第十六話 何かおかしくないですのこれ?
「マナカさんこちらはもう終わりました!」
「こちらもすぐにカタが付きますわ」
ワタクシ達は闇ゴブリンという種のゴブリン型のモンスターと戦っておりますわ。
そして最後の闇ゴブリンをワタクシは裸締めで締め落としますわ。
マウナさん曰くゴブリンは人間と会話もでき一応意思疎通が可能な亜人の仲間だそうですわ、ですが先ほどワタクシが仕留めた闇ゴブリンというのは意思疎通も出来ない小説や漫画でよく見る一般的なゴブリンのイメージのゴブリンだそうですわ。
「ふう、今日に入ってからすでに三度目のモンスターの襲撃ですわね」
「流石に多いわねぇ」
ベティさんも不思議に思っていますわ、何か良くないことでも起こってるとかでしょうか? 例えば魔王が復活しているとかその影響で魔物が活発になってるとか。
マウナさんの方を見ます、魔王ですけど……魔王。
「マナカさんどうかしました?」
「魔物が多いのに魔王って関係あります?」
「無いと思いますよ多分」
「ワタクシのいた世界でのお話ではよくあるパターンなんですが」
「どうでしょう? そんな力を持つ魔王は今はいないはずですけどねぇ」
どうやら関係ないようですわね。そうなるとたまたまでしょうかね? 何かあると思ったのですがワタクシの考えすぎでしょうかね?
ただベティさんも首をかしげております。
「まあ、確かに多いわよね、闇ゴブリンは道の方まで出てくることは珍しくないのだけどグレイウルフとかは珍しいのよねん」
ムーロさんもベティさんに賛成のようですわね、頷いておりますもの
「ベノワさんのおっしゃる通りですな、私もこの辺りは割と通りますが半日で三回の遭遇は珍しいですな」
ベティさんもムーロさんも流石に多いと思っているようですわね、困ったものですわね。
「ひょっとして盾を狙ってる人がいるという事はないですか? 雇われの魔物使いが敵にいる可能性もありますよ」
「どうでしょう? 盾は確かに珍しいし強力なマジックアイテムでもありますが、この盾を本日移動させることを知ってる者は少数です、私が持ってることを知ってる者自体が少ないですからね」
「で、でも可能性はゼロではないんですよね?」
ムーロさんの言葉にアルティアさんが可能性について意見してますわね。ムーロさんとマウナさんが考え込んでおります。
ワタクシ達は答えが出ないまま移動を再開しましたわ。
マウナさんまだ何か考えていますわね、魔物使いのことでしょうか? ワタクシは取り合えず次の襲撃が無いように警戒しておきましょう。
「闇ゴブリンのようなデミ系の魔物を操るのは獣系の魔物を操るよりはるかに難易度は高いんですよ、そこまでの術者となると少ないし雇うにもかなりの金額が必要になるはずなんですよね」
「つまり、どういうことですの?」
マウナさんはワタクシの方に向くと考えた事を話します。
「先ほど言ったように、闇ゴブリンのようなモンスターを操るのはかなり難しいので術者はかなりレベルが高い事になります、しかも操ってる魔力を感じさせないとなるとトップクラスの術師になるので雇うにも金額が凄いことになるんですよ」
「どれくらいの金額になるんです?」
「私も田舎出身なんで相場が実はまだわかってないんですけど」
するとムーロさんが大体の相場を教えてくれます。
「そうですな、高位の魔物使いなら一回の襲撃で五万リシェから十万リシェくらいは行きますな。それなら傭兵でも雇った方がマシな金額ですね」
「そう考えると一日じゃなく一回の襲撃で十万リシェなんて割に合わないんですよね」
「なるほど、そうすると魔物使いを雇って盾を狙ってるわけではないということですわね」
「そういう事です」
そうなると、ますます謎ですわね。アルティアさんが何気にぽつりと。
「た、盾の呪いだったりしませんかね?」
呪い? マジックアイテムは実は呪いの品でした! ありえますわー!!
アルティアさんのその何気ない一言でワタクシもベティさんもマウナさんも同時にアルティアさんの方を向きます。ムーロさんも馬車を操っているため直接はアルティアさんを見ませんでしたが驚いてチラっとアルティアさんを見ましたわ。
あり得ますわよその可能性、ワタクシの世界のゲームにもありましたものエンカウント率の上がる武器防具が、むしろ何故その可能性を外していたのでしょう。
もしアルティアさんのおっしゃった事が本当でしたら、この任務実に面倒やもしれませんわね。
「ありえますわね」
「魔物を呼び寄せる呪いですか」
「やだぁ、ムーロちゃん呪いとか調べたの?」
「鑑定士の話ではそんな呪いの事はいっていませんでしたな」
ワタクシ達の反応にアルティアさんは困惑した様子でしたわねオロオロしてる姿がキュートでしたわ。
そして馬車はどんどん進んでいきますわ。さらに一時間ほど進んでいきますと……はいいらっしゃいましたわ、目の血走っちゃった鉤爪の妙に長い熊さんがのそりと馬車の前に出てきましたわ。
「ペリグロオソです、とにかく凶暴なやつです、腕力が強くあの鉤爪には注意してください!」
「え、えぇ? ペリグロって五等級以上が相手する魔獣ですよね?」
「言ってる場合じゃないですわよ」
マウナさんの注意を聞いたメンバーが馬車から飛び出しましたわ。
ほぼ定番になりつつある陣形を展開します。
今回は敵が一匹なのでまずはマウナさんが先制の魔法攻撃を仕掛けますわ。
「――ウィンド・ブロウ!」
突風による衝撃がペリグロオソに襲いかかります、ですがペリグロオソは両腕を交差させマウナさんの魔法を防御します。
しかしこの隙を見逃すワタクシ達ではありませんわ、ベティさんが突進して行くのでワタクシも直ぐ後を追いますわ。
ベティさんのぶちかましを受けたペリグロオソがよろめきましたわ。
「マナカちゃんいまよ!」
ワタクシはベティさんの肩を蹴ってペリグロオノ首に腕を巻き付けるとその首を軸に相手の首を捻りながら一回転します、骨のきしむ嫌な音とともにペリグロオノの首が九〇度ほど傾いております、ペリグロオノはそのまま崩れ落ちましたわ。
「ペリグロオノが一瞬って、なにあの技?」
「遠心力で首を捻っただけですわよ、殴るより効率がよろしいかと思いましてね」
「簡単に言うわね……背後から首を腕でロックして首を支点に地面に着かずに前に回り込みそのまま縦に一回転ってどんな動きよ」
「慣れですわよ、慣れ」
ペリグロオノはこの辺りでは一番強い魔物のようですわね、それが瞬殺ですから皆が驚くようですわね。
「マナカさんって異世界の出身なんですよね、異世界の人って凄いんですね」
「いや、異世界の人でもあんなことする人はマナカさんぐらいじゃないでしょうか?」
「ワタクシここに来る異世界の方々に会ったことありませんので比較できませんわね」
ペリグロオノの魔核だけ採集して馬車に乗り先へと進みますわよ、流石にもう今日はこれ以上のエンカウントは勘弁してほしいですわね。
エウンカウンとの心配をしつつワタクシ達は予定通り森の中を通ってる道に入っていきましたわ、この選択肢絶対に間違ってますわよね。
「ワタクシ思うのですが森の中とか入ったらダメなんじゃないでしょうか?」
「もう遅いと思いますよ……」
うん、仕方ないですわね。何も無いことを祈るのみですわね。
「今更ですが、私もこのルートは失敗したかなあと思ってます」
「こんなに魔物が出てくるなんて普通思わないわよねぇ」
森の中を一時間ほど進むと完全い薄暗くなっており道も舗装はされてますがかなり悪い状態の道になっていますわね。
仕掛けるとしたら絶好の場所ですわね、ワタクシが盗賊ならここで襲うくらいにナイスな場所ですわね……ガサガサと音がしてきましたわよ、皆さまも音が気になってるようですわね。
「ム-ロさん、馬車を緊急停止ですわ!」
「――わかりました!」
ムーロさんが馬車を緊急停止させた瞬間に馬の前に投げ槍が一本降ってきましたわ。槍の後に闇ゴブリンが五匹と……あれは魔物じゃないですわよね? 東洋人らしき若い男が出てきましたわ、おそらく日本人ですわね。
男がこちらを見て忌々しそうに吐き捨てますわね。
「クソ! 話が違う意じゃねぇか。八等級冒険者って話だろうが! 八等級がなんでこんなに強いんだよ」
呪いではなく襲撃者でしたわね、ワタクシ達は馬車を降り戦闘準備をしますわ。
「ムーロさん! 思いっきり情報がもれてるじゃないですの!」
「おかしいですな」
マウナさんは男と一緒にいる闇ゴブリンを観察しておりますわ、どうやら魔物使いかどうかを見てるようですわね、しかし悠長に見てる場合じゃありませんわね。
男がさらに一歩前にでますわ。
「こっちにゃ後がねーんだわ、お前たちが運んでる荷物を渡しちゃくれねーか?」
どうやら相手はやる気満々ですわねぇ、まったくチンピラみたいな顔しやがってですわね。
「ドサンピンが、誰の差し金ですの?」
「いう訳ねーだろうが!」
ワタクシが丁寧に聞いて差し上げてるのにこの男言わないつもりですわね。
「マナカさん! やはり魔物の方には特別な魔力は感じられません! その男は召喚されてこっちに来た人間です、魔物をあやつってる能力はその男のギフトの力だと思います」
ワタクシと同じ召喚された人間という事ですか、ワタクシこの世界に来てから初めて召喚された人間と会いますわね。初の出会いが敵とは困ったものですわ。
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