第四話 まずは何をしましょうか?
さてこれである程度の確認はできましたわね。
ワタクシはソファーに背中を埋め言いました。
「とりあえず今の所は確認したいことはこれくらいですわね」
結構な時間が経過したと思いますわ、流石のワタクシも疲れましたわ一日で色々な事がおこりすぎですもの。
「モルテ、食事の準備は?」
「はい、すでに準備させております。もう準備も終わってると思いますぞ」
「そうですか」
マウナさんがワタクシの方を見て微笑みながら言いましたわ。
「マナカさん、今日は遅くなってしまったので食事の方をしたらお休みください。お疲れになられたと思いますので、続きは明日にでも」
「そうですわね、お言葉に甘えさせていただきますわ」
ワタクシとマウナさんはモルテさんの後について食堂に向かいましたわ。
食堂へ向かう道も何か暗い感じがしますわ、魔王城だから仕方ないのかもしれませんわね、国の経営も思わしくないとのことですし、そのうち改築してやりましょう。
「クナギ様、こちらが食堂です」
モルテさんが少し豪華な造りの扉の前で止まる、そのまま扉を開けて入っていくのでワタクシも後をついていきますわ。
思ったより質素な造りの部屋ですわね、ですがテーブルに並んでる料理はなかなか豪勢な作りですわね。
「お口に合えばよろしいんですが」
そう言ってワタクシに料理を進めてきましたのでワタクシはまずスープを一口頂きました。さあ、異世界飯ですわ。
豆のスープですわね緑色の豆ですわ枝豆のような豆ですわね、コンソメスープでしょうか? 少し違う気もしますが案外イケますわねこれ。
「ええ、美味しいですわね」
「良かったです」
安心したマウナさんも食事を開始しましたわ、いつもはここまで豪勢な食事ではないそうです。ワタクシのために用意してくださったとの事でしたのでありがたく頂きました。
そして会話を楽しみつつ食事は終わりを告げました。
「お部屋の用意もしてありますので本日はゆっくりとお休みください」
マウナさんが肌の青白いメイドに話しかけておりますわ、どうやらワタクシを部屋まで案内するように言ってるようですわね、会話が終わるとメイドさんがワタクシの方にやってきましたわ。あら? なかなかの美人さんですわね。
「ではクナギ様、お部屋に案内いたしますのでついてきてください」
「わかりましたわ、それではマウナさんごきげんよう、また明日ですわね」
「はい、お休みなさい」
マウナさんとの挨拶もすませて食堂を後にいたしましたの、メイドさんはお辞儀をするとワタクシが付いてきているのを確認してから歩き出しましたわ。
ワタクシは少し気になったことをメイドさんに尋ねました。
「マウナさんはどんな感じの方ですの?」
メイドさんは少しだけワタクシの方を見、足を止めて少し考えるとこう言いましたわ。
「そうですね、マウナ様はあまり魔王らしくないですね。ですがとてもお優しいお方です、そのためか苦労されてる御方です」
割と無感情にメイドさんはマウナさんの事をそう評価しましたわ。
「それに気弱な方です、実力はおありなのですがその性格のせいで実力を発揮できていないと思います」
「なるほど分かりましたわ、ありがとうございます」
「いえ、こちらがお部屋になります」
部屋についたようですわね、メイドさんは扉を開けてワタクシを部屋に案内してくださいましたわ。
「では何かあればそこのベルでお知らせください、メイドが来ますので何なりとお申し付けください」
「ええ、わかりましたわ」
「それでは失礼いたします」
「はい、おやすみなさい」
メイドさんは一礼してから部屋を出ていきました。
ワタクシは置かれていた寝間着に着替えました、何故かサイズがピッタリでしたわ。
ベッドに腰掛けながら今日の出来事を思い返し。その後、明日以降どうするかを考えながらいつの間にか眠りについていましたわ。
翌朝
「う、昨日はそのまま寝てしまったせいか少し汗臭いですわね……」
淑女にあるまじきことですわ、そこでベルを鳴らしてメイドさんを呼びます。
少ししたらメイドさんがやってきましたわ、今回のメイドさんは昨日の方とは違って赤い髪のショートヘアに頭に羊のような角が付いたメイドさんでしたわ。
「お呼びでしょうか?」
「申し訳ないのですが体が洗いたいのですがお風呂とかはございます?」
ワタクシがそう聞くと、メイドさんは小さいけど浴場があるというのでそこに連れてきてくださいました、この世界はお風呂が一般的ではなく王族や貴族くらいしか浴場をもっていないそうですわ。
一般の方は町にある共同浴場をつかうか、川で体を洗らったりお湯を沸かして拭くのが一般的なようです。
ワタクシ的には耐えられませんわ、この問題は衛生的なものも有り改革が必要ですわね。と考えつつお風呂に入りました、入浴シーンはカットですわよ! 石鹸がこんにゃくみたいにプルプルしてたのが少し気持ち悪かったですわ。
食堂で朝食を頂きつつマウナさんとまずどうするかを話し合いましたわ。
「さて、マウナさんは今からどうしたいか案はありますの?」
「……そうですね、実はどこから手を付けていいものか悩んでいるんです。今まではこの領は閉鎖的でしたのでその辺りもどうにかしたいとは思ってます」
他種族や他国との交流ですわね? ならば丁度いいですわね、ワタクシが突拍子もない提案をしてさしあげますわ。昨日、就寝前に少し考えていたのですけど異世界に来たらアレをやっておかないといけないと思いますのよ。
ですが昨日はこのことを聞いていなかったので確認をしてからの提案になります。
「一つお聞きしてもよろしいかしら? もし、ワタクシの思っているような世界であれば提案がありますの」
「わかりました、聞きたいこととはなんでしょうか?」
「この世界には冒険者と呼ばれる人たちがおりますでしょうか?」
ワタクシの質問にマウナさんの後ろに控えていたモルテさんが答える。
「冒険者ですか? 確か人間族や一部の亜人達の間でそのように呼ばれている何でも屋があるのは存じていますな」
「冒険者はいるのですね?」
「はい、確かギルドとよばれる場所から仕事を斡旋してもらってモンスター退治やアイテム収集などの依頼を受け、仕事をする者たちが冒険者とよばれていますな」
ふふ、あるじゃないですか冒険者! 浪漫ですわね、ならば提案しますわ。
「ならばワタクシから提案がありますわ!!」
勢いよくワタクシが発言するとマウナさんは少しビクっとしましたわ、驚いたのですわね。
「なんでしょうか?」
ワタクシは提案内容を告げます。
「ワタクシとマウナさんで冒険者になるのはどうでしょうか?」
モルテさんもマウナさんもメイドさん達も手を止めてワタクシのほうを見る。
あぁ、ワタクシが皆さんの視線を独り占め、流石ワタクシ罪な女ですわ。
「マナカさんそれは国の再建とどう繋がるのですか?」
驚きの表情でワタクシに質問するマウナさん、ごもっともな意見ですわね。モルテさんもマウナさんの後ろで頷いていますわね。ワタクシが冒険者をしたいからですわ! と正々堂々言えるわけでもないので一応他の理由を説明しますわ。
「トンチキな事言ってんじゃねぇって感じですわね。まあ、そうなりますわよね、ですので理由を説明しますわ」
「お願いします」
ワタクシはお茶で少し喉を潤すと説明をはじめました。
「簡単に言うとワタクシが冒険者をやってみたいというのも有りますが、そんな理由だけだったら流石に提案はしませんわ。まず、先ほどマウナさんは閉鎖的だったのでどうにかしたいと言いましたわよね?」
「ええ、言いました」
ワタクシは何故か得意気に続きを話だします。
「まずは冒険者となって、人間や亜人達の生活を見て感じて研究してみるのがよろしいかと思いますの。こうすることによって相手をより理解できるかと思いますのよ」
「なるほど」
マウナさんが呟いたのを聞いてワタクシは続けます。
「続きまして、冒険者となれば色々な場所に行くことになると思うので世界の情勢を把握することが出来ると思いますの。ついでに運が良ければ、人間や亜人の有力者からの依頼などこなす事によりコネを作ることもできますし、金銭を稼ぐこともできますわね、また冒険者仲間から信頼できる有能な人材がいるなら国の再建を手伝っていただくことができるかもしれませんわね」
ワタクシの説明にモルテさんもマウナさんもうなずく。
「確かにマウナ様はお父様の死後すぐに魔王になってしまったためか世間知らずな部分も多々ありますな」
「モルテの言う通りですね、恥ずかしながら私はこの領からほとんど出た事がありません、世間勉強の意味を考えればありかもしれませんね」
二人ともワタクシの説明に納得していますわ、しかし良いところばかり説明するのはダメですわねデメリットも説明しなければいけませんわね。
「当然ながらデメリットも存在しますわね。まずは時間がかかることですわ、やはり冒険者でもある程度信用を得なければ大きな仕事は斡旋されないと思いますわ。そしてこれは時間がかかるのに関係しますが国の代表がしばらく不在になってしまう事ですわね」
「確かにそうですな」
「コネに関しても確実ではありませんわね、ただ情勢を知る事や生活を経験することは確実にできるので全くの無駄にはなりませんわね」
マウナさんもモルテさんも考えているようです、それはそうですわね、なのでワタクシはこうも提案しますわ。
「そこで案の一つとして期間を設けようと思いますの、基本的には一年、最大でも二年。結果が出ようが出まいがその期間は冒険者をメインにすればよろしいかと。一年以内に結果が出るなら国に戻ることも考える方向でどうです?」
「なるほど、一、二年ならばよほどのことが無ければ国は大丈夫だと思います」
「マウナ様、転送陣を使えばいざという時に国にすぐ戻れませんか?」
転送陣! なんとも便利そうな名前が出てきましたわね流石はファンタジー。
「そのような便利なモノがありますの?」
「はい、問題点も多々ありますがこの城にも転送陣はあります、行き来が一日一往復しかできないこと。一カ所しかリンクできませんので拠点となる街とこの城にしかこれませんな、もっと良い転送陣ならば複数個所のリンクもできるし一日に一往復だけの制限も無いのですが今の我が城にはその転送陣しかありません」
「それでも十分ですわ」
「そうですね、転送陣の準備をお願いします」
うふふ、冒険者計画を進める方向で話が進んでますわね良い事ですわ。
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