して


「コホン!」


 咳して誤魔化します。


「それで皆様の意見を参考に決めていきたいと思います」

「噛みましたわね?」

「えー、どなたか案はありますでしょうか?」


 何事もなかったように進行を開始しましたわね?


「やはりファーレは残すべきでありますな」

「そうですな、この領はマウナ様のお爺様が作られた国ですからな。ファーレを残すのは私も賛成ですな」

「ファーレの前か後に何か言葉を付ける形ですわね」


 マウナさんのお爺様が作られた国でしたのね、でしたらファーレを残すのは当然やもしれませんわね。


「――ファーレ県多治見市!」

「ナルリアちゃん却下ですわ! 何故、多治見市にこだわるんですの?」

「――なんとなく!」


 ただ響きが気に入っただけですわよね……

 ですが行き成り方向性が決まったのは大きいですわね、名前を決めるとか指針無いと難航しますものね。


「え、縁起の良い言葉と、く、組み合わせてはどうでしょうか?」

「妥当な意見ですわね、何か良い言葉はございます?」

「そ、そうですね……エリヴァールなんてどうでしょう? 喜ばしいという意味ですが」

「エリヴァールファーレですか? 少し長いですが悪くはありませんわね。ただ喜ばしいというのも違う気はしますわね」

「そ、そうですか。む、難しいですね」


 あれよこれよどーとかこーとかで一時間以上が経過しましたわね。


「以前話してくださった、マナカさんの世界の神話に出てくる最初の人間ですか?」

「アダムとイヴですわね?」

「ええ、その神話のイヴから取ってイヴ・ファー……」

「却下ですわ! 色々と問題があるのでダメですわよ!」


 そんな危ない名前は許可できませんわよ!


「なかなか決まりませんね」

「そうですわねぇ、永遠に国が続くという意味を込めて。ワタクシの世界のイタリアという国の言葉で永遠を意味するエテルニタという言葉と、ファーレをくっつけてみては?」

「エテルニタファーレですか?」


 結局シンプルなほうがいいですわよね?


「あらぁ? 悪くないんじゃないかしら?」

「え、ええ。いいと思いますよ」

「――ん? ん? テルニタファーレ?」

「な、ナルリアちゃん。え、エテルニタですよ」


 ん? エを削ってテルニタファーレ……案外悪くないですわよ?


「いや、ナルリアちゃんのテルニタでいいんじゃありませんこと? 少しもじった方がまんますぎずいいかもしれませんわよ?」

「でしたらテルだけ取ってテル・ファーレ魔王国というのはどうでありますか?」

「ふむふむ、良いのではありませんか?」


 キノコ中尉の提案した名前が割と皆様的に好評なようですわね?

 どうやら、皆さまテル・ファーレ魔王国で決まりな雰囲気ですわ。


「私もこのテル・ファーレ魔王国でいいと思います」


 あれから更に三十分ほど審議しましたがこのテル・ファーレ魔王国に決定で終わりましたわね。


「では、我が国の新たな名前は『テル・ファーレ魔王国』とします」


 パチパチと拍手を送るメイドさん達とモルテさんに実は参加していたカーチス、セルカド、ブライアン達、カーチスなんてずっと寝てましたわよ。


「では来週にでもエルハリス王に国の名が決まったとの報告をし。両国に対して正式な同盟締結の発表を行うとともに、テル・ファーレ魔王国の名前の発表をしたいと思います」

「「「は、仰せのままに」」」


 マウナさん配下が敬礼をします。


「あぁ、名前が決まって良かったです。マナカさんに中尉有難うございます」

「は、自分も臣民としてお役に立てた事を光栄に思います」

「いえ、協力者として当然の事をしただけですわよ」

「この国がお二方にとって、この世界での祖国になってくれれば私も嬉しいです」

「ありがたきお言葉であります陛下」


 キノコ中尉はもうすっかりこの国になじんでおりますわね。

 そしてワタクシは午後からの予定を提案しますわ。


「午後からは国の現状を見ておきたいですわね」

「そうですね、では昼食後にこの付近から見ていきましょう」

「では自分もお供いたします」


 これで午後からの予定は決まりですわね。

 するとベティさんとアルティアさんがこちらにやってきました。


「マウナちゃんにマナカちゃん、悪いのだけど私とアルティアちゃんは一度コルリスに戻ろうと思うのよ」

「あら? 何か用事でもありますの?」

「は、はい。こ、孤児院に戻りこちらに引っ越す準備をしようと思いまして」

「私も同じねぇ、仲間の墓参りしてからこちらに移る準備をしてくるわよん、ここまで来たら私達もこっちに移るわよー。ふふ、冒険者仲間から国造りに移るなんて思わなかったわー、やはりあなた達は面白いわねぇ」


 お二人は完全に魔王国に移り住んでくれるそうですわね。


「お二方も有難うございます」

「いいのよ、割と楽しんでるのよ」

「わ、わたしもです」


 こうして皆さん午後からは別行動となりましたわ。

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