第2話 部長は意外と立場が弱い
「それとさぁ、やっぱもう1人部員入れようよ。4人じゃ何かしまらないじゃん」
「は? 4代元素の4人だよ? 完璧じゃん」
ここで明穂がキレ気味に反論する。流石は3人組のリーダー的存在、押しが強い。そもそも、彼女が部室の扉を叩いてくれたから今の部活がある。それまでは私1人しかいなくて、廃部まっしぐらだったのだ。
そんな明穂は独自の魔法感性をもっていて、それは誰にも変える事が出来ない。この話が盛り上がりかけた時、残りの部員2人も口を挟んできた。
「魔法少女部とか、もう誰も入らないと思う」
「私は別にどうでもいい」
「ぐ……」
私は数の美しさと見栄えの美しさから5人になるべきだと思うのだけれど、当然のように今回も味方は誰もいなかった。特に
とは言え、部員は集めようと思って集まるものではないので、まだ変えられる可能性がある方に話を戻す事にした。
「じゃあ、部員の件はまた後で考えるとして、まずは掛け声でしょ」
「多数決だとミチルの負けだよ。明確な反対意見はあなただけだもの」
「ぐぬぬ……」
明穂は興奮すると私を名前呼びする。先輩でも部長でもなく。こうなった時の彼女は手強い。
こう言う時に私が使う手はいつもひとつだ。彼女たちにはなくて、私にあるものを積極的に行使する。
「で、でも私が部長だもん。部長けんげーん!」
「また始まった」
明穂はドヤ顔の私に呆れていた。部長が部長の権限を使って何が悪いのか。部長だからこそ、部を引っ張っていく力があるのだよ。それが責任者と言うものなのだ。
流れがこちらに来ている事を見切った私は、ここで自分の主張に対する根拠を力強く主張する。
「いい? 大会では息を揃えて変身する、その美しさがまず求められるのよ?」
「だから私ら3人は今の掛け声でいいって言ってんだけど」
明穂は3人を代表するみたいに冷静に、しかもジト目気味に私に向かって言葉の槍をダイレクトに突き刺してきた。
いつもならここで妥協するのだけど、今回は私もここで折れる訳にはいかない。何しろ、我が校に魔法少女部が出来て初めての大会なのだ。少しでも上を目指そう、爪痕を残そうと思うのは必然でしょ!
なので、適当に今出来る範囲の事をすればいいや的な後輩組の態度に私はキレる。
「むきー! 変身の掛け声の美しさも加点対象なんだよ!」
「じゃあ対案を出してください、部長。話はそこからです」
ここで璃子が私に向かって提案する。ま、そうだよね。何かを否定する時は対案ありきだよね。
私はこの突然の伏兵の登場に驚きつつ、その場で新しい掛け声のネタを考え始めた。部員4人で新しい掛け声を考えようって流れにするつもりだったから、まだ何も考えていなかったのだ。
そこで、私は改めて顎に手を添えると脳をフル稼働させる。
うーん、掛け声、かっこいい掛け声……閃いた!
「えっと……フラッシュ……フラッシュドーン!」
「却下! ドーンはない。小学生の発想」
私のナイスアイディア、明穂に秒で拒否される。当然反論するよね。部長に向かってひどい言葉を投げつけてるしね。
「モ、モブよりいいじゃないのっ!」
「そう思ってるのは部長だけ。じゃあ次に進めましょ」
「私が部長なのに……」
このやり取り中、他の部員からは全く反応する声が聞かれなかった。どうやら私の味方は誰もいないようだ。そりゃあ明穂達後輩3人はグルだから仕方ないね。
私は部室の片隅で膝を抱えたい気持ちになる……いやしないけど。ただ、どうにもギクシャクした感じになってしばらく部室は静まり返った。
そんな中、大人しい系部員の
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