SS10 情報漏洩
ハルを飼い始めてから、数日が経過してのこと。
「そういえば先輩、結局SNSにハルちゃんの写真上げたりはしないんですか?」
「ん? あぁ……」
貫奈からの問いかけに、春輝は曖昧に頷いた。
「アップしたい気持ちも、あるっちゃあるんだけどな……」
ペットを飼えば、その可愛さを自慢したくなるもの。
春輝とて、例外ではない。
「そのためだけに新規アカウント作るのもなぁ……」
しかしそれもなんだか億劫で、結局やっていないのであった。
なお、既に持っているアカウントも存在するのだが。
「あー……確かに今更ペットアカウントにするには、先輩のアカウントは闇を背負いすぎてますもんね」
「そうなんだよなー」
最近はそうでもないが、少し前まで春輝のアカウントはほぼ愚痴のみで構成されていた。
今からペットの写真を楽しげにアップするには、少々雰囲気が違いすぎる。
……と、考えたところで。
「……って、ちょっと待て桃井」
ふと、春輝はこの会話の異常さに気付いた。
「なんで……俺のアカウントを、知ってるような口ぶりなんだ……?」
貫奈にアカウントを教えた事実など存在しないのである。
「そりゃまぁ、知ってますんで」
「えっ……? い、いや、別の人のアカを勘違いとかしてるんじゃないか……?」
背中に嫌な汗が伝っていくのを感じる。
「最後の投稿は、確か『障害対応してるうちに小枝ちゃんのライブオワタ\(^o^)/ ていうかこれ原因ウチの奴の操作ミスじゃねぇかぶち転がすぞ』でしたっけ?」
「よし桃井、ちょっと話し合おうか」
覚えしか無い内容が出てきて、春輝は真顔になった。
「何が望みだ……?」
「ちょっと、私が脅してるみたいな物言いやめてくださいよ」
真剣に問いかける春輝へと、貫奈は心外だとばかりの表情を浮かべる。
「大体、学生時代から知ってるんですし今更すぎます」
「そ、そんな前から……!? つまり、俺が当時上げてた漫画とかアニメの感想なんかも全部読んでたってことか……!?」
「はぁ、まぁ。その辺りは別にSNS経由じゃなくても知ってましたけど」
「なんでだよ!?」
「酔った先輩が熱く語っていたので」
「酔った俺ぇ!」
「先輩、安易なエロに異様に厳しかったですよね。エロをやるならやるで信念を持ってやれ、でしたっけ。でもその割にエロ系のラブコメは大体チェックしてましたね」
「酔った俺ぇ!!」
SNSとか関係無しに、単なる春輝の晒し上げ状態になってきた。
貫奈からすれば、それもまた今更なのだろうが。
「もしかして、アカウントも酔った俺がバラしたのか……?」
「いえ、それは普通に私が特定しました」
「それはそれで普通に怖いんだが……」
「先輩の鼻歌から小枝ちゃんまでたどり着いたのに比べれば、楽勝もいいとこでしたよ」
「そんなにか……?」
「先輩、一時期よく『花野郎』の定食の写真上げてたじゃないですか。ネット上で言及してる人なんてほとんどいない店なんで、それで検索するだけでも大体特定出来ましたから」
「店を布教したいという想いが仇となったか……」
「まぁいいじゃないですか、別に恥ずかしい投稿があったわけでもなし。せいぜいさっきみたいな感想とか、ちょいちょい小枝ちゃんへの愛が溢れていたくらいでしょう?」
「それで十分恥ずかしいんだよなぁ……」
◆ ◆ ◆
と、頭を抱える春輝であったが。
(今の情報を元に検索すると……あった、これだ! これが春輝さんのアカウントかぁ……こっそりタイムライン追っちゃおっと)
密かに聞き耳を立てていた伊織へと新たにアカウント情報が漏洩していることに、気付いてはいなかった。
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