第八話 ワタクシ達の冒険はこれからだ!!
どうやらこの門から正面の通りは店や露店が並ぶ商業区画のようですわね、買い物客で賑わっていますわ。
食べ物を売る露店やアクセサリーを売る露店、武器屋に道具屋と並んでいますわね、街並みは中世時代のイタリアのような感じですわね、馬ばかりじゃなく何か大きな芋虫や恐竜のような爬虫類が荷車を引いてたりしてる辺りがファンタジーですわね。
「す、凄い。なんて賑やかな街なんでしょう。これで王都じゃないんですよね」
「賑やかではありますね、しかしワタクシの世界の大都市はこれの五十倍以上の人がいますわよ。風情の欠片もありませんが」
「これの五十倍! 想像できませんね」
凄くキラキラした目で聞いてるマウナさんを見てると、ただ単にごちゃごちゃしてるだけなんですけどね、とは言えませんわね。
そんな会話をしながら歩いていると……く! なんですのこの炭火焼きの良い香りは……これは焼き鳥ですわね? 小腹が空いてきてる時に何て卑怯な……
「マナカさんどうかしました?」
ワタクシが焼き鳥による臭撃を受け、その香りによる香撃で胃袋がダメージを受けてると、マウナさんが不思議そうな顔で尋ねてきました。
「いえ、露店から良い香りがしましてね、小腹が空いたなとはしたなく思っていたのですわ」
「確かに良い臭いですね、私も少しお腹がすきましたし買っていきますか?」
「賛成ですわ」
ワタクシ達は誘惑に負けて焼き鳥の露店に向かいましたわ。
「らっしゃい、一本一〇リシェだよどうだい? コケクックのもも肉をシンプルに塩だけで焼いた串だぜ」
オッサンが威勢よく出迎えてくれましたわ、コケクックって何ですの? もろ鶏っぽい名前じゃないですの。って、そんなことはどうでも良いからさっさと買いましょう。
「オジさま、なかなか卑怯な香りですわね。ワタクシの胃袋にクリティカルヒットしましたわ」
「そいつはどうも、可愛いお嬢さん方」
「わ、私が可愛いだなんて……」
「あら、超可愛いだなんて、当然ですわ」
「お、おぅ……」
屋台のオヤジも当たり前のことを言いますわ、ワタクシもそうですがマウナさんも驚くほど可愛いですもの。
マウナさんが財布という名前の袋から白銅貨を二枚出しましたわ。
「す、すいません、二本ください」
「毎度、お嬢さん方はこの街は初めてかい?」
「は、はい、今日初めて来ました」
「そうかいそうかい、お嬢さん方は可愛いし初めて来た記念だ二本で一〇リシェにオマケだ」
そういうとオヤジは白銅貨を一枚だけ受け取って串を渡してくださいましたわ。
それにしてもマウナさん、ワタクシや城の人以外には人見知りするのですね。
「あら、いいんですの? 感謝いたしますわ」
「あ、ありがとうございます」
「いいって、記念だからな、これからも御贔屓にしてくれよ」
「ええ、小腹がすいたらまた寄らせていただきますわ」
「おう! そうしてくれ」
「それではワタクシ達は行きますわ、ごきげんよう」
「おう、またの来店お待ちしてますぜ」
オヤジに挨拶をしてワタクシ達は串を頂きながらギルドに向かいますわ。
あら、この串とてもジューシーなお肉で塩だけというシンプルな味付けが良く合いますわね、サイズも中々ですし一〇リシェならお手頃ですわね、ワタクシはお嬢様でもジャンクフードも大好きですのよ。
「露店のおじさんも元気で良さそうな街ですね」
「ええ、ワタクシ達も良い街を造っていかないといかないといけませんのよ」
「そうですね」
さて、審査官のオッサンに言われた通りに進むと『冒険者ギルド、コルリス支部』と書かれた看板の建物が出てきましたわ、結構な大きさの木造の建物ですわね。
ふふ、さあここが目的地ですわ!
ワタクシ達はギルドの入り口ドア前に立つとマウナさんがポツリと。
「ここが冒険者ギルド……」
「ええ、ワタクシ達が冒険者になる第一歩を踏み出す舞台ですわ」
「そうですね、ではマナカさん行きましょう」
ワタクシはギルドのドアを開けて建物内に入っていきますわ、マウナさんも後を付いてきます。
入口を入ってすぐは、カフェにもなっているのか木製の丸いテーブルと椅子が何個か置いてありますわね、ここで冒険者が集まるために時間つぶしに使ったりするのですわね。
そしてその奥にカウンターが二つありますわね、右のカウンターには喫茶店のマスターのようなオッサンと給仕の娘が二人いますわ。
左のカウンターに受付と書かれていますのであっちが冒険者ギルドの受付のようですわね、カウンターには三人の職員が座ってますわね、壁際には掲示板がありそこに依頼の紙が貼ってあるようですわね。
「どうやら奥の左側のカウンターが受付のようですわね」
ワタクシは奥にある受付カウンターに向かいますわ。そしてハニーブロンドの美人の方の受付嬢の前に並びますわ。
「マナカさんって迷いなく女の人の所に行きますよね」
「それはワタクシが久那伎真奈香ですから」
「ちょっと意味がわからないです」
「ふふ」
こうしてるとワタクシ達の番になりました。
「本日はどういったご用件でしょうか?」
「冒険者になりたくて来ましたの、ここで登録の方はできますの?」
「冒険者の登録ですね、こちらで大丈夫ですよ」
「では、お願いしますわ」
「かしこまりました、お名前をお伺いします」
「マナカ・クナギですわ」
「では担当の者を呼びますので少々お待ちください」
市役所みたいですわね、事務的な事なんて世界が変わろうが大差ありませんわね。
「あー、少し緊張してきました……」
「もう緊張してますの?」
「え、えぇ恥ずかしながら……そうだ試験とかあるんでしょうかね?」
「どうなんでしょう?」
マウナさんは魔王なのに小心者ですわね。
そう思っていると奥から、大柄で厳つい顔した五十代くらいのハゲオヤジが来ましたわ、見た感じからして元名うての冒険者って感じですわね。ハゲオヤジがワタクシの所に来ると。
「マナカさんはアンンタかい?」
「ええ、ワタクシがマナカですわ」
ハゲオヤジは頷くと自己紹介をしましたわ。
「俺はこの支店のギルドマスターで『ガリアス・バーステン』という。本当なら別の登録担当官がいるんだが生憎今日は休みでな、臨時で俺が担当することになったよろしくな」
「ガリアスさんですわね、よろしくお願いしますわ」
「わ、私はマウナと言います、ガリアスさんよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ。しかし、若いお嬢さんがよく冒険者になろうと思ったな」
「ふふ、それは冒険者が浪漫だからに決まってますわ」
「そ、そうかい。まあ、いいやそれじゃあ奥の部屋に来てくれ」
ハゲオヤジことギルドマスターのガリアスさんに付いていきますわ、付いていった先は質素な作りの部屋でしたわ。
ガリアスさんに進められてワタクシ達は椅子に座りますわ、ワタクシ達が座った後にガイアスさんも椅子に座ります、ガリアスさんは数枚の資料と書類をテーブルに置きます。
「おっし、そんじゃよろしく頼むぜ」
「よろしくお願いしますわ」
「よ、よろしくおねがいしまっひゅ――っ痛! ひたかみまひた……」
「大丈夫ですの?」
マウナさんガッチガチに緊張してますわね。
「大丈夫か? 説明事項と書類の記入だけで登録は出来るから緊張はしなくていいぞ」
「すいません……」
ガリアスさんも苦笑いを浮かべながら応対してますわね。
「さてと、それじゃあ冒険者ギルドについて説明をしようと思うが説明は必要か? ベテランの冒険者が仲間にいるならいいが、そうじゃないなら聞いといたほうがいいぞ」
ふふ、当然二人しかいませんわね。
「私たちだけですし聞いておいた方がいいですよね?」
「そうですわね、お願いできますか」
「わかった、少し時間がかかるからお茶を用意しよう」
そう言うとガリアスさんが他の職員にお茶を用意してもらうように頼みましたわ、少ししてお茶が運ばれてきます。
「安い茶だが我慢してくれ。では、まず何から説明するかな」
「そうですね、まずはギルドについて聞きたいです」
「よし、わかった」
ガリアスさんはそう言うとギルドについて説明をはじめました。
「まず冒険者ギルドと言うのは冒険者に依頼を斡旋するのがメインの仕事だ、後は冒険者の管理もしている、管理と言うのは冒険者である証の冒険者カードの発行等が仕事になるな、他にもパーティーの登録もあるな」
「冒険者カードですかそのカードは通行証の代わりにもなるんですか?」
ガリアスさんとマウナさんの会話をワタクシは黙って聞いていますわ、マウナさんにも人付き合いに慣れてもらわないと。
「ああ、コイツがそのカードだ」
ガリアスさんが実物を見せてくれます。
「コイツが冒険者ギルドに登録しているという証拠になる、大抵の街での通行証の代わりになる、あとはその冒険者のランクの証明にもなる貴重な物だ、失くすと大変な事になるし再発行には追加料金がかかるから注意だ」
「自動車免許みたいですわね」
「自動車免許が何か分からんが重要な物だと覚えてくれればいい」
身分証と通行証の代わりになるのが一番重要ですわね。
「次は冒険者のランクについてだがいいかな?」
「はい、構いません」
「よし、まず冒険者にはランク付けをしていてな、なるべくランクにみあった依頼を斡旋している」
話が長いのでワタクシが聞いた事を簡単にまとめておきますわね。
冒険者は一等級から八等級までの八つのランクがあり基本的にはランクにあった依頼しか受けれないとの事、基本的という事は例外も有り、ベテラン冒険者がパーティー内にいると上のランクの依頼も受けれるようですわ。
ランクは八等級が一番下のランクで一等級が最高ランクですわね、ただ一等級は英雄的活躍をした人物またはパーティーにのみ与えられる一種の名誉ランクだそうですわ。
冒険者ランクは昇格試験を合格すると上がるようですわね、試験に挑戦する条件は依頼の達成率やギルドへの貢献度で決まるそうですわ。
依頼にもFからSSランクの八つがあるのでこのランクを照らし合わせて斡旋するようですわね、依頼のランク表示も数字にすればいいのにねぇ。
パーティーでの登録も扱ってるそうですわ、二人以上でパーティー名を登録しておけば、パーティー名が有名になって来たとき個人的な客が付くこともあるそうですわ、ギルドはその仲介もやってるそうですわ。
後はギルド禁止事項に抵触した場合は冒険者の資格剥奪等の罰があるそうですわ、当然ですわね。
ワタクシ達がまず行うべきは冒険者ランクを上げることですわね。
とりあえず今のところはこんなものでいいでしょう。
「よし、取り敢えずこんなところだな、後はこの書類に必要事項を記入してくれればオーケーだ」
こうして必要事項を記入したあと冒険者カードを受けとることができましたわ。
部屋から出てロビーに戻って来ましたわ、そこそこ時間が経っていたようですわね、受け付け終了三十分前の札が立っており砂時計で終了をお知らせしてますわね。
「マナカさん続きは明日にして宿を探しませんか?」
「一緒の部屋でベッドは一つですの?」
「え? いや、部屋は一緒でもベッドは分けましょうよ」
「そうですわね……」
夜のスキンシップをしようと思いましたのにグスン……ですわ。
気を取り直して宿の事をギルドの職員に聞いてみましょう。
おや? あのハニーブロンドの綺麗な職員さんいなくなってますわね、残念。
代わりにいる職員はボサボサで茶色のような金髪のような変な色合いの髪の職員ですわ、ネイルをやたらデコりながら気だるそうに座ってますわね、一世代前のコギャルみたいな職員ですわね。
マウナさんが頑張ってその職員に話しかけますわ、マウナファイト!
「あ、あのすいません」
「……」
おや? 聞こえてませんのかしら? マウナさん少し声が小さいですものね。
今度はワタクシが話しかけますわ
「恐れ入りますが、よろしくって?」
「…………」
コギャル職員はネイルをデコってて返事をしませんわね、ガン無視とは良い度胸ですわね
ワタクシはコギャル職員の耳元で大声で話しかけますわ
「少々よろしくって!」
「――ぎゃー!!」
汚い悲鳴ですわねぇ、ぶっ飛ばしますわよ。
「なに? なんなのー」
「アナタ、なに無視きめてるんですの?」
コギャル職員は面倒くさそうにワタクシ達の方を向きますわ。
「あーし、ネイルデコってるの見てわからないー? 話しかけないでほしいんですけどー」
それだけ言うとまた横を向いてネイルをデコりだしましたわ。なんですのこのアホ、ここのギルドは何でこんなヤツを雇ってるのかしら? うちの会社なら五秒でクビですわよ。
「マナカさん、この人なんなんです?」
「ただのバカですわね、ぶっ飛ばしましょうか?」
そう言ってると奥からガリアスさんが出てきました。
「ったく、何ださっきの大声は」
「ちょっと! ガリアスさんこの職員の教育がなってませんわよ」
「そうですよ! ずっと爪を弄っててこっちを無視するんですよ」
ガリアスさんはまたコイツかーって顔して職員を見たあと、溜息をついてコギャルに一喝!
「おいこら! ジュリ!! テメーまた、お客無視して遊んでんな!」
コギャル職員はビックリしてガリアスさんの方を見て青ざめていますわ。
「げぇ……ハゲオヤジ、なんでまだいるのよー」
「誰がハゲだコラ!」
お前だよと心の中で突っ込んでおきましょう。
「すまないなお嬢さん方コイツはどうも不真面目でいけない、再教育しとくから許してやってくれ。ジュリ、テメェ後で覚悟しとけよ」
「そ、そんなぁ……」
ジュリと呼ばれたコギャル職員はすでに涙目ですわね、いい気味ですわ、おっとそうそう目的を忘れるところでしたわ。
「そうですわ、聞きたいことがあったのにこの職員のせいで忘れるところでしたわ」
「ん? 聞きたいこと?」
「ええ、この辺りにお手頃価格で泊まれる宿はありませんかしら?」
ガリアスさんは少し考えた後。
「ああ、それならこの建物を出たら左に少し行って一つ目の角を曲がった直ぐのところに『熊の干物亭』って酒場兼宿屋がある値段の割にはメシも美味い所だからそこに行ってみな」
「熊の干物亭ですわね、ありがとうございます」
熊の干物亭なんか凄い名前の店ですわね、とりあえずそこに行ってみましょう。
「では、ワタクシ達は失礼しますわ」
「あ、ありがとうございました」
「おう、気をつけてな」
こうしてワタクシ達はギルドを出て宿に向かうことにしましたわ。
「うぎゃー! ご、ごめんなさいー!」
また汚い悲鳴が聞こえますわね、無視して宿にいきましょう。
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