SS16 十八禁警察
婦警さんのコスプレをした白亜を見て。
「あれ? ウチ、そんな服作ってないよね?」
真っ先に、露華が疑問の声を上げる。
「これは、欲しい物リストに入れといたらファンの人が送ってくれたやつだから」
「ほー、アンタも有名になったもんだねー」
「そう。公開してる動画も、徐々に再生数が増えてきて……って、今はそんなことよりも」
得意げに胸を張りかけたのを中断し、再びジト目となった白亜が春輝と露華の間へと無理矢理に割り込んできた。
「即座に離れるように」
「おっと」
これ幸いとばかりに、春輝も離れる方向で協力する。
結果、すぐに二人は引き離された。
「はーもう、白亜ったら相変わらずお子ちゃまなんだから。これくらい、大人にとっては軽ーいスキンシップよ。ねっ、春輝クン?」
「いや、それはどうだろうな……」
否定も肯定もしづらく、春輝の返答は曖昧なものになる。
「まったく、イオ姉もロカ姉も油断も隙もない」
露華との会話に付き合う気はないらしく、白亜はプクッと頬を膨らませていた。
「だけど……よしよし。ハル、お手柄だったよ」
次いで口元を緩め、足にじゃれついているハルを優しく撫でる。
「キューンキューン!」
ハルも、嬉しそうに尻尾を振っていた。
「お手柄って、何がよ?」
「今回、現場を押さえられたのはハルが見つけてくれたおかげだから。ハルには十八禁警察犬としての才能があるのかもしれない」
「十八禁警察犬って何なのさ……」
「ていうかそれ以前、十八禁警察ってのが何なんだ……」
呆れ気味の顔となる露華の隣で、春輝も苦笑を浮かべる。
「十八禁警察っていうのは、十八禁な行為に及ぼうとする不埒な姉たちを取り締まるという……」
と、指を立てた白亜がしたり顔で説明を始めた傍ら。
「キャンキャン!」
何かを発見したかのように、ハルが駆け出した。
「みんなー、今日の晩は生姜焼きで……っと、わわっ」
廊下へと顔を覗かせた伊織は、一直線に向かってきたハルに少し面食らった様子だ。
「キュン! キャンキャン!」
そんな伊織の足元でハルは元気に飛び回る。
ピピーッ!
次いで、白亜が笛を鳴らした。
「イオ姉、十八禁警察として逮捕する」
「ど、どういうこと……?」
ジト目の白亜に指差され、伊織は大いに戸惑っているようだが……現在その上半身を覆うのは、ニット地のノースリーブシャツ。
それも割と薄手のもので、身体のラインにピッタリと沿っていた。
普通ならそれだけなのだが、着ているのは伊織である。
『一部』がニット地を引っ張り、結果的にかなり強調される形となっていた。
「その格好は、完全に重罪」
「あっ、これ? そろそろ暑くなってきたから、新しく下ろしたの。風通しもいいし、凄く伸びる生地だから楽で……」
なんて、白亜と伊織がズレた会話を交わす中。
「……あの服ってさ、春輝クンが選んだやつ?」
「そんなわけないでしょ……」
「だよねー……お姉チョイスかー……たぶん本人は、ホントに通気性とか伸縮性で選んでるんだろうけど……」
「前々から思ってるんだけど、伊織ちゃんはちょっと自分の容姿を客観的に把握出来てなさすぎでは……?」
「まぁ、お姉だから……」
「それで納得するのもどうかとは思うけど、謎の説得力があるな……」
露華は伊織を見ながら、春輝は目を逸らしながらそんなことを話す。
「キャン! キャンキャン!」
なお、その間もハルは伊織の足元で跳びはねており。
「ねぇ、もしかしてハルってさ……」
「あぁ……十八禁警察犬とやらの才能、本当にあるかもな……」
露華と春輝は半笑いを浮かべるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます