少し残念なお嬢様の異世界英雄譚
雛山
第一話 異世界からごきげんよう
ワタクシはふと目を覚ます。
「あれ? ワタクシ確かアクション映画ばりのダイブを学園でした気がするのですけど……」
ワタクシは学園でイジメられてる子を助けた時に事故にあい、その子をかばいながら学園の三階、教室のバルコニーから転落したはずですわね、そこで記憶は途切れておりますわ。
そして今は、どこかの部屋にいるようですわね。部屋は少し薄暗く、目を凝らして目の前を確認する。
目に入るのは石の壁、明らかに病院でなければ学園の保健室でもない、はて? ここはどこですの?
しかも抱えていた女生徒はおらず、ワタクシだけがここにいるようですわね。あの女生徒は無事だったかしら?
コツコツと靴の音がする、誰かがいたようね。
そして二人の人物がワタクシに近づいてきました、二人ともフードを被っており部屋が薄暗いのもあって顔は見えません。
二人とも背はそこまで高くないようで片方は百五十センチくらいもう片方はワタクシと同じくらいかしら?
百六十センチくらいですわね。あ、ちなみに私は百六十二センチですわ。
「――」
「――――」
二人が会話を始めるも何を言ってるのか全く分かりませんわ、英語でもドイツ語でもフランス語でもない、まさかナバボ語とかですの?
フードのせいで少しくぐもっていますが声の感じからして一人は若い女性、若干幼さものこる声ですわね。もう一人は少ししわがれたような声、年配の男性ですわね?
「あいきゃんすぴーくなばぼー」
私はダメ元で二人に話しかけました。二人が私の方に向くと少ししてまた何かを二言三言話すと再びこちらに顔を向けます。
そして女性の方が少し前に出て私の頭の辺りに古びた本をかざす、ブツブツと何かを呟きだす。
呪文なのでしょうか? 暫く呟いていると本が光り出すじゃありませんか。
「は?」
私は目を見開いて本を凝視する、本型で声紋認識するライトですの? トンチキな事を考えていると、本の光が消えていくと同時に呪文らしきものが終わる、そうすると驚くことに今度はワタクシの体が淡く光る、その光も二、三秒したら消えましたわ。
「どうやらワタクシ夢を見ているようですわね」
そう呟くと少女の声で返事が返ってきた。
「夢ではありませんよ、私の言葉がわかりますか?」
不思議な事にさっきまで意味不明の言葉だったのですが、今は何を言ってるか理解できますわ、驚いて少女の方見ましたわ。
「ええ、ええ、わかりますわ」
「それは良かったです」
今、笑った?
フードで顔はよくわかりませんが口元がわずかに笑ったように見えましたわ、ワタクシの美少女センサーが彼女に凄く反応していますの、ワタクシのセンサーは信頼度が高いんですのよ。
「ところでここは何処ですの?」
ワタクシは当然の事を尋ねる。
「ここは私のお城です」
「お城?」
彼女は頷く。
石壁の建物、過去にタイムスリップしかも西洋に? いや、それよりさっきの魔法のようなモノからすると……まさか、まさか。ラノベなどでよく見るアレですの?
異世界に転移か転生! この場合私の最後の記憶からして『転生』のほうだと思いますわ?
いやいやドッキリかもしれませんわね? 実はあの出来事から数年経っててワタクシ、ドッキリを仕掛けられてるのではないでしょうか? ワタクシの兄はアホみたいに真面目だから違うとして、クソッタレな妹ならやりかねませんわ。
しかし流石にお城を用意するとか無理にもほどがありますわね……夢でないとしてドッキリでもないとなると――
ワタクシは自分の頬を思いっきりつねってみた……
「――いったー」
痛かったですわ、ということはマジですの?
もし小説とかならこの少女は神やそれに近い存在ということで、ここは神の居城? それとも大陸有数の国家の女王様の住まうお城の召喚の間とかそんな感じでしょうか?
もしそうならば神や王族に呼ばれて魔王を倒してほしいって展開ですわね! フフ、腕が鳴りますわ、ワタクシのフィッシャーマンズ・スープレックスが火を噴きますわよ。
しかし自分で言うのもなんですがワタクシ順応早すぎじゃありませんこと?
まあ、実は隠れてないけどオタク趣味も持ち合わせているためか、小説みたいと思ったら案外すんなりと受け入れてしまえそうなんですのよね。
異世界美少女ハーレムも夢じゃありませんわ!
期待を込めて少女に尋ねますわ。
「貴女のお城と言いましたが、貴女は女王か何かですの?」
少女は何か気付いたような顔をしましたわ。
「あ、そうですね自己紹介をしないといけませんね」
彼女がパチンと指を鳴らすと壁にあった蝋燭に火が灯る、辺りが明るくなったところで彼女はフードを外した。
フードを外した少女の顔を見るなりワタクシは。
「な、なんて素晴らしい! なんという可愛らしい方ですの!」
ついついはしたなく叫んでしまいましたわ。
ワタクシの言葉を聞いてか少女は顔をリンゴのように真っ赤にしてうつむいてしまいましたわ、その仕草すら愛らしいんですの。
ぱっちりとした猫の目のような金色の瞳はまさに宝石のよう、顔も小さく整っており。
鼻筋もスっとしていて形が良く、唇も愛らしく全てが神の祝福によって出来てるのではないかと思ってしまう可愛らしさですわ。
髪の色は少し暗めのエメラルドグリーン。髪型は前髪はストレートバングでM字のように分けており少し目にかかる長さ、後ろ髪は肩付近までの長さのカールボブっと、後一時間は見とれていたいところですが話が進まないのでこれくらいにしましょう。
「あ、あぁ。申し訳ありませんわ、貴女に見惚れてしまいましたわ」
「……いえ。大丈夫です」
少女はコホンと咳払いをして改めてワタクシに顔を向ける。
「では改めまして、私の名前は『マウナ・ファーレ』と申します。このファーレ魔王領で魔王をさせてもらっています」
残念な事に少女ことマウナさんは王女でも女神様でもありませんでしたわ、女神と言われても信じてしまうくらい可愛らしい方ですのに、魔王ですって……ん? ちょっとお待ちになって、今何て言いました?
「マウナさん……で、よろしいのかしら?」
「はい結構です」
「今、何ておっしゃいました? 魔王とか言ったような気がするのですが、聞き間違いじゃありませんよね?」
「はい確かに魔王と言いました」
おぉ? 魔王を倒してって話じゃないですわよねコレ? 何せ魔王に呼ばれてるんですもの?
予想外ですわ、まさか魔王に召喚されるなんて。しかも美少女魔王様とかアリなんですの? いえ、ワタクシ的には大有りですけど。
と、そんな事を考えていたら先ほどまで沈黙していた人物が口を開く
「それでは次は私ですな」
マウナさんの後ろで控えていた人物が少し前に出ると自己紹介を始めましたわ。
「私はマウナ様のお世話係を務めさせていただいておるモルテと申します」
ワタクシはモルテと名乗った人物の顔をよく見ます……
おや? これはこれは、なんとフードの奥の顔はガイコツ。流石は魔王のお世話係ですわね人間ではありませんでしたわ、アンデッドというヤツですわね、しかも無駄に渋い声ですし。
「はい、ご紹介ありがとうございます」
と、返しておきます、そしてモルテさんの紹介が終わると。
「貴女のお名前は何と言うのでしょうか?」
マウナさんがワタクシに名前を聞いてきました、ワタクシとしたことがこちらは名乗っていませんでしたわ
「失礼しました。ワタクシとしたことが名乗っていませんでしたわね」
ワタクシはスカートの裾をつまみお辞儀をする、そしてワタクシは優雅に名乗りましたわ。
「ワタクシは久那伎真奈香と申しますわ」
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