第六話 準備開始ですわ
ワタクシは体制を低くして二体並ぶウッドゴーレムのうち左のウッドゴーレムとの距離を一気に詰めますの、体が軽く感じてたのは気のせいでもなく自分でも驚くほどの速いステップですわ。
ワタクシはウッドゴーレムの顔面に向かって左の拳を横面に叩きつけますわ、この一撃で一体目のゴーレムが膝をつき沈黙しました、そのまますぐ横にいたウッドゴーレムに向き直りゴーレムが拳を振り上げるより早く胸のあたりに右のストレートを打ち込みましたわ、そして右のウッドゴーレムもニメートルほど吹き飛んで沈黙、自分でも驚きのパワーですわねこれ。
「ざっと、こんなもんですわね」
ワタクシは拳を広げ両手をプラプラと振りながらマウナさん達の方に向かって歩いていきますわ。そして倒れてる二体のウッドゴーレムを見て。
「凄い……」
マウナさんが呟き、少し驚いた表情ののサティさん、表情変わるの初めて見ましたわ。
「クナギ様、これは武器はいらな気がするのですが?」
「剣と魔法のファンタジーがしたかったんですのよ、これじゃあ拳と魔法のファンタジーになってしまうじゃないですの」
サティさんが呆れた感じでワタクシに言うのでワタクシ的理由を語っておきましたわ。
とはいえ確かに武器戦闘のセンスが割と壊滅的なワタクシとしては、やはり素手での戦闘がお似合いという事になりますわね、悲しいけど現実は受け入れ違う道を模索するのがワタクシの良い所ですわ、要するに素手で殴る事にしますのよ、想像以上にパワーもスピードも有りますし。
そしてモルテさんの話ではワタクシ凄く素質は高いようなのでトレーニングを続ければさらに強くなれるそうですわ。モンスター倒して経験値貯めてレベルアップならどれだけ楽な事か……地道に修行するしかありませんわね。
「しかしマナカさんの動きは凄かったです、あのような格闘スタイルは見たことがありません」
「私もですマウナ様、素手での戦闘というだけでも珍しいのにあのスタイルは見たことがありません。クナギ様は元の世界でも戦闘経験がおありなのですか?」
どうやら異世界人の中でもボクシングスタイルで戦う人はいなかったようですわね。
「ボクシングは美容と健康のためにやっていましたわ、ですがトレーニングは実戦想定でやってましたわね、まあ実戦で使ったことは有りませんわ、柔道の方ならば試合という形でなら戦闘経験はありますわね」
「ボクシングにジュードーですか聞いたことない格闘技ですね」
「元の世界で鍛えていたのですね、元の世界でも身体能力が高い方はこちらにきた時の身体能力の基本値がとても高いようですね」
「努力のたまものですわね、他にも何か色々とやってましたから。まさか異世界に来て役に立つとは思いませんでしたわね」
これで魔法に関してと自分の身体能力については確認が出来ましたわ。
後はおいおいギフトの事も調べないといけませんわね。ギフトに関しては固有能力という事で自分で気付くしかないそうですわ。
「何だかんだで割といい時間になりましたわね。これである程度この世界に来てからの自分の事を把握できましたわ」
「ホッホ、それはようございました」
「ええ、御三方のご協力感謝しますわ」
ワタクシは協力してくれた三人にお礼を言います。
「明日から本格的な準備にかかるということでいいですか?」
マウナさんの提案にワタクシもモルテさんも頷きますわ、サティさんは後方で佇んでおりましたわ、明日から本格的に準備開始ですわ。
小説の主人公ならば異世界にきても比較的にすぐ馴染んでしまうパターンが多いのですけど、そこまで上手くいかないのが現実ですわね、ワタクシは一ヶ月で色々と下準備をおこないますわよ。
文字の読み書き、お金の価値等を入念に調べ覚えておきますわ、ただ問題はこの国はマウナさんの言ったように閉鎖的だったためか世間と微妙にずれているようですわね。
人間のお金の価値観はこの国では疎い人が多く勉強するにはとても困りましたわ、運よく人が多い街で傭兵をやっていた獣人がいたのでその方に教えていただきましたわ。
マウナさんの方もマウナさんがいない間の方針をモルテさんや今も魔王領に残っていてかつ信頼を置ける家臣たちと話し合いをしているようですわ。
そんなこんなで半月が経過しました。
「――ストーン・バレット!」
ワタクシは魔法の練習をしていましたわ。魔法名を唱え手を前に突き出すとゴルフボール大の石が勢いよく飛んでいき的に命中、石が的に当たると的が弾け飛びましたわ。
それを見ていたサティさんが拍手をしながら言いました。
「全くの初めてから半月で初級魔法とはいえ、ここまで扱えるようになるとは大したものです」
サティさんがワタクシを褒めてくださいますわ、ワタクシ自分で言うのもなんですが案外優秀なんですのよ。
サティさんが教えるのが上手なのもあってか、ワタクシは初級の地属性魔法を大抵扱えるようになっていましたわ
「クナギ様はこのまま一ヶ月もすれば適正も高いので初級魔法の応用を覚えることもできるかもしれませんね」
「応用ですか?」
「はい」
とサティさんは頷く。
「例えばですが先ほどのストーン・バレットですが、普通は先ほどのサイズの石を撃ちだす魔法ですが、応用を利かせれば石のサイズを小さくして弾速を上げることもできます。メリットとデメリットも存在しますが覚えておくと良いと思います」
「なるほど、確かに覚える価値はありますわね」
等とサティさんと話しているとモルテさんがやってきまた。
「もう、応用を覚えようとしているのですか? クナギ様の成長は想像以上ですな」
「モルテ様のおっしゃる通り、クナギ様にお教えするのが私も楽しく思います」
モルテさんもワタクシの成長に驚いておりますわ、サティさんも教えるのが楽しいと無表情でおっしゃいます。サティさん表情あまり変わらないんですもの。
「さて、クナギ様そろそろ休憩されてはどうですかな? この後は読み書きの勉強ですぞ」
「あら? もうそんな時間ですの」
随分と時間が経ってたようですわね、ワタクシはモルテさんに言われた通りサティさんにお礼を言って休憩に入りますわ、文字も大分読めるようになってきましたのよ、書く方はもう少し時間をくださいとしか言えませんけど。
こうしてなんだかんだで一ヶ月が経ちましたわ。
ワタクシは初級の地属性魔法を殆ど修め、ある程度の応用まで出来るほどになりましたわ。普通はここまで来るのに三か月から半年はかかるとの事でしたわ、ワタクシ凄い。
読み書きの方もスラスラとまではいかないけど最低限の読み書きは出来るようになりましたわね。
身体の方も一ヶ月できちんと仕上げておりますのでいつでも戦闘可能ですわよ。
一ヶ月での他の勉強の成果として、名も知らぬ獣人傭兵に教えていただいたお金のことですが簡単にメモしておきますわね。
お金の単位は『リシェ』ですわね、これは万共通とのことですわねユーロみたいな感じですわね。
一応その国特有の通貨もあるようですが基本的にリシェで取引されることが多いそうですわ、リシェはこの世界にある商人ギルドという世界規模の組織が取引の際の公平性のために広めた通貨ですって。
通貨の共用は良いのか悪いのかは置いときますが覚えやすくワタクシ的には助かりますわね。
一リシェは日本円で一〇円くらい
コッペパン一個が約八リシェ
一般的な月の給料平均一万五千リシェ
平均的な安宿で食事なし、お一人様一泊で一五〇リシェ
銅貨一枚=一リシェ
白銅貨一枚=一〇リシェ
大白銅貨一枚=五〇リシェ
銀貨一枚=一〇〇リシェ
大銀貨一枚=五〇〇リシェ
金貨一枚=五千リシェ
白金貨一枚=十万リシェ
との事ですわ、割と日本の物価に近いですわね。白銅ってもろ一〇〇円玉ですもの。
そしてマウナさんの方もマウナさんがいない時の国の運営方針を決めたらしく準備の方は大体終えていましたわ。
「ふう、この一ヶ月試験勉強かってくらいに忙しかったですわ。ですが、準備は整ったと思いますわ」
「はい、結構早く時間が経った気がします」
ワタクシは地図を広げ目的地をマウナさんと確認する
「いよいよ明日出発ですわ、目的地の確認ですわ『エルハリス王国』の南部にある街『コルリス』という場所ですわね?」
「はい、この国から一番近くで冒険者ギルドのある街はそこになります」
ファーレ魔王領から北にあるエルハリス王国南に位置する街コルリス。
エルハリス王国はこの世界でも最大規模の国だそうですわ、コルリスはエルハリスの首都よりはファーレ魔王領の方が近い位置にあるそうですわ、人口も約二万八千人となかなかの規模の街だそうですわ。
冒険者の持ちこむ素材や冒険者相手の武具道具販売や宿等でにぎわってる街だそうですわ、これから拠点にするには丁度良い街と言えますわね。
「サティ荷物の準備は出来ていますか?」
「問題ありませんマウナ様、マウナ様のお気に入りの白いレースのショーツもバッチリ用意してあります」
んふ? ショーツ!
「しろの、れーすの、しょーつです――っうぼぁ!」
頬を赤らめたマウナさんの諸手突きがワタクシにヒットして吹っ飛ばされましたわー。
流石は魔王ですわ、なかなかのパワーですわね。
「あいたたた」
「マナカさん! 大きな声で復唱しないでください!!」
「んふ、失礼。取り乱してしまいましたわ」
怒られましたわ……反省、んふ。
怒られたところでワタクシも出発前にもう一度持ち物の確認をしないといけませんわね。まあ、持っていくようなものなどありませんけどね。
「明日が待ち遠しいですわね、小学校時代の遠足を思い出しますわー」
「私は不安だらけですよ、まさか国の再建で冒険者をやることになるなんて」
「うふふ、これも勉強ですわよ」
「そうですね、人間の国を勉強して再建にいかせるようにしましょう」
こうして旅立ち前の日は過ぎていきましたわ。
――そして旅立ちの日
ワタクシとマウナさんは城門にてモルテさんと数名の見送りの方と挨拶をしていました。
ついでに御者のおじいさんもおりますわよ、徒歩でなく馬車での移動予定ですわ、ちなみに御者さんも普通の人間ではありませんわよ、犬耳の獣人だそうですわ。
「マウナ様、決して無茶なことはしないでください。貴女がいなくなればそれこそこの国は終わりですからな」
「わかっています、モルテも国の事を頼みましたよ」
「お任せください、マウナ様たちが帰ってくるまで持たせて見せます」
「今生の別れではありませんしワタクシがマウナさんを守って見せますわ」
モルテさんとメイド達がワタクシの方を向きお辞儀をしました。
「クナギ様、なにとぞマウナ様の事をよろしくお願いします」
「メアリー・セレスト号に乗ったつもりでお任せあれ」
「メアリー・セレスト号? よくわかりませんがお任せいたします」
うっ、突っ込み無しで普通に返されてしまいましたわ、仕方ありませんわねワタクシの世界の出来事ですものね……
今度はサティさんがワタクシたちの方に寄って来ましたわ、手には包を持ってますわね、その包を差し出してきました。
「マウナ様、クナギ様。こちらはお弁当になります道中でお食べください」
「サティもありがとう」
「馬車で街まで3日の距離でしたわね。まあ、そこまで遠く無いのが救いですわね」
ワタクシの声に以前風呂場に案内してくださった赤髪に角のついたメイドさんが答えますわ。
「一応注意したほうがいいですよー、今はこの国も治安が悪くなってますし、モンスターも凶暴化してるし盗賊も出ますからね」
「大丈夫じゃ、サーレ嬢ちゃんワシがお二人を無事に目的地までおつれするからな」
そういえば一ヶ月もここにいて赤髪角メイドさんの名前を初めて聞きましたわね。
「そうですね、そこらの野盗なんかに負けるようなバウスじいさんじゃないですよねー『猟犬バウス』と言えば名も知れた戦士ですもんねー」
「はっはっは、そう呼ばれていたのももう随分昔の話じゃよ、今はただの御者じゃよ」
なんか此処に来て二つ名持ちの昔は凄かったんじゃよジイさんの登場ですわね。まあ、良いのですが。
さて、結構時間が経ってしまいましたわねそろそろ行くとしましょう。
「では皆さまそろそろ出発いたしませんか?」
「そうですね、それではバウスも道中よろしくお願いします」
「了解しました、では馬車にお乗りください」
バウスさんの言葉に頷きワタクシとマウナさんは馬車に乗り込みますわ
「それでは、マウナ様、クナギ様。お気をつけて」
最後に皆さまお辞儀をして見送ってくれましたわ。さあ、冒険の旅の始まりですわよ!
こうして馬車はコルリスの街に向かって出発しましたわ。
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