第十七話 異世界人は敵でした
「そんな闇ゴブリン数匹ではワタクシ達は倒せませんわよ」
「んなこた分かってるよ!」
そう男が叫ぶと瓶を取り出しましたわ、火炎瓶な訳は無いですわね。しかし瓶を見たアルティアさんが叫びましたわ。
「そ、それは多分、魔寄せのフレグランスだと思います!」
「魔除けじゃなく、魔寄せですか……」
「その通りだよ!」
男はそう言うと瓶を地面に叩きつけましたわ、うっすらと紫の煙が辺りに漂っていきますわ。
「く、間に合ってください! ――インティエンスゲイル!!」
マウナさん風の魔法で突風を起こしますわ、風が煙を吹き飛ばします。
「マ、マウナさんナイスです!」
「くそ! 風の魔法で吹き飛ばしやがったか突風の魔法まで使えるとは」
しかしそれでも魔寄せのフレグランスは効果を発揮したようですわね、森の奥から獣の唸り声が聞こえてきますわ。
グレイウルフが三匹と以前ソアクーア草採集の時に倒した蝶のモンスターが二匹それに……なんですのアレ? 木が歩いてますわね、トレントというヤツでしょうか? それが一匹やってきましたわ。
「な、トレントじゃないのよぉ!」
「思ったより数は少ないがトレントがいたのはラッキーだな」
男がうっすらと笑みを浮かべましたわ、困りましたわね闇ゴブリンと合わせて十一匹もいるじゃないですのよ。
「トレントはマナカちゃんと相性が悪いかもしれないわねぇ」
「そうなんですの?」
「そうですね、トレントは地属性に高い耐性を持つし物理防御も高い敵です。火の魔法に弱いのですが……場所が悪いですね」
トレントはまあ何とかしますかね。男がワタクシ達の方に指を向けるとモンスターたちが一斉にワタクシ達を見ますわ。奴さん達やる気満々ですわね。
「アルティアさん、ベティさんはムーロさんを守ってくださいまし、マウナさんはワタクシと敵の殲滅をお願いしますわ」
「わかりました」
「は、はい」
「オーケーよん」
ワタクシとマウナさんは男と闇ゴブリンの方を見ます、新しく増えたグレイウルフ三匹はムーロさんが一番戦えないと踏んだかベティさん達を囲むように陣取っておりますわね、問題のトレントは運よくワタクシとマウナさんの近くにいますわね、蝶のモンスターはこの中で一番弱いモンスターなので半分無視して臨機応変で殲滅しましょう。
ワタクシが闇ゴブリン五匹に向かって突っ込みますわ、すると闇ゴブリン達も武器を持ち臨戦態勢に入りましたわ、ワタクシはまず正面の体格の一番いい闇ゴブリンの顔面目掛けて飛び膝蹴りをぶち込みますわ、鼻血をまき散らしながら闇ゴブリンが後ろに倒れます。
これを皮切りにベティさんの方もグレイウルフが一斉に三方向から飛び掛かってきますわ。
マウナさんがワタクシの突進に合わせて魔法で援護してくれますわ。
「――ウィンド・ブロウ!」
風による衝撃が一番左の闇ゴブリンを吹き飛ばします。
「――いったいわねぇ! お肌に傷跡残ったらどうしてくれるのよ!」
ベティさんがどうやら攻撃を受けてしまったようですわね、チラっとベティさんを見ると、左腕のバックラーで左から飛び掛かってきたグレイウルフを叩き落しておりましたが正面から来たグレイウルフに右腕を噛みつかれていますわね。右から来たグレイウルフは意外な事にアルティアさんが杖で攻撃を防いでいましたわ。
「ベティさん達大丈夫ですの?」
「痛いけど、まあなんとかなるわよ」
「な、なるべく早くたすけてくださーい!」
「アルティアちゃん、ちょっと粘っててね。お姉さんがすぐに助けてあげるから」
「こちらもなるべく早く片付けますわ!」
グレイウルフはベティさん達に任せるしかありませんわね、男の方を見ると男はどさくさに紛れて馬車の方に向かっていきますわね。
ワタクシは隣にいた闇ゴブリンの頭を掴みボディブローを叩きこんでからその闇ゴブリンを男に向かって投げつけましたわ。
「あぶね!」
男は間一髪ワタクシの投げた闇ゴブリンを避けます。投げた闇ゴブリンが偶然にも蝶のモンスター一匹とぶつかりましたわ。
「何しやがる!」
叫ぶ男に対してワタクシも叫びます。
「大人しくしていなさいな、かすめ盗るなんてお行儀が悪いですわよ!」
ワタクシは叫びながら、起き上がろうとしている体格の良い闇ゴブリンの顔面を蹴り飛ばします、トレントが気になってトレントの方を見るとマウナさんが一人でトレントと対峙しておりましたわ。
「マウナさん一人で大丈夫ですの?」
ワタクシが尋ねると、マウナさんは頷き言いました
「任せてください、やむを得ないので闇魔法の凄いヤツいっちゃいますね」
そう言いますとマウナさんから黒いオーラが噴出しましたわ。
「――シャドウ・バインド」
マウナさんが魔法を唱えるとトレントの動きが止まりましたわ、動きを封じる魔法のようですわね。
「――我は命ずる深き闇よ深淵なる闇よ我が敵に残忍なる抱擁を! クリュエルソンブル!」
マウナさんが魔法を唱えるとトレントが球体の闇に包まれましたわその後、闇で出来たトゲが何本も球体から飛び出します。
球体が消えた後はズタボロになったトレントが絶命したまま立っておりましたわ。
「な、なんですのその魔法」
「闇の上位魔法です」
ドヤ顔しているマウナさん可愛いですわね! でも少しイラっとしましたわ。
男も一瞬の出来事に驚きを隠せておりませんわね。
そしてベティさん達の方を見ますと丁度ベティさんがアルティアさんが防いでいたグレイウルフの頭をメイスで叩き割っていましたわ。
ワタクシも残った二匹の闇ゴブリンを素早く仕留めますわよ。
まずは残り二匹のうちの一匹に左のフックから右のフックで仕留めた後残りの闇ゴブリンにボディブローを決めて前かがみになったところをアゴを打ち抜きます。
ワタクシが五匹いた闇ゴブリンを全て処理し終わると最後に飛んでた蝶のモンスターがマウナさんの魔法で切り刻まれていましたわ。
男はワタクシ達が想像以上に早くモンスターを全滅させたことに驚いておりますわね。
「嘘だろ、トレントまでいてここまで簡単に負けるなんて」
「まあ、トレントはワタクシも正直驚いておりますわ」
ベティさんはアルティアさんの魔法で治療を受けておりますわね。
ワタクシは男に近づいていきますわ。
「さて、貴方どうするんですの? ワタクシ敵対者には容赦しませんのよ」
男は短剣を抜き出しムーロさんの方を睨みます。
「貴方そこから一歩でも動いたら、容赦なく貴方の顔面を柘榴のようにしますわよ、ムーロさんを人質に取ろうなんて考えないことですわね」
ワタクシの言葉に男は泣きそうな顔をしておりましたわ。
「俺はもう後がねぇんだよ、ここで失敗したらアイツ等に消されちまう……」
男はどこかの組織に所属してるようですわね。
「ワタクシ達を襲撃してきた黒幕の事を教えてくださるのでしたら、貴方を保護して冒険者ギルドに掛け合ってもよろしいですわよ」
ワタクシは敵の情報を得るために男に提案します、おそらくこの話に乗ってくると踏んでおりますわよ。
「ほ、本当か?」
「ワタクシ、冗談は言いますが時と場合によりますが基本的に嘘は言いませんわ」
「なんだよ、その半端な言い方」
「うるさいですわね、この場合は本当ですので安心なさいな」
マウナさんとアルティアさんが笑いをこらえておりますわね、二人を睨んでおきますわ。
「わかった! 知ってる限りの事は話す」
「よろしいですわ、それで誰ですの?」
ワタクシの言葉に男は安心したのか少し落ち着きを取り戻したようですわね。
「俺にお前たちが運んでいる荷物を奪って来いといった人物はなジョ――」
男が黒幕の人物名を言おうとした瞬間。殺気! さっきまで人の気配なんてしなかったのに! あ、『殺気』と『さっき』は洒落じゃないんですのよ!!
「魔力反応です! 皆さん注意してください」
マウナさんが注意した瞬間に炎の槍が男の胸を貫いておりました。
「うが! ぐぐぐ……」
炎の槍から出た炎で男は炎上します。アルティアさんが回復しようとしますがどう見ても手遅れですわ、ワタクシはアルティアさんを止めます。
「あらん? すでに気配は消えてるわねん」
ベティさんの言う通り魔法を使った者の気配はすでにありませんでた。
中々見事な手際の口封じですわね、しかし隠密とでもいいますの? かなり高度な気配遮断技能ですわね。
「ムーロさん完全に情報漏れてますわね」
「そのようですな、困った事になりました」
「異世界人を使い捨てするなんて結構な組織に狙われてませんかね?」
そこも問題ですわよねぇ、あの男が星幾つの異世界人かしりませんが、ああもあっさり切り捨てるという事は組織として結構な規模という事ですわよね。
これはまだ何度かありそうですわね。
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