第十五話 ペンノへれっつらごー
そして出発の日になりましたわ。
ワタクシとマウナさん以外は全員がギルドに集まっておりますわね、ワタクシはモデル歩きで皆様の所に向かいますわ。
そして髪を華麗に搔き上げて挨拶をしますわ、朝の挨拶は重要ですのよ。
「皆さま、ごきげんよう」
「おはようございます」
ベティさん達も挨拶を返してくれますわ、ただ相変わらずベティさんがクネクネしてるのだけが気になりますが。
さて、挨拶を終えたところで本題に入ります。
ムーロさんのほうを見ると最初に会った時のような立派な服ではなく少しボロい旅装束でいました、ギルドの裏手の方に馬車が停めてあるそうなのでそちらの方に向かいましょう。
用意された馬車も立派な馬車ではなく少しボロ目の幌馬車です、しかし馬は割と立派な馬が馬車を引いておりますわ。
「それでは皆さん荷物を馬車に積んでください」
御者に扮したムーロさんに言われた通りにワタクシ達四人は馬車に荷物を積んでいきますわ、野営の道具と保存用の食料を馬車に積み込みます、そして例の盾を積み込みますボロそうな箱に偽装した宝箱に入っておりますわね。
荷物を積み終えると、皆さん馬車に乗り込みます。
「では、皆さん準備はよろしいですね? 出発しますよ」
「ええ、問題無いわよん」
そう言ってまずはベティさんがムーロさんの隣に座りますわ、ムーロさんを守るたに御者の隣ですわね。
ワタクシ達も問題無いことをムーロさんに伝えます、すると馬車がゆっくりと進み始めましたわ。そして馬車は北の門を抜けて街を出ますわ。
町を出たところ直ぐはやはり道が舗装されているので馬車の揺れも少ないですわね、魔王領の道とは比べ物になりませんわね。。
「マウナさんやはり道は重要ですわよ」
「はは、魔王領の道ボロボロですもんね」
道を直すにも人が足りませんわね、国に人を呼ばねば何ともなりませんこの辺りも考えていく必要がありますわね。そして今の所馬車は順調に進んでおりますわ。
「今のところは何もありませんな」
「まだ一時間ほどじゃないのよ、ここで仕掛けてくるバカなんていないわよん」
「それもそうですな」
ムーロさんとベティさんの会話が耳に入ってきます、極力秘密にしたい魔法の盾ですか、いわくつきのアイテムじゃありませんわよね?
「このまま平和にペノンまで着けばいいんですけどねぇ」
「そ、そうですよね。わたしは回復魔法くらいでしかお役に立てませんから、何もなければそのほうがいいですよね」
「そう言ってると何か起きますわよ?」
フラグって怖いんですのよ、何故か悪いことは起こるのですのよね。さて、そろそろ街の方が見えなくなってきますわねまだまだ始まったばかりの依頼ですわ気を引き締めつつゆるくいきましょう。
さて、何だかんだと三時間ほど馬車を走らせたところで道を少し外れて休憩をすることになりましたわ、馬車がボロイのかずっと座ってるとお尻が痛いんですのよね。
「マウナさん、アルティアさんずっと座っててお尻痛くありませんか? なんならワタクシが優しくさすってあげますわよ」
「「遠慮します」」
「く、ワタクシ凄いんですのよ……」
ハモって断られてしまいましたわ、アルティアさんの安産型のお尻もマウナさんのショートパンツに包まれた健康そうなお尻も素晴らしいのに何故遠慮するのでしょう?
ワタクシがそう思っていると悪戯っぽい笑いを浮かべてマウナさんがワタクシに言います。
「じゃあ、私がマナカさんのお尻をさすってあげましょうか?」
マウナさんがワタクシのお尻を! ふふ、うふふ。有りですわね!
「あらあら、お願いしてもいいんですの?」
「あ、やっぱやめておきます」
ワタクシがお願いすると、マウナさんすぐに悪戯っぽい笑みを決して目をそらしながら断ります。
隣でベティさんがクネクネしながら何故かケツをこっちに向けて……
「お姉さんのお尻も痛いわー誰かさすってー」
ふざけた事を抜かしていますわね、ストーン・バレットをお見舞いしてやりましょう。
「キモイので止めていただけません? ストーン・バレット!」
石弾がベティさんのお尻にヒットしますわ、ベティさんがお尻を抑えて飛び跳ねていますわ
「はふーん! お尻が割れちゃうじゃないのよ!!」
「はっはっは、愉快な方たちですね。さあ、お茶が入りましたよ」
ムーロさんが笑いながらお茶を用意してくれましたわ。
「あ、あの依頼主の方にそんなことしていただかなくても! わたしがやりますよ」
アルティアさんが慌ててムーロさんの手伝いを始めましたわ、ワタクシがお茶を淹れてもいいんですのよ、英国仕込みの何か無駄に凄いお紅茶を淹れて差し上げますわよ。
「ムーロさんありがとうございます、次はワタクシが入れて差し上げますわよ、本場の英国仕込みですわよ」
「英国ですか? 聞いたことのない国ですな、本場と言うと紅茶が流行っているんですな」
あ、英国なんて知ってるわけがありませんでしたわね。どうもその辺り向こうの感覚で会話してしまいますわね。
「マナカさんは異世界からやってきた方なので向こうの世界にある国だと思いますよ」
「な、なるほど」
ガサっと音がしましたわ、ワタクシが真剣な表情をすると、ベティさんも盾を準備してメイスを構えますま。アルティアさんがムーロさんを守るように動き、マウナさんもゲートボールスティックを構えます。
「マナカちゃん」
ベティさんの言葉に頷きますわ、音のした方向にベティさんが進みますワタクシもすぐ後に続きますわ。その瞬間――
普通の狼より一回り大きな灰色の毛をしたオオカミが三匹森から飛び出してきましたわ。
マウナさんが前に言っていたグレイウルスという魔物ですわね。
「こんなところにグレイウルフがいるなんてねぇ……」
「最近このオオカミをぶっ飛ばしましたわねぇ」
負けることはありませんがムーロさんに被害が出てはいけないので慎重に戦いますわよ。グレイウルフがワタクシとベティさんを囲むように円を描いて歩いて詰めてきますわね。
「ベティさん! 真ん中と右のウルフを足止めしてくださいな! ワタクシが左のをすぐに沈めますわ!」
「了解よん!」
ワタクシは左のウルフに向かってステップしますわ、ベティさんはバックラーを構えて真ん中のウルフに突進します。
「マウナさんとアルティアさんはムーロさんを守りつつ他にウルフの仲間がいないか警戒してくださいな」
「わかりました!」
「は、はい」
マウナさん達に指示しつつワタクシは間合いを詰めたウルフに左のジャブを鼻っ柱に叩きつけます怯んだところを右のフックでで止めを刺します。
ベティさんの方を見ると真ん中のウルフがベティさんの突進をワタクシのいる方向に避けましたわ、ベティさんは避けられたのを見て右のウルフの方を向いてそっちに注意を向けますわ、真ん中にいたウルフは今ベティさんの背中の方を向いておりますがワタクシとベティさんに挟まれてる形ですわね。
「マナカちゃん! 私の後方のウルフお願いね!」
そう言って右のウルフに突っ込みましたわ、同時にベティさんの背中に向かってウルフも走っていきますわ。
ワタクシはウルフに向かってストーン・バレットを放ちます! 外れたら後で謝りましょう!
「――ストーン・バレット!!」
石のサイズを少し小さくして弾速を速めた石の弾丸がベティさんの背中を追うウルフに見事ヒットしますわ!
「キャイン!!」石の弾丸を受けたウルフは吹っ飛んでいきます。
そして前方からのウルフの体当たりをベティさんがバックラーで受け止め横に力を流しバランスを崩したウルフの頭にメイスを叩きつけました、その一撃でウルフは倒れましたわ。
ちゃちゃっと三匹のグレイウルフを仕留めムーロさんの方に向いたところ。ムーロさんの後ろに四匹目がいましたわ。
「マウナさんムーロさんの後ろですわ!」
ワタクシの言葉にすぐ反応したマウナさんがすぐに魔法で攻撃します
「――ウィンド・ブレイド!」
振り向きざまに魔法を使ったマウナさん、風の刃が二つムーロさんとアルティアさんを避けカーブしてグレイウルフに当たります。風の刃に斬りつけられたグレイウルフはそのまま絶命しましたわ。
「お見事ですわ、振り向きざまの魔法なのにムーロさんとアルティアさんを避けて後ろの対象に当てるとかどうなってるんですの?」
「慣れれば風の魔法はこういった変則的な動きをすることも可能なんですよ」
ベティさんもムーロさんの方に向かって歩いてきましたわ。
「やっぱマナカちゃんならあの少しの足止めだけで十分だったわね」
「当然ですわ」
「さ、三人ともす、凄いですね……わたしなんて何が何だか分からないうちに終わっちゃってますよ」
アルティアさんはワタクシ達の戦闘を初めて見て驚いておりましたわね。同じくムーロさんも驚いておりました。
「いや、アルティアさんの言う通りお見事です、確かに八等級の強さではありませんな、普通はグレイウルフが四匹もいると駆け出しならかなり苦戦するものですから」
「お値段以上マナカですのよ。これでムーロさんにワタクシ達の実力が分かってもらえましたわね」
「私たちもアルティアさんという癒し手がいるから少しばかり無茶がききますよね」
「あら、マウナちゃん癒し手がいると言っても無茶は禁物よん、何がおこるかわからないからね」
「あはは、そうですね」
こうしてさらに三十分ほど休憩を取った後ワタクシ達は移動を再開しましたわ。ただ最初のうちにベティさんが気になる事を言っておりましたわね「こんなところにグレイウルフがいるなんてねぇ」と。
「ベティさん、普段はこの辺りにはグレイウルフはいないんですの?」
「ああ、さっきのグレイウルフ? まあ、この辺りの森にもグレイウルフはいるし、はぐれがたまに一匹ここら辺まで出てくることは有るけど二匹以上の集団がここまで出てくることは珍しいわね、普段はもっと森の奥にいるのよ」
「偶然なのかしら?」
「分からないわね、何か気になるのかしら?」
ワタクシもどうしてそこまで気になったのか分かりませんわね。ただこの世界のモンスターについて詳しくないから気になっただけやもしれませんわね。
「ワタクシ、この世界のモンスターは詳しくないので気になっただけですわ」
「なるほどねん」
こうしてこの日はそれ以上は何事もなく終わっていきましたわ。
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