第二話 魔王城からごきげんよう

 

 

 優雅に名乗った私の名前を確認するようにマウナさんが。

 

「クナギマナカ様ですね」

「ええ、久那伎がラストネームで真奈香がファーストネームとなりますわ」

「そうなるとここではマナカ・クナギ様ですね」

 

 お互いが名乗り合ったところで、モルテさんがマウナさんに声をかける。

 

「マウナ様、クナギ様の情報が召喚の書に表示されましたぞ」

「本当ですか?」

「喜ばしいことにレアリティ星4でございます」

「星4ですって? それは重畳チョウジョウ

 

 レアリティ? 星4? ナニソレ? ソシャゲのガチャですの?

 しかも喜んでるということは星4って良い方みたいですわね。まあ、ワタクシなら当然ですわね!

 と、喜んでるところ申し訳ないのですが、この二人には色々と聞かないといけませんわね、ここがどのような世界で何故ワタクシが呼ばれたか等を。

 

「申し訳ありませんが、ワタクシ何が何だか良くわからないのですが、色々お聞きしてもよろしくって?」

 

 ワタクシの問いにマウナさんは慌てて返事をする。

 

「はい、すいません。急にこんな所に呼ばれて訳がわかりませんよね」

 

 いちいち仕草も可愛らしい方ですわね、本当に魔王なんでしょうか?

 

「マウナ様立ち話もなんですので、落ち着いてお茶でも飲みながらお話されてはどうですか」

 

 モルテさんがマウナさんに提案しましたわ。

 

「そうですね、少し長くなると思いますからその方がいいですね。では、モルテお茶の準備をお願いします」

「承知しました、それでは準備をしますので先に失礼いたします」

 

 そういえばワタクシも少し喉が渇きましたわねそう思っていると、モルテさんの姿がスーっと消えましたわ。うーん、何といいますかファンタジー? いや、消える骨はホラーですわね。

 

「では、客室の方に行きましょう。案内しますのでついてきてください」

 

 そう言うとマウナさんも歩き出します、はぐれては困るのでワタクシも後をついていきますわ。マウナさんの後について魔王城を歩いていますが周りはなんか暗い雰囲気ですわね、人もあまりいないようですし寂しい感じがしますわ。

 

 

 そして、しばらくすると。

 

「ここが応接室です」

 

 マウナさんが部屋の前で止まりました。

 案内された部屋に入ると、お値段的に高そうなテーブルとソファー、それ以外は割と簡素な造りの部屋ですわね。

 モルテさんがお茶の用意をしていますわ。

 

「どうぞ、お座りください」

 

 マウナさんが座るように勧めてくるのでワタクシはお言葉に甘えてソファーに座ります、なかなか良い座り心地ですわねこのソファー。

 

「お茶とお菓子になります、お口に合えばよいのですが」

 

 モルテさんがお茶とクッキーのようなお菓子をワタクシとマウナさんの前に置きました。

 

「では、何からお話ししましょうか?」

 

 

 本題に入ると致しますか――

 

「単刀直入に伺いますわ、何故ワタクシがここに呼ばれたのかですわね」

「それは呼ばれた理由でしょうか? それとも呼んだ手段でしょうか?」

「まずは呼ばれた理由ですわね」

 

 マウナさんがモルテさんの方を見る、視線を受けたモルテさんが頷きましたわ。

 視線をワタクシの方に戻し、マウナさんが口を開く。

 

「突然呼び出したことを、まずお詫びいたします。そのうえで失礼を承知でお願いがございます」

 

 ゴクリとつばを飲み込むワタクシ。

 

「私どもを助けていただきたいのです」

 

 なんとも予想外な答えですわね。

 

「助ける、ですか?」

「はい、このファーレ魔王領を助けていただきたいのです」

 

 魔王領を助ける? 具体的ですわね。

 

「助けるとはどういう事でしょうか?」

 

 ワタクシは詳しい事を聞こうとします。

 

「簡単に申しますと、この国を再建する手伝いをしてほしいのです」

 

 何かすんげー事頼まれてますわね……流石のワタクシも国は運営したことないですわよ。

 

「お恥ずかしい話なのですが、私も私の父である先代の魔王もどうも国を運営するという事があまり得意ではなく、国は傾く一方なのでして……」

 

 申し訳無さそうに語るマウナさん。

 

「私の代で領地も三分の一程失ってしまい、国民の数も減っていき何とかギリギリで繋いでる状態なのです」

 

 ワタクシは出されたお茶を一口飲む。あら? なかなかのお味ですわね。

 

「流石に今すぐと言うことは無いのですが、このままだと後十年もすればこの国はおそらく何処かに滅ぼされるか自ら滅ぶ事になると思います」

「なるほど、それでワタクシを?」

 

 マウナさんは自嘲気味に語ります。

 

「父の代は今よりまだ良かったのですが、父が心労と過労から急死してしまい、私のような小娘が魔王になったためかそれを良く思っていない者も多く、優秀な人材が多く他の魔王領や他国に流れてしまいました。それで藁にもすがる思いで召喚の儀を行ったという事なのです」

 

 困りましたわね、国の再建ですか……原稿のトーン貼りなら得意なのですが

 

「流石のワタクシも国の再建や運営はやったことありませんわね」

「そうですか……」

 

 元の世界ではお嬢様とはいえ単なるJKですものね! しかし見知らぬ相手に凄い事頼みますわね。

 

「そもそも、会って間もないワタクシに国に関する事を頼むとか不安はございませんの? もし、ワタクシがとんでもない悪党でしたらどうするおつもりですの? 正直申しまして正気とは思えません」

「う、そうですよね……」

 

 ワタクシの言葉を聞いてマウナさんは少し泣きそうな顔をしてうつむいてしまいましたわ。

 んふ、その顔とてもそそりますわね、不謹慎と思いますがそんな事を考えてしまいましたわ……反省。

 

 ですが初対面の相手、しかも異世界人に自分の国を再建する手伝いをさせるなんて、普通に考えればまともじゃありませんわ。まあ、それだけ追い詰められてるという事でもあるのでしょうけど。

 うつむいてしまったマウナさんを見てワタクシは考える。

 

 

 このマウナという少女本当に魔王に見えませんわね、ワタクシ好みの美少女ではありますが。

しかし会ってまだ数時間しか経ってないのですが何故かこの美少女魔王を不思議と放っておけないんですのよね。先ほど自分で彼女の事を正気じゃないと言いましたがワタクシも人の事言えないですわね。

 

 後は元の世界での記憶の最後が曖昧ですが、どうもあの女生徒を助けたときにワタクシは死んでしまったようですし、それをこういった形とはいえマウナさんに助けてもらったのも確か。

 そうなりますと恩を返さないのというのはワタクシのプライドが許しませんわね。


 まあ異世界でのセカンドライフも悪くはないかもしれませんわね。小説のような出来事、冒険者とか憧れますわー、正直ワタクシ、今の状況にワクワクしておりますのよ。

 

 色々考えたワタクシはマウナさんにワタクシの考えを告げる。

 

「分かりました、よろしくってよ。その話ワタクシに任せなさいな、自分で言うのもなんですがワタクシ優秀ですのよ」

 

 ワタクシの声にマウナさんは顔を上げ、弾けるような笑顔をワタクシに向けます。

 

「よ、よろしいんですか?」

「ええ、ええ。貴女の願いこの久那伎真奈香が可能な限りのサポートをいたしますわ」

 

 ――あんな笑顔向けられたら、やっぱダメですーぷー、なんて言えないじゃないですの……

 実に卑怯な笑顔でしたわよ魔王様……

 

 

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