SS14 お○○○○
とある休日、春輝が自室からトイレに向かっていたところ。
「それでは、これよりハルの成果発表会を開催します」
「おー!」
「ぱちぱちぱちー」
リビングから白亜、露華、伊織の順でそんな声が聞こえてきて、何とは無しに足を止める。
中を覗ってみると、三人がハルを取り囲んでいる様が見て取れた。
白亜はスマホを構えており、どうやら撮影中らしい。
「それじゃ、ハル……おすわり」
白亜の声に従い、ハルがスッとおすわりの姿勢を取った。
「ハルー、次はウチの方見てね。いい? いくよー? お手っ! おかわり!」
次いで、露華の手に右・左の順でその小さなを手を載せる。
(へぇ……大したもんだ)
淀みのないその所作に、春輝は素直に感心した。
どうやら、いつの間にか色々と教えていたらしい。
「それじゃあ最後はぁ……」
とそこで、露華はニンマリと笑う。
「お姉にお願いしまぁす!」
「えっ!? わ、私!? なんで!?」
手を向けられ、伊織は驚いた様子で自分を指差した。
「だってほら、白亜、ウチと来たら最後はお姉でしょ? 流れ的にさ」
「でも……」
なぜか伊織は、オロオロと大いに戸惑った様子である。
(撮影されてるから、緊張してるのかな……?)
白亜のことだ、この後ネットに上げるための動画なのかもしれない。
「ほらほらお姉ー、せっかくハルがお勉強した成果をみんなに教えてあげなくちゃでしょー? 最後の一つ、なんだったかにゃー?」
「イオ姉、尺が勿体ないから早く」
「う、うん……じゃあハル、いくよ?」
妹二人に急かされ、伊織は未だ迷いを見せつつもハルと向き合った。
(お手、おすわりと来たら、伏せあたりかな……?)
春輝は、そう予想したのだが。
「お……」
(お……?)
伊織は、なぜか意を決したような表情で口を開いて。
「おちんちん!」
『ぶっふぉ!?』
叫んだ瞬間、露華と白亜が吹き出した。
もちろん、廊下で春輝も吹き出していた。
一方で、ハルはきっちりと『ちんちん』の姿勢を取った。
「いやお姉、なんで『お』って付けちゃったの!?」
「だ、だって、ちん……ってそのままだとなんだかその、ちょっと卑猥かもしれないなと思って……」
「付けたことで逆に卑猥になってるから! ていうか、『お』って付けたらもう完全にそっちの意味にしかならないじゃん!」
「危なかった……これが生放送だったら完全に放送事故……一発でBANされても文句は言えないレベル」
「そこまで……?」
「というか、イオ姉のせいでこの映像がたった今18禁になってしまった」
「ご、ごめん……?」
ジト目を向ける白亜に、伊織は疑問符混じりで謝罪する。
「さっきのお姉の発言のとこに、『ピーッ』て入れときゃ大丈夫なんじゃない?」
「それだと、私が本当にいやらしいこと言ったみたいにならない……!?」
「言ったんだよ本当にいやらしいことを!」
なんて、露華がツッコミを入れる中。
『おちんちん!』
白亜の手にしたスマホから、先の音声が再生された。
「ちょっ、白亜!? どうしてそこを再生するの!?」
「撮れ高チェック」
「そんなピンポイントで!?」
目を見開く伊織の方に視線を向けることもなく、白亜はスマホを操作する。
『おちんち、おちんち、おちおちおちんち、おちんちん!』
「ぶっふぉ!? あ、はははははっ!」
「なんでDJのスクラッチみたいなことしたの!?」
続いて再生された音声に露華が笑い転げ、伊織が抗議の声を上げた。
「おっとしまった、操作ミス」
一方の白亜は素知らぬ顔である。
「そ、操作ミスなら仕方ないけど……」
『おちんち『ピーッ』、おちんち『ピーッ』、おち『ピーッ』、おち『ピーッ』、おちんちん! ……『ピーッ』』
「あははははははははっ!」
「今度は何!?」
「むぅ……なかなか、『ピーッ』をちゃんと被せるのは難しい」
「わざとやってるわけじゃないよね……!?」
「失礼な。イオ姉を敬愛するわたしがそんなことするわけないプクス」
「最後完全に笑ってるでしょ!?」
「あはははっ……! あー笑った。ねー、せっかくだし後でそのおもしろ映像春輝クンにも見せてあげようよ」
「それだけはやめて!? あとおもしろ映像って言わないで!?」
「大丈夫、ハル兄に見せるのはちゃんと『ピーッ』で隠した後のやつにするから」
「それもやめて!?」
と、リビングが俄に騒がしくなっていく傍ら。
(……見なかったことにしてあげよう)
春輝は、そっとその場を立ち去った。
なおこの間、ハルは律儀にもずっと『ちんちん』の姿勢を維持していた。
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