第十話 下水道のネズミーパークとお約束

 

 

 ギルドで依頼を受けたワタクシたちは準備をしてから目的地に向かいます。念のためにポーションを購入、ローポーションという一番安いポーションですわね。飲んで良しケガに振りかけても良しと使い勝手は良いですわ、一個一五〇リシェ!

 ちょっと高いですわよね、他にもランタンやロープ、ナイフ等必要なアイテムも買いましたわ。

 荷物は魔王城で拝借してきた重量を半分にする魔法の袋に入れて持ち歩いてますわ、ビバ便利アイテム!

 

 街の北側の門を抜け約十分ほど行くと下水道に到着しました。

 下水道の入り口にいる兵士に冒険者カードと依頼証明書を見せ、ここのネズミどもを駆逐しに来たと伝えたら門をあけてくれましたわ。

 

 

 下水道は思ったよりは綺麗ですがやはり下水道、あくまで思ったよりといった程度。正直素直にいいまして。

 

「くっさー! わかっていましたけど臭いですわ」

「さっさと退治して戻りましょう、臭いが移ったら嫌ですしね」

 

 下水道には魔法による光をともした電球のような石が壁には一定間隔で設置されており、思ったよりは明るいのが救いですわね。

 ホーンラットの集団は約二十匹の集団で入り口付近に巣を作ってるそうですわね、鼻と口を三角巾で覆ってマスクのようにして入り口付近を散策しますのよ。

 

「む? これは糞ですね、マナカさんこっちに糞がありますよ」

 

 マウナさんがUNKウ〇コを見つけたようですわね、ワタクシはマウナさんの方に向かいました。

 

「ここにある糞はまだ新しいようですね、そうなるとこの付近にいる可能性は大きいですよ」

「なるほど、他にも何かあればいいのですが、例えば食べ残しとかですわね」

「この付近をもう少し探してみましょう」

 

 そう言ってワタクシ達はUNKウ〇コの付近を探し出しましたわ、するとすぐ近くの壁に大きな穴を発見しました。

 

「おや? この穴大きいですわね、子供ならかがんでいけば入れる大きさですわね」

 

 私の声を聴いてマウナさんがワタクシの方に来きて、穴の方を見ると。

 

「当たりかもしれません、ここが巣かもしれませんよ」

「案外楽に見つかりましたわね、実はワタクシ臭くてそろそろ限界ですのよ」

 

 ワタクシお嬢様ですもの仕方ないですわよね? マウナさんがワタクシの前にでてかがむと穴の中を覗き込みます。その後、顔だけを穴に入れて少し確認すると穴から顔を抜いて。

 

「ビンゴですね、穴の中に食べ残しがありました、ここが巣と見ていいと思います。ただ中にはいないので今は食事の確保に出てると思います」

「マウナさんモンスターに詳しいのですね」

 

「あ、そこはホラ私一応魔王なんで、そこそこモンスターの事は調べてるんですよ。ホーンラットは集団で狩りをするモンスターなのです、私たちからすると脅威ではないですけど、空腹時は人間や亜人にでも集団で襲い掛かってくる凶暴性もあるので普通の人達には脅威となる魔物ですね」

「なるほど」

 

 マウナさんがモンスターに詳しくて助かりますわね、よく考えたらワタクシこの世界のモンスターのことなど全くしりませんもの。

 巣は見つかったがターゲットがいないとなるとどうしたものか考えてしまいますわね。

 

「この場合どうしたらいいのかしら?」

「そうですね、ホーンラットはよほど空腹でもない限りは巣からそこまで遠くには狩りには行かないと思います、なので少し待てば戻ってくると思いますよ」

「そうするとここで待ってる方が確実という事ですわね」

「そうなります」

 

 なんですとー! この臭い中でいつ戻ってくるか分からないネズ公を待つなんて、冒険者って大変ですわね。

 仕方ないのでマウナさんと二人でネズ公を待ち伏せすることにしました。すると三十分ほど待っていたところ奥から複数の獣の足音がしてきましたわ。

 

「意外に足音大きいですわね」

「群れのリーダーにジャイアントがいるかと思います」

 

 マウナさんがそう言った瞬間に見えてきましたわ。ん? 大きくないですかアレ……先頭を走ってるネズミどう見ても大きさが一メートルくらいはあるのですが? 後ろのネズミも四〇センチから五〇センチぐらいありますわよ。

 

「ジャイアントですか、確かに想像より大きいですわね」

 

 向こうもこちらに気づいたようですわね、目を光らせてこちらを見ていますわね。この集団に出くわしたら普通の女性なら失神しますわよこの光景。

 

「巣に害する者と認識されたようですね、襲ってきますよ」

 

 マウナさんの声にワタクシは戦闘態勢に入りますわ。さあ、ネズ公かかってらっしゃいな。

 

 

 ジャイアントの後ろからまず4匹のホーンラットがワタクシに飛び掛かってきましたわ、攻撃方法はやはりというか角を前に突き出しての突進ですわね、狭い道で横一列に突っ込んでくるホーンラットをワタクシは余裕をもって正面の一匹に対して。

 

「ストーン・バレット!」

 

 石弾で叩き落し、その左にいたホーンラットの横っ面に振り向きざまの右フックを叩きこみ壁に叩きつけますわ。

 左右に避ける事を封じるように道いっぱいに飛び掛かってくるなんて案外賢いですわね、ですが、まずは二匹。

 ワタクシの攻撃を見たホーンラット達が驚いたような感じで一瞬動きが止まったところにワタクシの後ろから。

 

「――ファイア・アロー!」

 

 マウナさんの魔法が最初に突進してきていたホーンラットの残り二匹を炎の矢で撃ちます。

 

「一匹づつは大したことありませんわね、ですが数が多いのは面倒ですわね」

「マナカさん、ネズミを一カ所に集めるかあの集団の動きを止めることは可能ですか? 一気に数を減らします」

「やってみましょう、あの集団に突っ込みますわ場をかき乱すのでそこに魔法をぶち込んでくださいな」

 

 範囲魔法で一網打尽ですわね、ワタクシは体制を低くしつつ一気に後方のネズミ集団に突っ込んでいきますわ、ホーンラット達もまさか突っ込んでくるとは思っていなかったので一瞬反応が遅れていましたわね。

 

「動き止まってますわよ! ――ストンプトゥ!」

 

 遅いですわ! ワタクシはホーンラット達の最後尾の辺りにストンプトゥという石を置くだけの魔法を使い逃げ道を邪魔します、そして近くにいたホーンラットにジャブを叩きこんで動きを止めていきますわ、これくらいの相手ならジャブでも十分にダメージを与えられるようですわね。

 

 ホーンラット達は乱戦によって突進すると味方に当たってしまうのが分かってるようで、動きが鈍くなっていますわね。狙い通りですわ、ですが数匹がワタクシ目掛けて走ってきますわどうやら噛みつき攻撃に切り替えたようですわね。

 走ってくるホーンラットの中で一番前にいるホーンラットを蹴り飛ばし後方のホーンラット達にぶつけてやるとマウナさんが叫びます。

 

「マナカさん魔法準備完了です後ろに飛んでください!!」

 

 ワタクシはその声を聴くとホーンラット達に逃げられないようストーンバレットを唱えつつ後方に飛びます。そしてその瞬間に――

 

「――ダーク・シャワー!!」

 

 黒い雨のようなものがホーンラット達の上から勢いよく降り注ぎます小さいホーンラット達が黒い雨に穿たれて悲鳴を上げています、ですが三匹ほどが運よく範囲の外に逃げジャイアントホーンラットも何とか範囲外に逃げていたようですわね。

 

「数匹範囲外に逃げましたか」

「問題ありませんわ」

 

 ワタクシはすぐさまホーンラット達の中に再度突撃します走ったままホーンラットの一匹を踏みつけてとどめを刺します。

 そして、怒り狂ったジャイアントホーンラットが雄叫びを上げながらワタクシに向かって突進してきますわ。

 

「キシャアァー!」

 

 なかなか素早い突進ですがワタクシには通用しませんわよ、ワタクシは突進してくるジャイアントホーンラットの角を少し身体を捻り避けつつ左手で角を掴みますわ、そしてジャイアントホーンラットのお腹に右手を添えて、角を掴んだ手を下げ添えた右手を上に突き出し壁に背中を叩きつけました。

 

 骨の折れるような嫌な音がするとともにジャイアントホーンラットは沈黙しますわ。そして逃げようとした残り二匹はマウナさんのダーク・バレットが止めを刺していました。

 

「ふう、こんなとこですわね」

「はい、お疲れさまでした」

「余裕でしたわね」

「そうですね、まあジャイアントじゃなければホーンラット単体なら普通の人でも倒せるので」

 

 そう言うとマウナさんがホーンラットの角を叩き折って回収し、ついでに腹の部分にナイフで切れ目を入れて手を突っ込み中をかき回してから小さな赤い宝石のようなものを取り出します。

 

「マウナさん何をやってますの?」

 

 二匹目、三匹目と同じことを繰り返してるのを見てると……気分が悪くなってきましたわ

 

「マウナさん……うっ、し失礼しますわ……」

 

 ワタクシ急いで少し離れた場所に移動して……モザイク処理モンのリバースをきめましたわ、平和な日本で生きていたJKにはキツイ光景ですわねコレ。

 ここが下水で良かったと思いましたわ。

 そして、マウナさんが最後にホーンラット達の死体を燃やしていました、全ての作業を終えてもどってきました。

 

「マナカさん大丈夫です?」

「ええ、大丈夫ですわ」

 

 マウナさんは手を拭いてから回収した物を袋に入れましております。

 

「角はギルドに証拠品として提出します、あとこの宝石のようなものはモンスターの核ですね色々な物の材料になるんで店で売れると思いますよ」

「な、なるほど。ワタクシ冒険者甘く見てましたわ」

「まあ、追々と慣れていきましょうよ」

 

 さて、これで依頼達成ですわね、さっさと地上に戻りましょう。

 ワタクシ達は門にいた兵士に依頼の達成を伝えギルドに報告しに街に戻りますわ。

 

 

 ――

 ――――

 

 

 街に戻ってきましたわよー、シャバの空気は最高だぜ。

 さっさと報告してお風呂に行きたいですわー、と思っていますと広場の辺りが騒がしいですわね。なんですの? ガヤガヤと騒がしいですわね。

 

「やだ、やめてください!」

 

 おや? 女性の嫌がる声ですわね、オッサンの声なら無視するところですが女性となれば話は違いますわよ。ということでワタクシも見に行きますわ。

 

「マウナさん女性が襲われてるようですわ、助けに行きますわよ」

「あ、はい。わかりました」

 

 ワタクシとマウナさんは人の輪をかき分けていきますと。……なんとお約束!

 冒険者風のオッサン4人組が眼鏡をかけた白いローブの女性を強引にナンパしてますわね、女性の方は……赤い髪を三つ編みにしている可愛らしい顔の女性ですわねローブで分かりにくいですが割とグラマー体型ですわよマナカアイは誤魔化せませんのよ。

 

「そんなに嫌がるなよ傷付くじゃねぇかよ。俺たちと固定パーティーでも組もうぜって誘ってるだけじゃないか」

「ぃ、ぃゃ……離してください、今回の依頼だけのはずです」

「俺たち相性良いと思うんだがなぁ」

 

 なんですの? こういう輩って絶対に存在しますわよね。

 

「周りの方は助けようとしませんね」

 

 マウナさんも同じことを思ったのかワタクシに話しかけますわ、マウナさんの質問にワタクシの隣にいた若い冒険者風の男が答えてくれました。

 

「そう言うなって、助けたいんだがアイツ等ああ見えて四等級冒険者の『 灰色の虎グレイタイガー』ってパーティーなんだよ、近々三等級になるって話だ」

「こ、この街の実力者だという事ですか?」

「ああ、横暴な奴らだが実力は確かなんで下手に手が出せないんだよ、しかも妨害や嫌がらせもしてくるから街の嫌われ者なのさ」

「で、でもそんな横暴だと冒険者ギルドが罰しないんですか?」

「奴ら不正を隠すのも得意でね、なまじ実力があって依頼達成率も高いからギルドも扱いに困ってるみたいなんだよ」

 

 さっきから絡んでるオッサンがついには女性の腕を強引に引いて抱き寄せますわ。マウナさんが冒険者に話を聞いてますが周りの人たちはどうしようと見てるばかり、冒険者風の人も多いというのに情けないですわね。

 

「おっと、どうしたんだ? 俺に寄りかかってきて。知ってるんだぜ、アンタ人見知りなんだろ? そのためにずっとソロでやっててたまに臨時で他のパーティーにお世話になってるんだろ?」

「嫌、やめてください」

 

 オッサン以外のオッサンメンバー達が下卑た笑い声を上げていますわ。そしてローブを来た魔法使い風の男が女性を抱き止めてるオッサンと女性に声を掛けましたわ。

 

「げひゃひゃ、じゃあ俺たちと仲良くして人見知りも治そうぜ。なあ、ザルバ良いと思わないか?」

 

 女性を抱き止めてセクハラしてるのがザルバと言うのですね。

 

「そいつは良い考えだぜ、どうだい? 人見知りも治せるし俺たちとよろしくやってりゃランクも上がるぜ、良いことずくめだろ?」

 

 ザルバがニヤニヤ笑いながら女性に声を掛けてまいます、女性はもう恐怖でガチガチ震えてるだけですわ。相変わらず周りはガヤガヤと騒ぐだけですわね。仕方ありませんわね、ワタクシが直々にあの息の臭そうな連中をぶっ飛ばしてやりましょう。

 

「まったく、周りも見てるだけなんて情けないですわね」

 

 ワタクシは女性の方に向かって歩いていきますわ。

 

「そこの小汚いオヤジ、その方から離れなさいな! 女性への狼藉はこの久那伎真奈香が許しませんわよ」

 

 ワタクシの登場で周りがざわつきましたわね、マウナさんまでアワアワしてますわ。灰色の虎の連中が一斉にワタクシの方を向きます。

 

「なんだい? お嬢ちゃんも仲間に入りたいのかい?」

 

 ローブの男がワタクシの方に歩いてきますわ、そして右手を広げワタクシの左肩を触ろうとしてきました。

 ワタクシは左手でローブの男の小指を掴むと容赦なくへし折ってやりましたわ。

 

「うぎゃあああ!!」

 

 男が悲鳴を上げた瞬間に顔面に右のストレートを入れて黙らせてやりましたわ、男は吹っ飛び動かなくなりました気絶したようですわね。

 ローブの男が吹っ飛ばされたのを見て、ローブの男と一緒に笑ってた盗賊風の二人がナイフを抜きましたわ。

 

「おい! テメェ何しやがる女だからって容赦しねぇぞ」

「一人の女性によってたかって情けなくありませんの?」

 

 ワタクシがそう言うと、ナイフを持った男のうち一人がナイフで突きを繰り出してきましたわ、ワタクシはナイフを交わすと交わしざまに男の腹に膝蹴りを叩きこみ延髄辺りに肘を落とします、攻撃を受けた男は呻くとその場に倒れましたわ、これで二人目。

 

 ザルバも状況を見て女性を突き飛ばし剣を抜きましたわ、女性の方にマウナさんが駆け寄っていきます。

 さてザルバの剣は細身の刀身の針のような剣ですわ、エストックの中でも片手用に作られたクリシュマルドという種類の剣ですわね。

 

「お嬢さん随分とヤンチャしてくれたな、いくら女と言えここまでされたら黙ってられねぇな」

 

 ザルバが構えますわ。そして残った一人の盗賊風の男がワタクシの右手側に移動しました、ワタクシをL字状に挟むかたちですわね、挟み撃ちではなくL字と言うのが嫌らしいですわね。

 

 ザルバがまず突きを打ち込んできましたわ、ワタクシはそれを身体を右に捻って避けますがそこで横にいる盗賊風の男がナイフを両手に持って突進してきました。

 捻った体制のまま盗賊風の男の顔に右のストレートをカウンター気味に置いておきます、腰の入ってないパンチですが男の突進力が加わり良い音がしましたわ、カウンターを食らってよろめいた所の横っ面に回し蹴りを決めて三人目が沈黙っと。

 

 ザルバの方は突きを避けられた瞬間に後ろにステップして距離を取っています、盗賊風の男が倒れたのを見ると距離を詰めてきて連続して突きを放ってきますわ、判断が早いですわね、こちらは蹴りの体制を立て直した瞬間で突きは交わせそうにもありませんわね、仕方がないのでとっておきですわよ。

 

「調子に乗りやがって! この速い突きが避けれるか!!」

 

 三連続の突きですがワタクシはその突き全部を拳ではたき落してやりました、周りのギャラリーから歓声が起こってますわね。

 突きをはたき落されたザルバはまた後ろにステップして距離を取ろうとしましたが、ワタクシはそれを許しません。

 ワタクシは左足を前に出しザルバのステップしようとした足を踏みつけてやりましたわ、驚いた顔をしてるザルバにワタクシは容赦ない右のストレートを顔面に叩き込みましたわ。

 足を踏まれてるので力が逃げることなくザルバに襲い掛かり、ザルバはたまらずその場に倒れました。

 

「女性を困らせるような下種は成敗しますわ」

 

 そう言って手をパンパンと払いましたわ、すると周りから大きな歓声が上がっております。

 

「すげー、あの嬢ちゃん一人で灰色の虎グレイタイガーの連中をやりやがった」「なんだよあの突きを叩き落した動きわけわかんねぇ!」

 

 ワタクシが皆さんの視線をくぎ付けですわね、ワタクシって罪な女。

 

 

 「あら、あの娘面白いわねぇ」歓声の中からそんな言葉が聞こえたような気がしましたわ。

 

 

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