第十一話 募集の紙を見たんですけど

 

 

 マウナさんに支えられて女性がワタクシのほうに歩いてきましたわ。

 

「貴女、大丈夫でした?」

 

 ワタクシは女性に声を掛けます、良く見るとやはり整った可愛らしい顔をしてますわ。是非ともお近づきになりたいですわね。

 

「は、はい……助けていただきありがとうございます」

 

 未だ外野が沢山いるので少し移動した方がよろしいかと、赤髪の女性も人見知りとか言ってましたしギルドに報告もあるのでそっちに行った方がいいですわね。

 

「マウナさん、その方を落ち着ける場所に連れていきましょう、ギルドに報告もしないといけないのでギルドに向かいましょう」

「わかりました、移動しますがいいですか?」

 

 マウナさんが赤髪の女性に声をかけると赤髪の女性は頷いてくれました。

 ワタクシ達が移動しようとするとザルバ達が起き上がってきてワタクシ達を睨みつけています。

 

「お前たち、俺たちにこんなことしてただで済むと思うなよ!」

 

 お約束のセリフありがとうございます、そう言いたくなるセリフを言ってますわね。

 

「あら? まだ痛い目に合い足りませんでした?」

 

 そう言ってワタクシが前に出ると、ザルバ達は「クソ!」と悪態をつきつつ逃げていきます。

 ふん、おとといきやがれってヤツですわね。

 

 ザルバ達が尻尾巻いて逃げるのを見送ると、ワタクシ達は報告もかねてギルドに向かいましたわ。

 

 

 ――

 ――――

 

 ギルドに到着してまず先ほど助けた赤髪の女性を適当な席に座らせます、ワタクシ達は赤髪の女性にそこで待っていてもらうとブレンダさんの所に向かいましたわ。

 

「ブレンダさん、ごきげんよう。数時間ぶりですわね」

「あ、ブレンダさん依頼終わりました」

 

 ワタクシ達が挨拶をするとブレンダさんは驚いたような顔で出迎えてくれました。何故驚くのでしょう?

 

「あれ? マナカさんにマウナさん早くないですか?」

 

 どうやら依頼達成が早くて驚いてるようですわね。朝出て行って今は昼になったくらいですから三時間くらいは経ってるると思いますが、早かったのでしょうか?

 

「もう三時間ほどは経っていませんこと?」

「いや、早いですよ。 普通の駆け出し冒険者なら半日近くかかる依頼ですよコレ」

「依頼受ける時にも言いましたが、ワタクシ案外優秀ですのよ」

「案外どころかかなり優秀ですよ」

 

 マウナさんが証拠の品の角を袋から出していますわ全部で二十一本も有りますわね、しかもジャイアント付きなので特別報酬も出るという事でしたわね。一匹一五〇リシェの報酬なのでざっと三一五〇リシェにジャイアント分がプラスされて報酬はい幾らになるのでしょうか?

 

「これが倒した分の角です」

 

 ブレンダさんが確認しておりますわね、少しして確認が終わったようですわ。

 

「確かにホーンラットの角ですね、ジャイアントホーンラットの角も確認しました。二十一体分と特別報酬で……合計四千六五〇リシェですね」

 

 半日の稼ぎとしては十分だと思いましたが実際はどうなんでしょう? 駆け出しの依頼にしては割と良いような気もしますが。

 ブレンダさんが報酬の金額が入った袋を持ってきましたわ、紙幣が無いとこういう時に不便ですわね。

 

「こちらが報酬になります」

「はい、確かに受け取りました」

 

 マウナさんが袋の中身を確認し自分の袋に入れますわ。重さが半分になるマジックアイテム便利ですわね。

 さて、依頼報告はこれくらいで赤髪の女性の所に戻るとしましょう。と、思ったらマウナさんがブレンダさんに話しかけていました。

 

「す、すいませんがこのホーンラットの核を買取してくれる場所はありますか?」

「モンスターの核の買取ならギルドでもできますよ、ホーンラットの核なら一個三〇リシェです、ジャイアントホーンラットなら五〇リシェですね」

「ホーンラットならそんなもんですか……分かりました、買取お願いします」

 

 回収してた核の事なんて忘れてましたわ! 六五〇リシェですから案外馬鹿にできませんわね。マウナさんが代金を受け取りブレンダさんに挨拶をしてこっちに来ましたわ。

 では改めて赤髪の女性の場所に戻りましょう。

 

 赤髪の女性が椅子に座ったままキョロキョロと辺りを見て警戒してますわね、さきほどあのような事があったから仕方が無いですわね。

 

「お待たせしましたわ」

 

 ワタクシは赤髪の女性に声をかけるとホっとしたような顔をしていますわ、そしてワタクシとマウナさんは赤髪の女性と同じテーブルの席に座りました。

 

「先ほどは本当にありがとうございました」

 

 女性は改めてワタクシ達にお礼を言ってきましたわ。困った女性を助けるのは淑女として当然ですわよ。

 

「お気になさらず、当然のことをしたまでですわ」

「私はただ見てただけですから」

「いえ、それでもお礼を言わせてください」

 

 ここは素直にお礼の言葉を受け取っておきましょう。

 

「わかりましたわ、お礼の言葉素直にお受けさせていただきますわ」

 

 さて、ここで会ったのも何かの縁ですわね、自己紹介はしとくべきでしょう。そう思いワタクシはまず最初に名乗りますわ。

 

「自己紹介がまだでしたわね、ワタクシはマナカ、マナカ・クナギと申しますわ。貴女のお名前をうかがってもよろしくて?」

「名前ですか? はい、わたしの名前はアルティア・クラーレと申します」

「マウナと言います、アルティアさんよろしくお願いします」

「アルティアさんですわね、よろしくお願いしますわ」

 

 自己紹介を終えるころにはアルティアさんも大分落ち着いてきたようですわね、ワタクシは給仕の娘さんに人数分の飲み物を頼みましたわ、何か変な名前のジュースでしたわ。

 そして少ししたらジュースが運ばれてきました、なんですのこの変な色のジュース? 味は……酸っぱいですわ……

 

「く、なんですのこれ……もう次は頼みませんわよこんなの」

 

 ワタクシが酸っぱさから変顔をしていると、それを見たアルティアさんが笑いをこらえてましたわ。

 

「マナカさん……その顔……すいません恩人に、プッ」

「あら? やっと笑ってくださいましたわね、ずっと不安そうな顔をしてますもの女性は笑顔じゃありませんとね」


 ついでに笑わせるための演技だという感じに見栄を張っておきますわ、普通に酸っぱくて変な顔してただけなんですけどね。

 ちなみにワタクシの横でマウナさんも酸っぱいのか変な顔をしておりました、真面目にコレなんですの? 変顔二号のマウナさんが変顔から元に戻ると

 

「ア、アルティアさんも冒険者なんですよね?」

「はい、未だに七等級ですけどね……わたし、人見知りなので……」

「私も田舎暮らしだったので人と話すのは今でも緊張しちゃいますね」

 

 いい感じですわ! マウナさんも少し人見知りなところがあるためかアルティアさんと共感する部分でもあるようですわね美少女と美人のお姉さんの会話は見てるだけでワタクシも幸せな気分になれますわ! んふ。

 

「でも、アルティアさんはワタクシ達とは割と普通に会話できていますね」

「あ……そういえば、そうですね」

「ふふ、ワタクシも普通にしていただける方が嬉しいですわ」

 

 ワタクシ達を三十分ほど会話をしていたアルティアさんが何か思い出したような顔をしています。

 

「あ、そ、そうだ。すいません買い物に行かないと、子供たちに食事も作ってあげないといけないんです」

「んえ? アルティアさん子持ちですの?」

 

 ワタクシ驚き! アルティアさんが子持ち? しかも複数形ですの?

 

「い、いえ。孤児院で手伝いをしていまして……」

「ああ、そういう事ですのね」

 

 ふう、ワタクシの勘違いでしたわね。

 

「そ、そうでしたか。アルティアさんも冒険者ならまた会えますね」

 

 マウナさんこの短時間で割とアルティアさんと打ち解けたみたいなので少し名残惜しそうにしていますわね、仲良くなることは良い事ですわね。

 

「では、すいませんが失礼しますね。今日は本当に助かりました、また今度お礼させてください」

「は、はい。ではアルティアさんお気をつけて」

「アルティアさんごきげんよう、また会えることをお待ちしていますわ」

 

 こうしてアルティアさんと別れましたわ。アルティアさんはギルドを出ていくときに連絡用掲示板の方を少し見ていましたわね。さて、ワタクシ達じつは重要な事を忘れていましたのよ。

 

「マウナさん、ワタクシ達重要な事を忘れていましたわ」

「な、なんでしょう?」

「お風呂屋さんに行きますわよ! よくよく考えると下水から帰ってまだお風呂に入ってませんのよ。実はアルティアさんワタクシ達が臭くて帰っていったんじゃないかって思うとワタクシ落ち込んでしまいますわよ」

 

 そう、手と顔は洗いましたがそれだけでずっと過ごしていましたのよ、これもあのザルバとか言うヤツがいけないんですわ今度会ったら意味もなくぶっ飛ばしましょう。

 こうして初の依頼は無事に終了しましたわ、その後ワタクシとマウナさんはお風呂屋さんで体を洗った後、宿に戻って休みましたわ。

 

 

 ――翌日

 

 ワタクシ達は元気よくギルドに向かいました。この後あのような出来事があるとも知らずに……

 

「ぐっもーにんぐ、ブレンダさんおはようございますわー」

「お、おはようございます」

 

 ワタクシは挨拶をしながらブレンダさんの所に向かいますわ、しかし何故かワタクシ達が入ってくると一斉に皆がワタクシを見ますわね、なぜでしょう?

 

「マナカさん昨日街中で大暴れしたんですって? ザルバさん達を一人で倒したとか朝から噂になってるんですよ」

 

 ブレンダさんがワタクシに教えてくださいましたわ。理由は昨日の事でしたのね、観衆多かったですからね。

 

「ええ、そうですわよ。ザルバとかいうオッサン達がアルティアさんを強引に誘っていたところを助けただけですわよ」

「な、なるほど。ザルバさん達を一人で倒せるならホーンラットなんか楽勝なのも理解できますね」

「楽勝ですわよ楽勝、では少し掲示板の方で依頼を探してきますわね」

「あ、はい、わかりました」

 

 ザルバとか言う小物の話なんてどうでも良いのでマウナさんと一緒にお仕事探しですわ。

 

 

 さて今日は昨日も依頼にあったソアクーア草の採集ですわよ、場所は街から西に出た森に良く生えてるそうですわ、森は魔物も出るようなので定期的にこの依頼は来るそうですわ。あ、ソアクーア草は薬草の一種でポーションの材料になる植物でした。

 

 ――

 ――――

 

 目的地に着きソアクーア草を探してはや三時間ほど経過しましたわ順調に採集は終わりましたの、途中で何度か大きな蝶々のようなモンスター襲ってきましたがワタクシ達の敵ではありませんでしたわね。

 

「よし、マナカさん。そろそろ街に戻りましょう。依頼分は十分に回収出来ました」

「了解ですわ」

 

 こうしてワタクシ達の二回目の依頼は何事もなく終わりましたので、ギルドに報告しに戻りますわ。今回は下水ではないので臭いが気にならないのは良い事ですわね、

 ワタクシとマウナさんはブレンダさんに報告するためにカウンターへと向かいます。すると。

 

「あ、マナカさんにマウナさん丁度良い所に戻ってきてくれました」

 

 ブレンダさんの方から声をかけてきました。何かあったのでしょうか? ザルバの野郎が仕返しに来たのでしょうか? それならそれで返り討ちですけどね、と考えてる間にマウナさんがブレンダさんに話しかけていました。

 

「何かあったんですか?」

「そうなんですよ、マウナさんとマナカさんのパーティーメンバー募集の紙を見て是非仲間にという方が来ましたよ」

「そうですか! 良かったです」

「ふふ、あの紙を見たという事はどんな可愛らしいまたは綺麗な方が来たのでしょうか?」

 

 ワタクシの発言を聞いてブレンダさんは目をそらしましたわ、どゆことですの?

 ブレンダさんの話ですと最近は活動して無かったが当時は結構有名な方だそうですわね、すでにカフェの方で待っているようですので手早く依頼報告をして報酬を頂きますわ、報酬の確認もマウナさんが素早く終わらせましたわ。

 

「よし、問題ありません。ではマナカさん仲間になりたいという方に会いに行きましょう、どんな方でしょうか楽しみです」

「前衛担当だったらしいですから女騎士とかですわね、うふふ楽しみですわ」

 

 ブレンダさんはどんな人かまでは教えてくれませんでした、会ってからのお楽しみとか。カフェエリアのカウンター側の一番右隅の席にいるそうですわー。

 ワタクシのハーレムパーティーが完成に一歩近づきましたわね、ではその席に向かうとしましょう。

 

 

 

 

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